2014.6
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2014.4

東川篤哉『館島』
2014.5.2|review

W浅野!! 冒頭、女探偵登場のシーンからそんななつかしのフレーズが脳裏をよぎる80年代フレーバー(というより、実際に設定が80年代なのだが)の本格推理小説。

永年の夢であった瀬戸大橋計画がようやく現実化しつつあった198×年、やがては瀬戸大橋の「橋脚」とならんとする瀬戸内海に浮かぶ小島に(岡山県ではその名前を知らないものはいない)〝孤高の天才建築家〟が酔狂なたたずまいの巨大な別荘を建てる。しかし、そのみずからが建てた別荘で、当の建築家が謎の転落死。さらに、真相はわからないままふたたび関係者たちが集った同じ場所で第二、第三の殺人が起こるのだった。

巨大な建築物をからめた壮大なトリックに舌を巻く一方で、登場人物たちがかわす会話のギャグセンスはどこまでも寒い。貴方はこの〝寒さ〟に耐えられるか?! W浅野!!

切手で旅するフィンランド〜フーさんから日本の子どもたち
2014.5.9|event

【フィンランドの人と暮らしを知って、さらにそれが震災遺児への募金にもつながるというイベントのご案内です】

多くの尊い命が奪われた東日本大震災から3年が過ぎました。モイでは過去2回にわたり、上山美保子さんの提案のもと「フーさんから日本の子どもたちへ」プロジェクトにご協力させていただきました。北欧・フィンランド関連のリサイクル品を買っていただき、その売上の一部を寄付するという前回、前々回とは趣向を変え、3回目となる今回は、トークイベントへの参加によって「あしなが東日本大震災・津波被害遺児支援募金」への寄付にご協力いただくというかたちでの開催となります。以下、イベント内容のごあんないです。

ムーミン、オーロラ、サウナ、ヘビメタ、モータースポーツ、そしてデザインや建築などなど、ぼくらのフィンランドへの関心は幅広くさまざまですが、じつはそうした多種多様なフィンランドの文化、人びと、自然を知ろうとするとき、たくさん発行されているカラフルで楽しい「フィンランドの切手」がとても役に立つのです。今回は、フィンランドのスペシャリストにして切手コレクターでもある上山美保子さんの案内のもと、切手をとおしてフィンランドを旅していただきます。フィンランドのことをもっと知りたいという方、フィンランドの切手に興味があるという方、ぜひぜひご参加ください!

──

◎ 切手で旅するフィンランド〜フーさんから日本の子どもたちへ
出  演:上山美保子[フィンランド語翻訳/通訳/講師]
日  時:2014年5月4日[日]
 ☆1回目 13時30分〜(開場13時10分・約90分)
 ☆2回目 16時〜(開場15:40・約90分)
 なお、1回目、2回目とも内容は同じです
場  所:moi[カフェ モイ] 吉祥寺
参 加 費:2,500円(当日会場にてご精算ください)
 *参加費には下記が含まれます
 「あしなが東日本大震災・津波被害遺児募金」への寄付金
 フィンランド家庭料理研究家・西尾ひろ子さんによる焼き菓子
 フィンランドのコーヒー
定  員:各回15名
申し込み:先着順(定員に達し次第締め切らせていただきます)

参加希望の方は、
お名前、連絡先お電話番号、人数、ご希望の回/1回目(13時30分)or2回目(16時)を明記の上、メール(件名「トークイベント」)にて下記アドレスまでお申し込み下さい。折り返し、受付確認メールを送らせていただきます。なお、ご来店時に直接、もしくは営業時間内にお電話でもお受け致します。
また、申し込み受付完了のご連絡は営業時間内(正午~20時)となりますので、あらかじめご了承下さい。

2014年 GW期間中の営業について
2014.5.9|info

ゴールデンウィーク期間中(4/26〜5/11)までの営業にかんするご案内です。営業時間、定休日などに変更がございます。ご迷惑をおかけいたしますが、何卒よろしくお願い致します。

まず、4/26[土]〜5/11[日]はおなじみ「キュッパカフェ」があります。キュッパとは、ノルウェーの絵本作家オーシル・カンスタ・ヨンセンさんの作品に登場する北欧生まれの丸太の男の子「キュッパ」。期間中はキュッパのキャラクターグッズ販売のほか、期間限定のドリンク、スイーツなどもご用意致します。

http://kubbe.jp/top.html

また、5/4[日]は上山美保子さんをお迎えしてトークイベント『切手で旅するフィンランド〜フーさんから日本の子どもたちへ』を開催いたします。こちらの入場料は、一部経費を差し引いた上「あしなが東日本大震災津波被害遺児募金」に寄付させていただきます。ぜひご参加いただけますようお願い致します。イベントの詳細、お申し込み方法は以下をごらん下さい。

http://moicafe.blog61.fc2.com/blog-entry-2407.html

GW期間中の営業時間一覧

4月26日[金] 正午〜20時(19:30L.O.)
4月27日[土] 正午〜20時(19:30L.O.)☆シナモンロールのテイクアウトあり
4月28日[月] 正午〜20時(19:30L.O.)
4月29日(祝) 正午〜20時(19:30L.O.)☆営業させていただきます
4月30日[水] 13時〜16時 ☆シナモンロールのテイクアウト カフェはお休み
5月 1日[木] 臨時休業
5月 2日[金] 正午〜20時(19:30L.O.)
5月 3日(祝) 正午〜20時(19:30L.O.)☆シナモンロールのテイクアウトあり
5月 4日[日] イベントのみの営業 カフェはお休み&テイクアウトなし
5月 5日(祝) 正午〜20時(19:30L.O.)☆シナモンロールのテイクアウトあり
5月 6日(祝) 正午〜20時(19:30L.O.)☆営業させていただきます
5月 7日[水] 13時〜16時 ☆シナモンロールのテイクアウト カフェはお休み
5月 8日[木] 臨時休業
5月 9日[金] 正午〜20時(19:30L.O.)
5月10日[土] 正午〜20時(19:30L.O.)☆シナモンロールのテイクアウトあり
5月11日[日] 正午〜20時(19:30L.O.)☆シナモンロールのテイクアウトあり

ご来店お待ちしております。

ジャック・フィニイ『ふりだしに戻る』
2014.5.14|review

とある極秘プロジェクトの一員として《過去》へ行ってみないか?

ある日、イラストレーターとしてNYの広告代理店で平凡な日常をおくっていた主人公サイは、見知らぬ突然の訪問者からそう誘われる。

《過去》へ行くといっても、なにも「タイムマシン」のような機械が登場するわけではない。それは、アインシュタインの相対性理論に基づいた仮説に則っており、自己暗示による催眠術を援用することで狙いを定めた時空へと移動できるとするものである。職業柄すぐれた観察眼と描写力を備え、もともとノスタルジックな事物に人並みならぬ関心をもっていたサイはずば抜けた適応性を示し、プロジェクトの期待をあつめいよいよ《過去》へと向かうのだった。

向かった先は「1882年のニューヨーク、マンハッタン」。ガールフレンドの出自にまつわる謎めいた「遺書」の秘密を探るため、サイみずから志願したのだ。歴史を書き換えてしまう恐れから、「けっして干渉してはならない、観察に徹せよ」というのがこのプロジェクトの「鉄則」である。それゆえサイの「志願」に難色を示す上層部であったが、最後、このプロジェクトの発案者であるダンジガー博士の鶴の一声によってめでたく承諾される。そのとき、ダンジガー博士からひとつ「依頼」をされる。NYのとある場所へ行き、そこで自身の両親の「出会いの現場」を目撃、その様子を一枚の絵にしてプレゼントして欲しいというものである。この「依頼」が、最後、この小説全体のオチにつながる。

順調にタイムスリップしたサイは、まだ摩天楼も存在せず、街をひとや馬車が行き交う19世紀末の牧歌的なニューヨークの光景にすっかり心奪われてしまう。延々と続く細かい情景描写は、たしかにときに読み進めるのを辛くもするけれど、「タイムマシン」という便利な道具が登場しないぶん、読み手を物語の世界へ導く上では必要不可欠だとも感じる。とりわけ、そり遊びの情景は楽しく美しいし、乗り合い馬車の中で女性のスカートの裾がふわりと触れた瞬間の描写など、その「生々しさ」に思わず息をのんだ。

ガールフレンドから託された古ぼけた遺書の謎を解き明かすなかで、サイはひとりの女性ジュリアと出会う。やがて、遺書の謎がジュリアとも無関係ではないということがわかり、ともに行動するなかでふたりは思わぬ「犯罪」に巻き込まれてしまう。このあたりは、ちょっとしたミステリー風味である。いっぽう、おなじころ《現代》では、サイらによるタイムスリップの成功を受け、これを政治的に「利用」しようとする思惑をもつ一派と断固としてそれは認められないとするダンジガー博士とのあいだで激しい対立が起きていた。《現代》に戻り、この騒動を知ったサイはプロジェクトから離れる決意を固めるも、最後にひとつ「やり残した仕事」があると言い残し、ふたたびある決意を胸に「1882年」へと向かうのであった。

この『ふりだしに戻る』は、ジャック・フィニイによるファンタジーであり、ラブロマンスであると同時にときにミステリ、ときにサスペンスであるが、それ以上に「科学発明とその利用」をめぐるヒューマニズの物語でもあるのだと思う。

松尾由美『バルーン・タウンの殺人』
2014.5.21|review

素行不良の《妊婦探偵》が活躍する、シュールな笑いにあふれたSFテイストのミステリ。

舞台は、東京都第七特別区。人呼んで「バルーンタウン」。そこは、「人工子宮(AU)全盛の世の中で、妊娠・出産という過程をへて子供を持つことをあえて選んだ女たちが、天然記念物なみの保護をうけて暮らす」妊婦の町である。そのちいさな、しかしかなり特殊な町で発生するさまざまな事件を、「妊婦のことは妊婦にきけ」とばかりに、見事な「亀腹」をもつ《妊婦探偵》暮林美央が鮮やかに解決する連作もの。

この妊婦探偵、厳密にいえばちがうのだろうが、分類としては《安楽椅子探偵》に入るのだろう。じっさい、電話口から示唆するだけのものもあるからだ(『バルーン・タウンの裏窓』)。「妊婦は透明人間なの。お腹以外は」などなど、全編をとおして名言(迷言)にもことかかない。

熊沢里美『だれも知らないムーミン谷』
2014.5.28|review

読書もまたひとつの《旅》であるとするならば、この本は著者による「ムーミン谷」への《旅》のいわばドキュメントであり、その足跡をたどることで、ぼくら読者もまた、べつの角度から捉えた「ムーミン谷」の新たな眺望を新鮮な驚きとともに手に入れることができる。

発端は、テレビアニメ「楽しいムーミン一家」を観て育った著者が、あるとき9冊からなる原作のシリーズを手にしたところからはじまる。本を読んだ著者は、当惑する。テレビアニメのなかでは「割愛」され感じることのなかった「ふたつの問題」が、原作ではシリーズ全体を貫く大きなテーマとなっていたからである。そして、著者はそこからひとつの仮説を導き出すのだった:「アニメ『楽しいムーミン一家』に描かれたムーミン谷は、原作において登場人物たちが直面するふたつの問題を克服した後のユートピア、いわば『省略されたユートピア』を描いたものなのではないか?」。

物語を丹念に読み解いてゆくことで、原作においてムーミン谷の住民たちが「克服」せねばならなかったふたつの問題ー「自然」と「住人どうしの関係」が浮き彫りにされる。読み解くにあたって、焚き火、ランタン、灯台、かまどなど物語に登場する《光》がもつ象徴的な意味に注目したのも面白い。「夏」と「冬」というふたつの季節が支配する世界の対峙も、北欧においては四季は日本ほど明確なものではなく、春は夏の、秋は冬のそれぞれ「露払い」程度にすぎないことを思えば納得のゆくところだ。

もちろん、ムーミン谷はフィンランドにあるわけではない。とはいえ、作者トーベ・ヤンソンが北欧の厳しい自然のなかで多感な少女時代を過ごし、物語を育んでいったことは紛れもない事実である。そして、そんな「北国のひと」トーベ・ヤンソンによる素朴な《民話》という側面から「ムーミン」を読み直すとき、著者は、現代の日本に生きるぼくらもまた未来を照らす《光》を手に入れることになるかもしれないと言う。まったく同感である。ムーミンの原作をいまこそ読もうと思う。

2014.6
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