あとがきで、読者から寄せられた原稿に手を入れた〝リメイク作品〟であると知り驚かされる。
収められた6つの作品はたしかにどれも手触りが異なるけれど、それぞれの舞台を【物語を紡ぐ町】というキャッチフレーズをもつひとつの土地に集約することで、見事、〝低体温の情念〟乙一ワールド全開の連作短編集に仕立てあげられている。
読み終わった後、つい雪の積もった日には〝しるし〟を探してしまうだろうなという作品、最後に収められた「ホワイト・ステップ」は、映像でもコミックでもおそらく伝わらないだろう、その意味で文字で書かれたものを読むことで〝なにか〟を受け取る小説ならではの表現の可能性をあらためて教えてくれる。
クラシック初心者がいきなりフルトヴェングラーに手を出すのがキケンなように、落語初心者がいきなり立川談志に手を出すのはマズいのではないか?
そんな直観から、なんとなくずっと遠ざけてきた談志の落語。正直、まだまだ手を出す気にはなれていないが、いつか「その日」がやってくるであろうことは間違いない。「その日」に備えて、この本を手に取ってみた。
この本では、談志の「追っかけ」を自称する著者が、談志の手がけた数多い噺の中から誰もが認める得意の大ネタ10個(「鼠穴」「居残り」「芝浜」など)に加え、古典落語、談志ならではの噺、滑稽話、その他というカテゴリーから8個ずつの計42個をピックアップ、世に出ている音源をもとに詳細に比較しその特徴を挙げることで、絶えず更新され続ける談志落語の魅力について紹介してゆく。
談志ビギナーにとっては、どのあたりから手を付けるかということの大まかな「地図」になるし、ある程度すでに触れてきたひとにとってはまだまだ未知の領域があることを知るきっかけになるのではないだろうか。