#124 ちょっと座って考えて

Moi! フィンランドをもっと好きになる124回目の配信レポートをお届けします。メニューはこちら。


北欧楽会のニュースレターを楽しむ

最初の報告は岩間さん。先週の夕涼みの会に参加してくれた北欧楽会のTさんからいただいたニュースレターを読みました。

北欧楽会は、北欧5カ国について楽しく学ぼうという趣旨のもと1997年に設立された団体。年2回発行のニュースレターのほか、北欧に関する様々な分野のゲストを招いた講演会などを定期的に開催されています。

▶ 北欧楽会ブログ

そのニュースレターの中で岩間さんの注目した記事が、橋本ライヤさんによる「2022年夏フィンランドレポート」。緊迫するロシア情勢に対してフィンランドの人たちの思うところを、4年ぶりに帰国されたライヤさんがインタビューに応えています。

フィンランドでは過去の歴史や地理的な状況もあり、常にそれらの脅威を念頭に浮かべながら国防を考えてきました。NATO参加には多くのフィンランド国民が賛成しましたが、これまでには中立の立場でロシアとの仲介役を担うこともあったそうです、と岩間さん。ライヤさんも「『ちょっと待って、ちょっと待って、そこまで熱くならないで……』という役割は本当に大事です」と回答していました。

ミ:ところで、橋本ライヤさんのご紹介を。
イ:はい、そうですね。1974年に来日された橋本ライヤさんはフィンランド語講師などで活躍され、フィンランドと日本の橋渡し役をされてきました。moiとの関わりでいうと、カレワラの日(2月28日)に『カレワラ』の朗読イベントにお招きしたことがあります。ライヤさんというと、もうひとり奥田ライヤさんもいらっしゃいますが。
ミ:二大ライヤさんですね!

そして最新号の11号には、昨年12月にミホコさんが登壇された講演「『フィンランド 虚像の森』をめぐる物語」のレポートがありました(レポート#69もどうぞ)。とてもうまくまとめられていて、実際の講演会にも行きたかったと岩間さん。ニュースや行政からの情報を鵜呑みにするのではなく、自分で調べて考えることが重要だということも。

その『フィンランド 虚像の森』ですが、8月30日に(日本での)出版から1年になるということで、ミホコさんによる「お茶べり会」が決定しました! 詳細は次回以降の配信でもご紹介しますので、どうぞお楽しみに。

▶ フィンランド 虚像の森|新泉社


フィンランドのチョコレートは溶けやすいのか?

次の報告はミホコさんから。フィンランドからのおみやげでチョコレートの詰め合わせギフトをいただきました。さすがにこの暑さで変形しかけたものもあったそうで、すぐに冷蔵庫へ直行しましたとミホコさん。

©︎mihoko-san

とくべつフィンランドのチョコレートが溶けやすいということはないかもしれませんが、暑い国々ではチョコレートはどのように売られているのでしょう? アイスクリームのように冷蔵庫に入っているのでしょうか。もともと原料のカカオ豆も暑い国で採れるのになあと、ミホコさんの話を聞きながら考えていました。


フィンランドの旗日は平日にもあります

そして、北欧語書籍翻訳者の会のnoteで、ミホコさんが担当された新しい記事が8月9日に公開されました。この日は「トーヴェ・ヤンソンの日」と「フィンランド芸術の日」ということで、フィンランドでは旗日となっています。

▶ フィンランドの旗日は平日にもあります|北欧語書籍翻訳者の会 note

ミ:8月9日は日本でも「ムーミンの日」になりましたよね。
ハ:はい、昨年から正式になりました。
ミ:フィンランドの旗日をテーマにした記事なのですが、ちょっと淡々としすぎてたかなぁ と。
イ:おもしろかったですよ!たしかに淡々としてましたけど、笑。
ハ:ところで、フィンランドには名前の日ってありますよね。その日はお祝いとかするんです か?
ミ:ええ、します。ニュースでその日の「名前」が発表されたり、名前の日の本人が周りの人たちにコーヒーを振る舞ったりも。
イ:名前の日がない「名前」もあったりしますよね、キラキラネームみたいな。
ミ:笑。セカンドネームなどいくつかあったりするので。それに名前の日も増えているようで す。


夏休みの宿題〜北欧について調べてみよう

さらにもうひとつミホコさんから。書店で見かけた『池上彰の世界の見方 北欧』という新刊を紹介してくれました。都内の中学校での授業内容を収録した本で、北欧5カ国のことがコンパクトにまとまっているとミホコさん。ムーミン、サンタクロース、サウナとフィンランドの項目も時代を反映しているとのこと。

もっと前にフィンランドのことを知っていたらとおもうこともありますが、まあそれぞれのタイミングというものがあるのかもしれません。興味を持ったときに調べてみるのが一番ですよね。

©︎mihoko-san

トゥオマス・アイヴェロ『寄生生物の果てしなき進化』

最後は自分の報告です。前回の配信でミホコさん翻訳による新しい本のお知らせがありましたが、その時に話題にのぼったセルボ貴子さんが翻訳した『寄生生物の果てしなき進化』(草思社)を読みました。

著者はフィンランドの進化生物学者トゥオマス・アイヴェロ。マダガスカルでネズミキツネザルを対象にパラサイト(寄生生物)などについての研究をしていました。本書ではその当時のエピソードをはさみながら、パラサイトや感染症についてわかりやすく解説しています。パラサイトと聞くとなにかグロテスクな生き物を想像してしまうのですが、細菌やウイルスなど自分の体内にも常に存在しているものです。

パラサイトは生き残るため、まるで意思をもっているかのように進化していきます。しかしそれはただの結果でしかありません。困難を乗り越えたパラサイトだけが生き残っているだけのこと。農耕生活や都市生活など人間の行動や選択によってパラサイトは変化せざるえません(当然人間が罹る感染症なども変化していく)。

フィンランドでは2018年に出版されたのですが、パンデミック以降の2020年秋に追記された文章があります。過去に起こったペストやコレラ、スペイン風邪のことを想像すれば、より移動の量や速度が増えた現代ではあっという間に世界中に拡がっていくのは当然のことです。そのときに最も影響を受けるのは社会的弱者であることも。すべての生き物が影響し合い、不安定なバランスの上で成り立っている世界であるのだから、利他性や多様性が重要だということをあらためて考えさせられました。人間にはまだ選択肢が残されているのではないでしょうか。

配信では言い忘れたのですが、セルボ貴子さんの「訳者あとがき」がとてもおもしろいです。本を読み終えてからだとその可笑しさが倍増しますので、ぜひどうぞ!

イ:地球温暖化でアラスカの氷河から未知のウイルスなどが発見されたというニュースを思い出しました。
ハ:衛生の基本はとにかく手をよく洗うことだそうです。最近ちょっと自分でも緩んできたのでしっかり洗おうと思います。
ミ:ええ、手洗い大事ですね。


それでは今回はこの辺で、次回もお楽しみに。

text : harada

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