#126 世界は愛を求めている

ある夏の昼下がり。公園のベンチでひと息ついていると、背後から小学校低学年くらいの女の子が母親に質問する声がきこえてきました。あのさ、にんげんの世界では、まほうをつかっちゃいけないんだよね? ──

Moi!フィンランドをもっと好きになる126回目のレポートをお届けします。メニューはこちら。


生のワッサーをかじろう!

今回はまず自分の報告から。先週日曜日の配信後、国立のmaika/kb’s bakeで開催されたistutの出張イベント「生のワッサーをかじろう!」へ行きました。ワッサーとは白桃とネクタリンをかけ合わせた信州生まれのフルーツです。ちなみにワッサーという名まえは開発した生産者の方の子どもの頃のニックネームから!

maika/kb’s bakeでは月に一度、istutのシナモンロールが提供されているのですが、今回のイベントでは店内でistut定番のドリンクやkb’s bakeのワッサーをつかった特別メニューを楽しむことができました。入り口の扉を開けると店内に和やかな雰囲気が溢れていることがすぐにわかりました。istutが荻窪にあった頃の常連さんたちもいらしていたそうです。みんながとてもうれしそう。

そんなときにいつもおもうのは、場所というのは時間であるということ。これまで積み上げてきた時間。毎日こつこつと積み上げている時間。そしてこれからも積み上げていく時間。思い出が、想いが、願いがそこを場所にする。「いらっしゃいませ~」という声と笑顔が、なんだかいつも以上に胸に響くようでした。

生のワッサーは歯応えがあって、すっきりとした甘みがありました。お店でいただいたマフィンの中のワッサーはトロリと甘く、火を通すとまた別の味わいに。来年もイベントを開催できたらとおっしゃられていたので、次回の開催をどうぞお楽しみに。


NORDIC JOURNEY Vol.5

次の報告は、天王洲アイルで開催されていた北欧市「NORDIC JOURNEY Vol.5」について。アイルしながわという運河沿いの大きな倉庫が会場です。出店されている方みなさんにご挨拶したいところなのですが、なかなか話しかけられずいつものように右往左往していました。

となりにあるウサギのイースターエッグもヘルヤさんの作品

そんな中でお話をうかがうことができたのが、北欧の陶芸やガラス作品、家具などを取り扱われているSISU。普段使いの食器だけでなく、Iさんならではのセレクトがとてもすてきなお店です。自分が気になったのが、森の上を飛ぶクロウタドリ(?)のヘルヤ・リウッコ=スンドストロムの陶作品。そこからヘルヤさんの作品や人物像の話を聞かせてもらうことができました。

いまも現役で作品をつくられているという1938年生まれのヘルヤさん。とてもおおらかな性格で、他のアーティストからも尊敬され、みんなに好かれているそうです。Iさんのお話でいちばん印象的だったのが、前回の買い付けでフィンランドへ行かれたときにヘルヤさんご本人にアポイントメントをとられていたということ。残念ながら今回はタイミングが合わなかったそうなのですが、同じ時代に生きている作家であるということは会える可能性があるということなので機会があるなら会っておかないといけないと思うようになりました、とおっしゃっていました。

弱気になることの多い毎日だけれど、あと一歩前に踏み出す勇気を忘れないようにしたいなと、Iさんのお話を聞きながら思いました。ヘルヤさんご自身はこれからもずっと作品づくりを続けたいと考えているそうなので、作品をつくり続けて長生きしてほしいですねと話しました。

そして札幌市で北欧ヴィンテージのWEBショップをされているIn Vivo のTさんに、はじめてごあいさつできました。8月29日から江別蔦屋書店(北海道江別市)で開催されるポップアップでistutのシナモンロールを販売されます(9/1~9/3のみ)。

もともとは和のものが好きだったというTさん。それらに合う食器などを探しているうち北欧のヴィンテージに興味を持たれたそうです。シンプルでなじみやすいプロダクトを多く取り扱われているのはそんな理由からなのかもしれません。istutのお店やコーヒー、カレーなど、いろいろな話を。cafe moiのこともご存知でした。

蔦屋書店のポップアップの後は、阪急うめだ本店(大阪市)で9月6日から開催される「素晴らしき時代マーケット」へ出店、そして10月には吉祥寺PARCOでもポップアップをされます。移動がとても大変ですねというと、ここ数年イベントが中止になったりすることが多かったのでこうして出店できることがうれしいですとTさん。大江戸骨董市や赤坂蚤の市などにも出店されていますので、行かれた際にはぜひIn Vivoのブースを訪ねてみてください。

▶︎ In Vivo POP UP SHOP|江別蔦屋書店

フィンランドデザインの和ろうそくを取り扱う~WAFINのおふたりはいつも笑顔で迎えてくれます。白樺やカルダモンの香りがする「WAFIN aroma」シリーズのフライヤーも今回のイベントに間に合うようにと作られたそうです。WAFINのYさんには、北欧ヴィンテージを取り扱う「暮らし i.ro.do.ru」のTさんをご紹介していただきました。

みなさんオンラインショップなどでも商品を販売されていますが、やっぱりこうしたイベントや蚤の市などのいいところはお店の方々と直接お話しできることだとおもいます。ヴィンテージについて質問したり、フィンランドでのエピソードを聞かせてもらったり、そうして自分の手元に迎えたものはより特別なものになるような気がします。


北欧のヴィンテージデザインとクラフテッドモダン

さらにもうひとつ。IDÉE SHOPで開催中の企画展「Scandinavian Craftsmen 北欧のヴィンテージデザインとクラフテッドモダン」を見てきました。北欧の現代のアーティストに焦点をあてた展示会でフィンランドからは4名の作家が出品しています。また六本木と自由が丘の店舗では北欧のヴィンテージ家具と一緒にアーティストの作品が展示・販売されています。

先日、IDÉEのInstagram Liveに出品アーティストの一人Paula Pääkkönen(パウラ・ペーコネン)さんが出演されているのを観ました。そこに通訳で登場したのがWAFINのRさん。NORDIC JOURNEYの会場でRさんに「観ました~」と伝えると、Paulaさんとっても明るい方でしたよ!と教えてもらいました。

IDÉEのウェブサイトではそれぞれのアーティストのインタビューも読めるので、ぜひごらんになってみてください。

▶︎ Scandinavian Craftsmen|IDÉE

ハ:京都のリュイユ展でも観ることができたMelissa Sammalvaara(メリッサ・サマルヴァーラ)さんのリュイユがあって、Paulaさんのアイスキャンディは以前LokalのInstagramで見たことがあったんですけど。あとはLaura Itkonen(ラウラ・イトコネン)さん、Arni Aromaa(アルニ・アロマー)さんの陶の作品。
イ:あれってやっぱりアイスキャンディだったんですね。まさかそんなテーマで作品をつくるとは思っていませんでした、笑。


イェンニ・トゥオミネン「王様のいない森」

さらにさらにもうひとつ。イェンニ・トゥオミネン個展「渋谷区猿楽町、王様のいない森」へ。会場は渋谷と代官山の中間あたりにあるギャラリーのこぎりです。昨年(2022年)の個展と同様に、イェンニさんのちいさな陶の立体作品が会場内のあちらこちらに並べられています。とりあえず今回もゆっくりと吟味して、お気に入りをひとつ探してみました。

今回の個展のテーマ「王様のいない森」ついてギャラリーのSさんに尋ねてみました。まず森の王国をテーマにしませんかと話していたところ、王様のいない国のほうがいいとイェンニさんが言われたそうです。人も動物も森の中では平等。さらにイェンニさん、森だけじゃなくて海もいいかもとおっしゃったそうで、日本の海女の資料をイェンニさんに送ったりもされたそうです。ちなみにいつも楽しいフライヤーについて「お面にもなります!」とSさん。

ハリネズミの作品が気に入りましたとSさんに伝えると、その作品はこちらのポスターのイラストが元なんですよと教えてくれました。このハリネズミを立体にしてみない?とイェンニさんに提案されたそうです。イェンニさんの作品を見ておもうのは、森の中でイェンニさんが見ている世界のこと。それは必ずしも目に見えるものではないけれど、イェンニさんの作品がその世界への入り口になるんじゃないかなとおもっています。

ハ:今回の個展ではイェンニさんのグッズも用意されるそうです。いまはTシャツが5種類ほどありました。9月下旬に他のアイテムも並ぶそうです。
イ:イェンニから連絡があったので個展には行こうと思っていたんだけれど、そうしたら9月下旬に行こうかな。


フィンランドの森はどこへ

次はイェンニさんの個展についてのインタビュー記事を読んだという岩間さんからの報告です。

ポルヴォーで暮らすイェンニさん。彼女にとって森はとても身近なもの。ベリー摘みやキノコ採り、散歩するだけでなく、作品制作のインスピレーションを受けることも。その一方でイェンニさんが心配しているのが、世界の気候変動について。フィンランドでもさまざまな場所で森林伐採が行われていて、原生林はほとんど残っていないとイェンニさん。

自分たち以上に森という存在を大切に思っているフィンランドで暮らす人たちにとって、森の現状に対する危機感というのはより大きなものなのではないでしょうかと岩間さん。

▶︎ イェンニに聞く。|トンカチストア

イ:そんなフィンランドの森について書かれた本が『フィンランド 虚像の森』ですけれど、ミホコさんにバトンタッチします。
ミ:えっ、もういいんですか? 笑。えー、8月30日の夜10時頃から『フィンランド 虚像の森』についてclubhouseで話したいと思っています。本の出版がちょうど1年前の8月30日ということで、この機会に読んでない方にぜひ手に取っていただきたいということで。いち読者として感じたことなども。
ハ:どうして翻訳しようと思われたのかも知りたいです。
ミ:いま? じゃなくて当日ですね、笑。はい、そんな話も。


デイドリーム~夢のつづき

最後の報告はミホコさん。先週の配信で紹介したアヌ・サーリ作品展「Unelmia|Daydream」へ行きました。

先週の話からミホコさんが想像していたのとちがっていた点というのが、作品が一人の夢を描いたものではなく、いくつかの夢を合体させて描かれていたこと。またアヌさんご本人に聞いてみたかったというのが、どうしてこういった色づかいでまとめられてのかとうことだそうです。

©︎mihoko-san

ひとつの作品で使われていたのは二、三色。異なる色を重ね合わせたり、同じ色を重ねることで濃淡をつけたりするのは、シルクスクリーンや版画のような手ざわりを感じられるリソグラフならではの表現かと思いました。

同じ展覧会でも観る人によって感想や評価、視点が異なるというのはとてもおもしろいと思います。また、こうして話し合って意見を交換できることも。アヌさんの展示をご覧になった方はどんな印象をもたれたのでしょうか。ぜひお聞きしてみたいです。

ミ:しっかりとわたしの夢も書いてきました。
ハ:次回の作品展でミホコさんの夢が作品になるかもしれませんね。
ミ:そうですね、楽しみです、笑。


庭園美術館ふたたび

そしてミホコさん、東京都庭園美術館で開催中の「フィンランド・グラスアート 輝きと彩りのモダンデザイン」展をふたたび観に行きました。

ひとつの展覧会に2回いくことは稀だというミホコさん。会期終了が近づいていたからか、とてもにぎわっていて、お気に入りのカイ・フランクのピッチャーや魚のオブジェに近づくこともできなかったそうです。そのかわり最後の展示室(新館)にまとめられていた比較的新しいアーティストたちの作品や前回、目につかなかった作品をじっくり楽しむことができてよかったとのこと。

また趣味のフラワーアレンジメントにちなんで、花瓶として持って帰るならどれにしよう?という視点で見てみましたと、みほこさん。ふたつほど見つかりましたがちょっと大きな作品だったので、部屋に飾るには難しいかもと思ったそうです。

©︎mihoko-san

庭園美術館での「フィンランド・グラスアート」展は9月3日まで。そのあと山口県立萩美術館、岐阜県現代陶芸美術館、兵庫陶芸美術館へと巡回します。会場によってまた作品の見え方がちがってくるかもしれません。見応えのある展覧会だと思いますので、近隣の方やご都合のつく方はぜひご覧になってみてください。7月に公開した記事も参考にしていただけるとうれしいです。

▶︎ フィンランド・デザインに宿るアートグラスの光

ミ:展覧会の団扇もお気に入りです。
ハ:どこに置いてありましたかという質問をいただいています。
ミ:出口のそばに置いてありましたよ。
イ:自分ももらいました、気づかない人もいるかも。
ハ:(気づきませんでした、笑)


バスケットボールW杯の勝敗は?

そして配信当日の夜21時10分から行われたバスケットボールW杯フィンランド対日本の試合の話題へ。

イ:フィンランドチームの実力はどのくらいなんですか?
ミ:なかなかだと思いますよ。(昨年の欧州選手権では7位の成績でした)
ハ:えーと、身長213cmのラウリ・マルッカネン選手はNBAでも活躍しているそうです。
ミ:世界ランキングは、日本が36位でフィンランドは24位ですね。

「そういえばフィンランドチームの応援方法がありましたよね」と岩間さん。ここでおもわず笑ってしまったのは、配信前の打合せで今回はやりませんよとミホコさんが言っていたため。岩間さんの無茶ぶりでした。

ミ:「スオミ!👏👏」ですね。
ハ:グラスアート展の団扇で応援してください、笑。
イ:みなさんもフィンランドを応援しましょうね!

試合結果は98対88で日本の逆転勝利でした。W杯での日本の勝利は17年ぶりだったそうです。


── きっと魔女にちがいありません。でもね、人間の世界にだって魔法はあるとおもうよ。それでは今回はこの辺で、次回もお楽しみに。

text : harada

#126|What The World Needs Now – Jackie DeShannon