とてつもなく苦い粉薬(「顆粒」ではない)をいつのまにかオブラートなしで飲めるようになっている自分に、しみじみ「おとな」を感じてしまう6月。そして6月といえば「梅雨」。一年でもっともうっとうしいこの季節、でも、カフェできく雨音は、また最上のBGMだったりもします。
6月のmoiの営業時間は、
平日 13:00-20:30
土日祝 12:00-20:00
お休みは月曜日&火曜日です。
なお、6/7[水]-6/18[日]までイラストレーター荻田宗明さんの「珈琲絵本展 pathofeu blend in moi」が開催されます。ひさびさの店内での展示になります。よろしければぜひ、足をお運びください。
それでは、6月もmoiでみなさまのご来店をお待ちしております!
治りかけたと思ったら、またぶり返す。ちかごろの東京の空模様と同様、どうもすっきりしないうっとうしい風邪です。
そんななか、WILL cafeのくるすさんがケーキの納品の折に自家製ジンジャーシロップを届けてくださいました。WILL cafeさんがつくる「新生姜のケーキ」は、毎年この季節になると登場する人気の逸品。この、旬の新生姜をふんだんに使ったケーキをつくる際にできるエキスが、甘くて香り高い濃厚な「ジンジャーシロップ」なのです。
このシロップを炭酸で割れば、おいしい自家製ジンジャーエールのできあがり!というわけで、さっそくためしてみました。
moiでお出ししているウィルキンソンのジンジャエールも、その「刺激」ではなかなか有名ですが、こちらWILL cafeさんのシロップをつかったジンジャーエールは、口あたりこそやわらかいものの、後からじわーっと体があたたまってくる感じでなんともいえない「旨味」があります。
これではやく、体の中から風邪を追い出したいものです。
北欧へ行きたい、でも行けない。そんな、やるせない初夏の夕暮れ。それでもぼくにはこのレコードがある。
大好きなステファン・グラッペリが、1979年7月6日にデンマークの首都コペンハーゲンにある「チボリ公園」でおこなったコンサートのライブ盤。この夜グラッペリとともにステージに上がったのは、ギターのジョー・パス、それに地元デンマークのベーシストニールス・ペデルセンという、実にイイ顔の持ち主3人。でも、なんといってもこのアルバムの「主役」はといえば、この夜チボリ公園に集った観客たちにちがいない。
たくさんの、老若男女の「笑顔」。世界でいちばん笑顔の似合うジャズマンはまた、居合わせた人をみな「笑顔」に変えてしまう天才でもある。もしもステージから客席を撮影したカメラがあったなら、映像にはきっと同じように笑みをたたえた人々のたくさんの顔が映っていたことだろう。北欧の7月といえば、もちろん「白夜」。日本の夕焼けよりもずっとクリアで力強い光の中、さわやかな風に吹かれて会場の門をくぐる人々の心持ちはいったいどんなものだろう?想像するだけでわくわくする。いつもならば邪魔に感じてしまう、演奏の途中で湧き起こるさざ波のような拍手さえも、観客たちのリラックスしたムードを伝えていてむしろ気持ちいい。年に1、2回しか聴かないけれど、聴けばかならずしあわせな気分にしてくれる、あまり知られているとはいえないながらも、ぼくにとっては「かけがえのない一枚」。
初夏のスカンジナヴィアのさわやかな「空気」とたくさんのしあわせな「笑顔」とをギュッと「真空パック」にしたかのようなこのアルバム。ステージ上でスゥイングする3人の極上の笑顔を「つまみ」にカールスバーグやツボルグといったデンマークビールでも飲み干せば、ほら、65cmくらい(当社比)北欧が近づいたでしょ?
LUMINE荻窪の「サンジェルマン」で、3日間の期間限定で販売していた復刻版シナモンロールです。
いつごろ販売されていたものなのか、またどういう経緯で期間限定で復刻されたのか、基本情報のチェックを怠ってしまっていたのは不覚でした。生地は、よく下町のベーカリーなどで見かける、表面に卵黄を塗ってツヤツヤに仕上げたなつかしいつくり。アイシングのかわりの溶かしバター&ざらめ砂糖も、さすがは「復刻版」というノスタルジックな印象を与えています。
ある意味、これはシナモンロール界のGS、グループサウンズですね。ビートルズやストーンズを真面目に追求すればするほど、なぜか「本物」とはどんどんかけ離れたものになってしまう、そんな日本という風土のもつ強力な磁場をあらためて一個のシナモンロールに垣間見た思いです。
今週、来週と、都合によりプッラ(フィンランド風シナモンロール)をお休みさせていただきます。ゴメンナサイ。
代わりにといってはなんですが、展示のテーマにあわせて「コーヒー」にちなんだ特別メニューを期間限定でご用意させていただいております。WILL cafeさんによる「コーヒーシナモンケーキ」やコーヒー風味のクッキー各種(お席で召し上がっていただけます)、そして徳島のアアルト・コーヒーさんに展示のイメージでつくっていただいたオリジナルブレンド×2種です。
ぜひこの機会にお楽しみいただければと思っております。
イラストやショートアニメーションの制作をされている荻田宗明さんの「珈琲絵本展」がはじまりました(~18日マデ)。
昨今よく耳にする《ニート》というキーワードからインスピレーションを得た、長さ5メートル55センチにおよぶ巻物のような「絵本」を店内にて展示しています。また、彩色にあたっては、さまざまな質感をもつ紙にコーヒー液を落としそれをPCでスキャンして使用するなどユニークな試みがおこなわれています。
ぜひ、ご来店の折にはお楽しみいただければと思います。
以下は、荻田宗明さんによるコメントです:
ニート。
ちょっと問題を抱えた言葉ですよね。
でも、英語で‘品の良い’‘素敵な’という意味の‘neat’というニュアンスもあるかもしれません。その二つの異なる響きを、絵本と珈琲でつくった空間が荻窪のカフェにあります。
neatとニートが焙煎された絵本カフェへ、どうぞお越し下さい。
「FIFAワールドカップ」がはじまった。熱心なサッカーファンでもないのにやけに感慨深いのは、あらためて「4年間」という月日の流れを実感するのに、それがちょうどいい「ものさし」になっているからにちがいない。4年前、ちょうど日韓共同開催でワールドカップがおこなわれていたその時期、ここmoiではまさに内装工事の真っただ中であった。忙しいはずなのに、なぜかぽっかり空いてしまった時間をみてはテレビで「サッカー観戦」していたことを思い出す。
あのとき、4年後のことを想像できなかったのとおなじように、いま、4年後のことを想像するのもまたむずかしい。気がつけば、4年先のことすら思いもおよばないような人生を生きているじぶんがいて、弱ったなぁと思う反面、なんだかそれがやけに可笑しくもあるのだ。
雨を聞きながら、クロノス・クアルテットの演奏するビル・エヴァンスを聴いている。
ときおり強くなったり弱くなったりを繰り返しながら、でもいっこうに降りやむ気配を見せない6月の雨に、室内学的なアプローチでビル・エヴァンスの名曲をとりあげたこのアルバムはおどろくほど似つかわしい。
「雨」はときにロマンティックだったりセンチメンタルだったり、する。けれども、即物的な人間から言わせれば、それは人間の側のたんなる思い込みにすぎない。雨は、ただ降っているにすぎないのだから。そういう意味からすると、クロノス・クアルテットの演奏スタイルも、そこに一切のエモーショナルな解釈を差し挟まないという点で、また「雨」のようである。
ビル・エヴァンスの音楽はうつくしい。だが、その「うつくしさ」をロマンティックだったり、あるいはセンチメンタルだったりといったエモーショナルな部分に見ないのは、まさにクロノス・クアルテット流の「まなざし」といえる。その作業はたとえば、厚く塗りこめられた油絵の絵の具をていねいにぬぐってゆくことで、緻密で繊細なデッサンにたどりつこうという試みにも似ている。オープニング、弦楽四重奏により演奏される有名な「ワルツ・フォー・デビー」はため息がでるほどうつくしい。にもかかわらず、けっしてイージーリスニング的な甘い演奏になっていないのは、黙々と楽曲の《核心》をめざすかれらの演奏スタイルあってのものかもしれない。
このアルバムを聴いていると、ただただ降り続ける6月の雨もそんなに悪いもんじゃないな、そういう気分にさえなってくるから不思議である。
"かもめ効果"なのでしょう。ことしはフィンランドを旅するひとが、とりわけ初めて旅するひとがとても多いようです。
そこで、最近このブログを知ったという方のために去年の夏フィンランド&スウェーデンを旅したときの「日記」のリンクをあらためて記しておきます。ささやかながら、ヘルシンキやストックホルムのおすすめのスポットやカフェ情報もあります。
よろしければ、ぜひ旅のプランニングにお役立てください。
開催中の荻田宗明「珈琲絵本展」(日曜日マデ)にあわせて、いまmoiでは特別にブレンドされた二種類のコーヒ-をお飲みいただくことができます。ことしの2月、徳島にオープンしたaalto coffee(アアルト・コーヒー)さんの焙煎人である庄野サンに、展示をイメージして配合していただいたものです。
ところで、「aalto coffee」さんの店名の由来はといえば、もちろんフィンランドの建築家/デザイナーのアルヴァー・アールト。「ひとりあたりのコーヒー消費量世界第一位」の国への敬意をこめて、一日に何杯でも飲めるコーヒーを提供したいという思いからこのような名前をつけたとのこと。
今回は、展示中の5.5mにおよぶ「絵本」のストーリー前半/後半にちなみ、作家さんによるいくつかのキーワードを手がかりに、焙煎人・庄野サンのイマジネーションで二種類のオリジナル・ブレンドをつくっていただきました。視覚だけでなく、味覚や嗅覚からも作品を楽しんでいただこうという、いわばコラボ企画です。
質のよいスペシャリティコーヒーにこだわり丁寧にハンドピックした「aalto coffee」さんのコーヒー、ぜひこのチャンスのお楽しみいただければと思います。
ちょっとしたオーダーの取り違えで、せっかくつくったサーモンの北欧風タルタルサンドが宙に浮いてしまった。かといって捨ててしまうわけにもゆかないので、ちょうど小腹もへっていたこともあり自分で食べてしまうことにした。ひさしぶりに、たぶん数年ぶりに口にしたと思うのだけれど、いやぁ、うまいなぁコレは、ほんとオススメです。って、まあ、それはともかく、だれかのためにつくったものを自分で食べるという行為はやはりどこかむなしく味気ない。
こうして、『どっちの料理ショー』の「負けシェフ」のきもちをすこし理解したのだった。
地図帳はたのしい。
学校の教材としてお世話になって以来、すっかりその存在すら忘れていた「地図帳」をテレビのかたわらに置くようになったのは、塾のセンセイをなさっている常連のお客様のすすめがあったからにほかならない。たとえばテレビのニュースなどでどこか「地名」がでてきたとき、かたわらの地図帳をめくってその場所をたしかめてみる。するとテレビの映像とあいまって、その「見知らぬ土地」がなぜだかぐっと身近な場所に感じられてくるのだ。ときには無性に旅心をかきたてられ、あてのない旅の計画など夢想してみたり。
たとえば、いまだったら「ワールドカップ」。先日、韓国と戦って惜しくも敗れた「トーゴ」、生まれてはじめて耳にする国名である。さっそく、「トーゴってどこよ?」と思いながら地図帳をめくる。その国はアフリカにあった。ちいさな、ちいさな国である。550万人ほどの人口はほぼフィンランドと同じだが、面積はというとフィンランドの1/7程度。あふれかえる人波が、かれらのドリブルの技術を高めたのだろうか?
きのうはきのうで、エクアドルとコスタリカとのゲームがあった。エクアドルもコスタリカも、どちらもコーヒーの原産地としておなじみである。コスタリカは中米、エクアドルは南米、赤道直下の国。中米も南米も、日本からすれば遠いことに変わりはなく思わず混同しそうになる。だが、中米と南米では「コーヒー」だって味がちがう。フィールドを駆け回る選手たちの姿も微妙に異なっていて当然だ。
地図帳にはまた、思いがけぬすてきな発見もある。オセアニアあたりの地図をながめているときだった。発見したのは、こんな名前の場所。エロマンガ島。どんな「島」なんだ、いったい。オランダにあるという「スケベニンゲン」とならんで、ぼくがもし「中学生」だったなら、ネタにしたい、クラスの「人気者」になりたい、ただそれだけのために「夏休みに行きたい場所ベスト1」である。中学生でないのがかえすがえすも残念だ。ただし二学期からのアダ名は、「スケベ人間」もしくは「エロマンガ」になることまちがいなし、だが。
こんな調子で、日々アームチェアトラベラーの《旅》はとまらない。ぜひ一家に一冊、地図帳を!
西尾さん(お世話になってます!)のシナモンロールです。ご覧のとおり、正真正銘フィンランドのプッラ「コルヴァプースティ」です。残念ながら街で手に入るものではないので、今回は「番外編」ということになるでしょうか。
イーストのかわりに、「白神酵母」という天然酵母を使って焼かれた西尾さんのパンは、生地じたいにほんのりとした自然の甘みがあってとても上品な味わい。そしてスパイスのカルダモンも日本で売られているパウダー状のものではなく、フィンランドから持ち帰ったという粗挽きのものを用いているので全体的に刺激的にすぎずやさしい印象です。
プッラ、とりわけこのシナモンロール「コルヴァプースティ」は、フィンランドではおかあさんが子供のためにつくってあげる「おやつ」のような存在。だから、本物のプッラはとても素朴であったかい味がするのです。
西尾さんのコルヴァプースティは、そんなおかあさんの味のするまさに《正統派》のコルヴァプースティです。
荻田宗明さんの「珈琲絵本展・Pathofeu blend in moi」は、本日をもちまして終了させていただきました。会期中ご来店いただきましたみなさま、どうもありがとうございました。また、展示にあわせてコーヒーをつかったケーキやクッキーをご提供いただいた国立のWILL cafeさん、そして丁寧にローストされたコーヒー豆を届けてくださった徳島のアアルトコーヒーさんにもこの場を借りてお礼を申し上げさせていただきます。ありがとうございました!
一枚の静止したイラストの中に「動き」を予感させる荻田さんの作品、また斬新なアイデアの展示方法など、とても新鮮な印象を残してくれました。今後のご活躍に期待したいと思います。
発売中の雑誌『カフェ&レストラン』7月号(旭屋出版)の「本棚」というコーナーに書評を書かせていただきました。
この「本棚」というコーナー、じつは先月からスタートしたコーナーで、毎月カフェやレストランのオーナーがお気に入りの本を一冊セレクトし読者に紹介するという内容。
今回ぼくがピックアップしたのは、堀江敏幸の『雪沼とその周辺』。「雪沼」といううつくしい語感をもつある架空の町を舞台に、そこに暮らすひとびとの「日常」を数珠のようにつなぎながら静謐な筆致でつづった短編小説集です。この本、ふだんすすんで小説を手にすることのないぼくが、二ヶ月ほどまえに知人からプレゼントされて以来もうすでに何回も読み返しているという、まさに「愛読書」と呼ぶにふさわしい一冊なのです。いつかこのブログでご紹介できればと思いつつもなかなかその気になれずにいたのですが、そんな折、ちょうどこの「書評」のお仕事の話をいただいたのですから、きっとこれもなにかの「縁」なのでしょう。 読み終えた後、まるで音楽を聴いたときのようなやわらかな余韻がいつまでも残る一冊です。
また、同じ号の特集「ドリンク300」でも、3種類のコールドドリンク(「アイスマテ茶」「ウス茶ミルク」「アイスキャラメルクリームティー」)をご紹介させていただいています。32のカフェが提案する300種類のドリンク、圧巻です。
ほかにも、cafe cactusの渡部和泉さん&watoさんや、キノ・イグルーの有坂さんによる連載もあり見ごたえ十分。ぜひ、書店でみかけたら手にとってみてください。
なにが好きかと問われれば、「洋食」と答える。たべものの話、である。ハンバーグにエビフライ、カニクリームコロッケ、メンチカツにポークソテー、チキンライスにオムライス・・・ぼくにとって「ごちそう」とは、イタリアンでもフレンチでもなくて「洋食」のことなのである。
洋食というと、素材へのこだわりとていねいな仕事に裏打ちされた「職人仕事」というイメージがある。じっさい、洋食屋にはあまり《食のトレンド》とか追求してほしくないし、客をうならせる《サプライズな仕掛け》とも無縁であってほしい。ハンバーグはハンバーグらしく、エビフライはエビフライらしく、そして付け添えの野菜にも手を抜かない、ぼくのかんがえる「よい洋食屋」とはそういう店のことである。
そこで思い出さずにはいられないのが、朝比奈隆という指揮者である。93歳でこの世を去る直前まで現役でタクトをとりつづけた朝比奈は、その晩年ほとんどベートーヴェンとブラームス、それにブルックナーしか振らなかった。ごく限られたレパートリーを繰り返し演奏することでより楽曲の本質に迫り、その表現を深化させる、その姿勢はまさに「頑固な職人」と呼ぶにふさわしいものであった。そして、うまい洋食をつくる料理人とはおそらく、この朝比奈隆のようなタイプの人間にちがいない。逆にいえば、朝比奈隆がつくるハンバーグはさぞかしうまかったことだろう。
などと話は激しく脱線気味だが、画像は京橋にある人気の洋食屋レストラン・サカキのハンバーグ&エビフライ。ちゃんとしたハンバーグでありエビフライである。それ以上でも以下でもない、まさに職人仕事。コックコート姿でフライパンをあおる朝比奈隆を脳裏に思い浮かべながらおいしくたいらげた。
80年代、好んで聴いていたバンドにThe Go-Betweensというのがあった。オーストラリアの出身ながら、スコットランドの「ポストカードレーベル」からアルバムをリリースするなどイギリスを中心に地味に地味に活躍したバンドである。いまも、日本で370人くらい(根拠ナシ)は彼らのことを憶えているかもしれない。「Spring Hill Fair」、いま聴いても最高!
ところで、彼らのバンド名である"Go-Between"を辞書で引くと、「仲立ちをする者」といった意味がでてくる。そして、それはまた、ぼくがここmoiでこうありたいと願う姿とも重なる。
カフェの扉をひらく人は、みなそれぞれカップ一杯分の「時間」を求めてやってくる。恋人や友だちと語らうために、仕事に疲れた自分をリセットするために、ときには自分だけの「ひとりの時間」を手に入れるために・・・。カップ一杯のコーヒー(あるいはお茶)は、ひとつのきっかけ、フックにすぎない。だから、とりたてて特別なお膳立てなどしなくとも、「時間」を求める人がいて、そこになにがしかのフックさえあれば、その空間は大きな意味での《カフェ》といえるかもしれない。つまり、そのとき店に立つぼくは無色透明の存在、たんなる「仲立ちをする者」である。
インテリアもBGMもコーヒーの味も、moiで提供するすべてについてぼくの理想とするところは、強烈な印象を残さないことにある。過不足なく、ただ空気のように、それぞれの「時間」が刻む秒針のあいだを静かに充たしていたいのである。Go-Betweensの「うた」のように。
タイトルのAKU ANKKAって、なによ?と思われたひともきっといることでしょう。答えは、そうディズニーのキャラクター「ドナルドダック」。ちなみに「Ankka」は「アヒル」。「Aku」は・・・名前。たぶん。で、なぜかフィンランドでは、この「AKU ANKKA」が「MIKKI HIIRI」こと「ミッキーマウス」をおさえて断トツの人気なのだとか。このあたり、日本人の「かわいい」という感覚とはちょっとちがうのでしょうか・・・
ところで、その「AKU ANKKA」のコミック(もちろんフィンランド語バージョン)を"黒い例のたべもの"でおなじみのJUSSIさんよりご提供いただきました。ご興味のある方はぜひmoiでごらんください!
ふと気づいてしまったのだ。偉大なのは「ドラエもん」ではなく、大山のぶ代の「声」なのではなかったか、と。
ためしに、大山のぶ代の「声」でつぶやいてみてほしい。
── ダヴィンチコード
ほら、なんだかとっても夢のあるほのぼのとしたものにならないだろうか。「大山のぶ代の『声』」は、ただそれだけでこの単調な世界を極彩色の「ドラエもんワールド」に変えてしまうのだ。
── 亀の子たわし
── カレリア・パイ
── 村上ファンド
なんでもいい。すべては、たのしくて夢にあふれてちょっとお茶目で。
ではもうひとつ、こんなふうに言ってみよう。
── ジーコJAPAN
ほら、怒りもおさまったでしょ?
フィン語クラスのムラスギさんより、面白いものをいただいた。フィンランド航空のDC-10をかたどった「紙ヒコーキ」、ではなくて「フライングライナー」(と、その筋の人々は呼ぶらしい)。「パチンコ」、ではなくて「カタパルト」(と、その筋の人々は呼ぶらしい)で飛ばすこともできるすぐれものである。しかも「ムーミン号」。
自他ともに認める不器用ではあるけれど、パッケージに印刷された「組み立て簡単、5分で完成」&「対象年齢6才以上」という文字にうながされ、さっそく組み立てに挑んでみた。一応、「6才以上」だし。
中身はざっとこんな具合。一瞬、苦手だったプラモデルを思い出す。ちゃんときれいに貼れるだろうか、シール。
格闘すること20分あまり、多少の(ということにしておこう)ほころびはあるものの無事完成!さあ、フィンランドまで飛んでゆけ~
鍼の行き帰りによく利用するのは西武国分寺線という電車。中央線の「国分寺」と西武新宿線の「東村山」とをむすぶ全長8km足らず、所要時間にしてわずか10分あまりの路線である。
中央線の車窓からの眺めがほとんど、きゅうくつそうに立ち並ぶ一戸建て、アパート、マンションばかりなのにたいして、西武国分寺線では、家々にまじっていかにも武蔵野を縦断するこの路線らしいのどかな風景-雑木林や畑など-がひろがる。停車する駅も「恋ヶ窪」「鷹の台」「小川」と、ふらりと途中下車したい誘惑にかられるような「土の匂い」のする名前だ。それにくらべると、荻窪-西荻窪、東小金井-武蔵小金井、国分寺-西国分寺といった中央線の駅名は、いかにも旧「国鉄」らしい「事務的な匂い」を感じずにはいられない。
あいにくの雨模様の月曜日、まもなく終点の「国分寺」に着くというそのとき、突然、目の前の景色が一面の「緑色」に変わる。わずか数秒にもかかわらず、それは、あたかも電車ごと深い森に迷いこんでしまったかのような奇妙な感覚であった。たっぷりと水分をふくみ、より色鮮やかにボリュームを増したかのようにさえみえる樹々の緑は、なにか巨大な獣の横腹のようでもあり、「怖い」、わけもわからずそんな言葉が脳裏をよぎるのだった。
「郊外」へおもむくということは、「中心」から「周縁」へと移動するというただそのことを指し示すのみならず、そのことがもたらす「日常」の異化作用という体験そのことであるかもしれない。
※『雪沼とその周辺』の著者である堀江敏幸が、パリ郊外をめぐってつづった刺激的なエッセイへの、これは「なんちゃってオマージュ」です。
ちかごろのお気に入りは、フォトグラファーエエヴァ&シモ・リスタが撮影したヘルシンキの膨大なフォト・アーカイヴ《ヘルシンキの空の下》。
1969年から87年にかけてヘルシンキの中心部やダウンタウンなどで、ときにアジェのように、ときにアーウィットのように写し撮られた、いわば《素顔のヘルシンキ》。ここにあるのは、まさに写真集をめくるような愉しみ。
きょうは、開店前にナマでオーケストラを聴いてきた。
moiから歩いて3分のところにある杉並公会堂で、午前中、フランチャイズオーケストラである日本フィルの「公開リハーサル」があったのだ。
指揮は、把瑠都とおなじ(笑)エストニア出身のネーメ・ヤルヴィ。
今回は、あす木曜日、あさって金曜日にサントリーホールでおこなわれる「定期演奏会」のためのリハーサルで、練習するのは当日のメインのプログラムであるショスタコーヴィチの《革命》。リハーサルはほとんど「ゲネプロ」のような内容で、いくつかのポイントとなる箇所を除いては、、ほぼ全曲を通しで演奏するような感じ。全曲聴けるとは思っていなかったのでちょっと得した気分である。
また、《革命》の練習が比較的スムーズに運んだということで、休憩前に演奏されるノルウェーの作曲家グリーグの「4つの交響的舞曲」の練習もおこなわれた。こちらはふだんあまり演奏されることのない曲で、こういう作品をプログラムにまぜてくるあたりは、さすが北欧の指揮者である。
こちらも、練習の進め方こそおなじだが、《革命》とちがいなじみの薄い作品だからなのか、それとも民族的な旋律をとりいれた舞曲のリズムが日本人になじまないからなのか、やや手こずっているといった印象。練習もより丹念におこなわれていた。
ところで、グリーグの音楽はまさに北欧の夏を思わせるようなチャーミングな佳曲だが、あきらかにフィンランドとは異なる、より楽天的、あるいは開放的な印象がある。民族のちがい、思考をつかさどる言語のちがいは、こんなふうに「音楽」にも反映されるものなのだ。
さて、次回の公開リハーサルは、今回とおなじ杉並公会堂で7/12[水]午後3時30分より。指揮は沼尻竜典(ぬまじり・りゅうすけ)、曲目は世界初演となる野平一郎の新作。こういってはなんだが、難解な現代曲の場合、本番を聴くよりも、愉しいのはむしろリハーサルのほうかも・・・お時間のある方はぜひ。もちろん、入場無料。お帰りはmoiへどうぞ!
※「公開リハーサル」の詳細は、杉並区のイベント情報でご確認ください。