#125 ずっと夢を見て

うれしいときも悲しいときも涙が流れるのはどうしてだろう。涙を流すときそこにあるのはいったいどんな感情なのだろう ──

Moi!フィンランドをもっと好きになる125回目の配信レポートをお届けします。メニューはこちら。


WE LOVE HELSINKI

最初の報告は岩間さん。紹介してくれたのは、フィンランドのDJチーム「We Love Helsinki」について。

2010年頃からヘルシンキでパーティのオーガナイズをするようになったという「We Love Helsinki」。50~60年代のポップス、ジャズ、歌謡曲(イスケルマ)など懐かしい音楽をプレイするのが特徴とのこと。ビートルズやローリングストーンズといった欧米のロックバンドのフィンランド語カバーやアキ・カウリスマキの映画で流れるような曲も。いまでもMixcloudでDJ mixを聴けますと岩間さん、「BGMにフィンランド語の響きはいかがですか? とても聴きやすいですよ」。

▶︎ We Love Helsinki|Mixcloud

調べてみたところ「We Love Helsinki」は音楽を紹介するブログ(2008年~2010年)から始まりました。その後DJパーティを開催し、ヘルシンキの音楽フェスティバル Flow Festival などにも出演するようにもなったそうです。今はヴァップや夏至祭、クリスマスなどの時期にパーティを行なっています。

イ:ミホコさんはWe Love Helsinki知っていますか?
ミ:ええ、以前聞いたことがあります。音楽と聞いて思い出したんですが、日本でも人気のK-POPがフィンランドにもやってきてるみたいです。フィンランドのガールズバンドNylon Beatの曲の韓国語カバーもあるとか。
イ:Nylon Beatですか、笑。1周まわって今がそういう時期なのかもしれませんね。チェックしてみます。
ミ:Nylon Beatは、1995年~2003年くらいまで活動していたグループです。


フィンランドと柴犬

つづいての報告はミホコさん。フィンランドの友人の多くが犬を飼っているということで、フィンランドの犬にまつわる会話になったそうです。

フィンランドではあまりペットショップを目にすることがなく、どうやって犬を迎えるのか質問してみました。そこでミホコさんが聞いた答えというのが「ブリーダーから直接譲ってもらう」というもの。また血統書も重要なのだとか。日本の柴犬も人気で、秋田犬などについても話題にのぼったとミホコさん。

ミ:友人が兼業でブリーダーをしていて、柴犬をフィンランドに持ち帰る手続きのお手伝いをしたことがあります。一緒に柴犬のブリーダーさんのところへ行ったり。
ハ:もしかしたらそれがきっかけでフィンランドでも柴犬の人気が出たりしたのかもしれませんね、笑。
ミ:15年くらい前のことなのですが、その頃はまだフィンランドに柴犬はあまり見ませんでした。


レットゥを焼くのはだれ?

そしてもうひとつミホコさんから、フィンランドのパンケーキ「lettu|レットゥ」について。

レットゥはクレープの親戚のような薄いパンケーキでもっちりとした食感が特徴。ジャムやクリームを添えていただきます。「イチゴ丸ごとくらいのジャムのかたまりをのせて食べるんです」とフィンランド語講座で説明したところ、わぁ~っとみなさんから歓声があがったそう、笑。

以前、河原で焼いたレットゥがこちら!

ハ:レットゥはお店とかでなく、やっぱり家でつくるものですか?
ミ:Torikahvila(市場のカフェ)などにもありますが、一般的には庭で火を焚いて鉄板で焼いたりしますね。お母さんがタネをつくって、焼くのはお父さんといった感じ。
ハ:いま聞いてくれているみなさんも歓声を上げてるんじゃないでしょうか、笑。


バスケットボールW杯 ~ フィンランド 対 日本

「そうそう、バスケットボールのワールドカップでフィンランドチームが日本にやってきますね」とミホコさん。8月25日~9月10日の日程で日本・フィリピン・インドネシアの会場で試合が行われる予定です。

フィンランド・チーム「Susijengi|狼ギャング」の注目の選手は、NBAオールスターにも選出されている身長213cmのラウリ・マルッカネン。

▶︎ FIBA バスケットボール ワールドカップ 2023

ハ:フィンランドはバスケットボール強いんですか?
ミ:ワールドカップ出場はあまりないですが(初出場は2014年)、NBAで活躍している選手もいますよ。
ハ:テレビ放映の予定はありますか?
イ:8月27日にテレ朝系列でありますね。いつもどちらを応援するか悩みどころ、笑。
ミ:はい、そうですね、笑。


デイドリーム – しあわせな人生のレシピ

最後は自分の報告です。8月20日まで開催されていたフィンランドのイラストレーター/デザイナーのアヌ・サーリ作品展「Unelmia|Daydreams – Recipes for a meaningful life」を観ました。会場は神宮前のギャラリー・ドゥー・ディマンシュです。

アヌさんは、フィンレイソンの考えるパンダのテキスタイル「Ajatus」をデザインしたことでも有名(Moiのスタッフコラム『Aakkoset. フィンランドのことば』でも岩間さんが取り上げています)。2018年に始まった「Unelmia|Daydreams」プロジェクトは、たくさんの人から募集した夢をテーマに、アヌさんがリソグラフの手法を使って作品づくりをしています。

ギャラリーを運営されているジュウ・ドゥ・ポゥムのTさんにお話をうかがったところ、作品のためだけに夢を募集しているのではなく、会場に訪れたひとたちがひととき夢を想う時間をもってもらえたらという意味もあるとのことでした。夢を描いた作品に囲まれながら自分の夢を思い描く。まさしくデイドリームだなぁと思いました。

きっと次回の作品展でも、今回集まった夢の数々をアヌさんが作品にして見せてくれるのではないでしょうか?

▶︎ Unelmia Daydreams – Recipes for a meaningful life

ハ:ジュウ・ドゥ・ポゥムは書籍の出版もされていて、フィンランドの本もいくつか出されています。
イ:『フィンランドのおいしいキッチン』や『フィンランドのガーデニング』など、現地の暮らしがよくわかる本ですよ。
ミ:ところで原田さんは夢を書き残してきましたか?
ハ:はい、書きました!


名のないキモチのカタチ展

その足でArtek Tokyo Storeで開催中(8月28日まで)の「a living form / 名のないキモチのカタチ展」へ行きました。フィンランドで学んだグラフィックデザイナーのAYA IWAYAさんの個展です。

文筆家サトゥ・アハティアイネンさんに「まだ名前が与えられていない曖昧な感情」を9つの詩にしてもらい、それをもとにモザイクタイルの作品にしたもの。それらの作品からどんな感情が生まれるかを体験してほしいとのことでした。

言葉を作品にするという点では、アヌさんの『Unelmia|Daydream』と相通ずるところがあるように感じました。きっと正解よりも自分の気持ちを想像することが大切なのかもしれません。

▶︎ a living form / 名のないキモチのカタチ展

ハ:AYA IWAYAさんは、フィンランドの育児パッケージのデザインを手がけたこともある方です。ご本人が在廊されていたのですが、フィンランドの方たちとお話しされていて声をかけられませんでした。でもフィンランド語で話しているなぁとわかっただけでも成長したなと、笑。
ミ:原田です!って話しかければよかったのに、笑。
ハ:ぜったいムリですっ!


世界からコーヒーがなくなるまえに

そして最後に『世界からコーヒーがなくなるまえに』(青土社)を読んだ話をしました。先週お伝えした『寄生生物の果てしなき進化』(草思社)とおなじくセルボ貴子さんが翻訳された本です。配信でもなんどか話題に上り、ミホコさんによる「お茶べり会」でセルボさんをゲストにお話しされたこともありました。

『寄生生物の~』を読み終えた後、そういえば『世界からコーヒーが~』を読んでいなかったことに気づき、数年遅れで読みました。温暖化や大量消費、農業形態の変化により、美味しいコーヒーがこの先飲めなくなってしまうかもしれない現状を、なんとかしようと奮闘してきたブラジルの農場の姿を追ったルポルタージュ。『寄生生物の~』と大きなテーマでは共通しているように思いました。

ハ:ツイートにセルボさんからコメントをいただきました。「── 持続可能ってどういうことかな、とコーヒーの本の辺りから悩み始め、寄生生物はまさに自然界の見えざる大きな輪の一部で(中略)。そこから歴史の流れという学ばぬ人間への愛という大河小説へこじつけも!😆」。セルボさんはいま「シヌへ エジプト人(仮)」を翻訳されています。
イ:話を聞いていて、ディズニーの「イッツ・ア・スモール・ワールド」を思い出しました、笑。


── 喜びも悲しみも同じ場所から生まれてくるのかもしれません。夢をみるから悲しくなることもあるけれどずっと夢を見続けていたい。それは日々を生き抜くチカラになるから。それでは今回はこの辺で、次回もお楽しみに。

text : harada

#125|Daydream Believer – The Monkees