#045 Vårt land

2月5日はルーネベリの日。ゆかさんと北欧料理研究家のチエミさんよりルーネベリタルトをいただきました。人生初ルーネベリタルトです ──

Moi!フィンランドをもっと好きになる45回目のレポートをお届けします。メニューはこちら。

+ ルーネベリの日
+ ルーネベリってどんなひと?
+ フィンランド国歌
+ ルーネベリタルトの作り方
+ ルーネベリゆかりの地
+ 食後の感想


ルーネベリの日

フィンランドの国民的詩人であるヨハン・ルドヴィグ・ルーネベリの誕生日をお祝いするために1月から2月5日までフィンランドのカフェやスーパーには「Runebergintorttu|ルーネベリタルト」というお菓子が並びます。

このルーネベリタルトは、カップケーキにラズベリージャムをのせてアイシングをほどこした見た目もかわいらしいスイーツ(ゆかさん)。ルーネベリのために奥さんのフレデリカが作っていたといわれています。

ルーネベリタルトはフィンランドのお菓子の中でも一、二を争う好きな味という岩間さん。今くらいの季節に訪れたことがないため、フィンランドではまだ味わったことがないそうです。


ルーネベリってどんなひと?

1804年にヴァーサで生まれたヨハン・ルドヴィグ・ルーネベリ(Johan Ludvig Runeberg)はスウェーデン系フィンランド人の詩人・作家です。代表作はロシア・スウェーデン戦争を描いた叙事詩『ストール旗手の物語|Fänrik Ståls Sägner|Vänrikki Stoolin Tarinat』。第1部が1848年、第2部が1860年に出版されました。

ここで岩間さんから「なぜこれほどルーネベリはフィンランド国民から尊敬されているのでしょうか?」と質問がありました。みほこさんによるとロシアやスウェーデンの支配下にあった当時、祖国を守ろうというメッセージと共にフィンランド人のアイデンティティを形作ったからではないか、と。

©︎mihoko-san

フィンランド国歌

ルーネベリの『ストール旗手の物語』の冒頭の詩は、フィンランド国歌「我等の地|Vårt land|Maamme」となりました。この歌が初めて演奏されたのは1848年。作曲はフレドリク・パシウス(Fredrik Pacius)です。

ゆかさんが友人のInstagramを見ていると、エスプラナーディ通りのルーネベリ像の前でスウェーデン語で合唱しているシーンがあったそうです。フィンランド語の歌詞はユリウス・クローン(Julius Krohn)らによる翻訳をもとにパーヴォ・カヤンデル(Paavo Cajander)が作りました。

また同じメロディでエストニアの国歌にもなっているそうです。スウェーデン語・フィンランド語・エストニア語、3つの歌を聴き比べてみるのもよいかもしれません。


ルーネベリタルトの作り方

今回ルーネベリタルトを作るにあたって、ゆかさんが参考にされたのがフィンランド語の料理本にあったレシピ。主な材料は、小麦粉とアーモンドプードル(生アーモンドの粉末)と砕いたジンジャークッキー。

きっとクリスマスに余ったジンジャークッキーを入れるようになったのでは?と岩間さん。ゆかさんによるとフレドリカのレシピにジンジャークッキーはなく、小麦粉とバター、砂糖ともっとシンプルなものだったようです。当時はそれほど贅沢ができなかったのではないかとみほこさん。

焼き上がった生地には「プンシュ|Punsch|Punssi」という伝統的なリキュールをひたします。ラムやアーモンドリキュールなどで代用することもあるそうです。チエミさんがちょうど持っていたということで「プンッシ」を持っているという人もめずらしい!と岩間さん。

岩間さんは以前、誕生日に cafe moi のスタッフの方からホールケーキの型で作ったルーネベリタルトをいただいたことがあるそうです。バケツプリン的な感覚でいただきましたと岩間さん。フィンランドのお菓子はどれもカロリー的にヤバいけれど、と。

ハッシュタグでみると、いろんなルーネベリタルトがあって楽しいですよ。
▶︎ #runebergintorttu|Instagram


ルーネベリゆかりの地

ルーネベリは『カレワラ』を編纂したエリアス・リョンロートや政治家で思想家のヨハン・ヴィルヘルム・スネルマンとトゥルク王立アカデミーで同期でした。この3人はフィンランドの民族意識高揚の中心的人物となりました。

▶︎ History of the University of Turku

現在トゥルク大学には彼ら3人の銅像があります。ちなみにトゥルクは1827年にトゥルク大火が起きるまでフィンランドの首都でした。

ポルヴォーでは学校の先生を務め、誕生日になるとルーネベリの家(旧市街にあり、現在は博物館になっている)には多くの人がお祝いに集まってくるほどの人気者だったとか。そのためポルヴォーには一年中ルーネベリタルトを食べられるカフェがあるそうです。

▶︎ J. L. Runeberg’s Home

ザクリス・トペリウス(木いちごの王さま!)とも親友だったというルーネベリ。フィンランドの人物を調べていてよく思うのは、誰かが誰かの友だちといったような、そのサークルの狭さだったりします。


食後の感想

季節のお菓子というのはあるけれど、誰かの誕生日にちなんだお菓子というのは他にないのでは?と岩間さん。「信玄餅」は?とゆかさん。(調べてみると武田信玄が絶賛したという説があるみたいです、笑。)

最後にみほこさんから参加者のみなさんへアンケート。フィンランド好きであることを公表している人はどのくらいいますか?という質問に13名の方が挙手してくれました。

いずれにしても、ほぼルーネベリタルトだけの(しかも意外とくわしい)話題でこんなにたくさんの方たちに聴いてもらえてうれしいなあと思います。自分だけの秘密ってちょっといいですよね。

── 最後にゆかさんとチエミさんにいただいたルーネベリタルトの感想を。しっとりとしたタルト生地と砕いたジンジャークッキーの食感が絶妙でした。そして甘酸っぱいラズベリージャムがとっても美味しかったです。ごちそうさまでした!それでは今回はこの辺で、次回もお楽しみに。

Vårt land – スウェーデン語詩

Vårt land, vårt land, vårt fosterland,
ljud högt, o dyra ord!
Ej lyfts en höjd mot himlens rand,
ej sänks en dal, ej sköljs en strand,
mer älskad än vår bygd i nord,
än våra fäders jord!

text : harada

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