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2013.11

広瀬正『マイナス・ゼロ』
2013.12.1|review

〝タイムトラベルもの〟と一言でくくってしまうには、あまりにもたくさんの仕掛けと色彩をもつ〝びっくり箱〟のような小説。

空襲のさなか、少年だった主人公に、18年後の同じ日、同じ時間にここに来るようにと言い残し絶命した隣家の〝先生〟。18年後、言いつけどおりその場所を訪れた主人公を待ち受けていたのは、人と人との不思議な縁(えにし)をめぐる時間を越えた旅であった……。

たとえどんな道を選ぼうとも、最後に辿り着く場所はひとつ。それが運命の赤い糸ならば、けっして途中でプツンと切れたりはしないものなのだ。

ちなみに、文中に登場するエピソードで個人的にいちばん好きなのは、自分に自分でごちそうを奢って少年時代の密かな思いを果たすところ。ちょっと乾いた洒脱な〝笑い〟もまた、この小説の魅力のひとつである。あとは、文字通り「現代っ子」らしい最後の娘の言葉。タイムマシンがあろうとなかろうと、けっきょく一番たいせつなのは「いま」なんだよね。

トレヴェニアン『夢果つる街』
2013.12.8|review

感想はひと言。「渋い」。

カナダのモントリオール、〝ザ・メイン〟と呼ばれる地区がこの小説の舞台である。一匹狼の〝警部補〟ラポワントは、移民や労働者、売春婦や浮浪者がひしめくこの吹きだまりの土地の秩序を、長いあいだ自分なりのやり方で守ってきたいわば〝番人〟のような存在。しかし、この街とそこに生きる人たちを誰よりも理解し愛しているのもまた、ラポワントそのひとなのである。そんな彼のホームタウンで、ある夜ひとりのチンピラが刺殺される……。

そこから話は二転三転……というわけには、ところが、全然いかないのである。事件の捜査に、動きらしきものが見えるのはようやく333頁になってから。全体の4/5は、濁った池の水面をじっと眺めているような案配。最後の1/5でその濁った水面が一気に透き通り、事件の全貌が明らかになるのである。

ただ、これはたぶんミステリではないのだろう。〝ザ・メイン〟という、時代から取り残された人々が身を寄せ合って暮らす時代から取り残された土地の物語だ。そしてその土地も、そう遠くない将来、近代化の波に押し流され消えてゆく運命にある。そしてそこに生きる人たちもまた。老兵しかり、モイシェしかり、心臓に手術不可能な動脈瘤を抱え、もはや警察署の中に味方がひとりもいない古いタイプの警官であるラポワントもまた、しかり。読了後、なんとも苦い後味が残る一冊。

エド・マクベイン『ダウンタウン』
2013.12.17|review

たんに相性の問題だと思う。警察小説の金字塔(と呼ばれているらしい)「87分署シリーズ」のエド・マクベインが手がけたクリスマスストーリー、しかも和田誠によるカバーということでワクワクしながら手に取ったのだが……残念ながら読了できず。

雪のクリスマスイブ。NYのダウンタウンでひょんなことから事件に巻き込まれ、なぜか警察から追われる身となってしまったちょっと軽いフロリダからやって来た男。そこに現れたのがひとりの中国系美女……。

さながら、80年代製ハリウッドのラブコメディーといった恋あり笑いあり殺しありのお話。たぶん主人公はマイケル・J・フォックス(ちなみに主人公の名前は、マイケル・J・バーンズ!偶然じゃないよね、コレ)。

トリックは面白そうなので、とにかくノリが合わなすぎて先に進めなかった。ノリの合うひと限定でおススメ。

アンデシュ・ルースルンド&ベリエ・ヘルストレム『三秒間の死角』
2013.12.17|review

レコ屋のコメント的にいくと、まさに「必読!!北欧ミステリ最高峰!!」。

ジャーナリスト&元服役囚というスウェーデンの異色コンビ作家による第5作とのことだが、ぼくははじめて読んだ。これは凄い。読ませますね。

複数の登場人物たちの動きを、さながらカメラを切り替えるようにポンポンと見事なリズムで捉えつつ、巧みに読者をその特異で非日常的な犯罪世界に引き込んでゆく構成といい、それぞれ癖のあるキャラクターをさりげなく読者に刷り込んでゆくちょっとしたエピソードや振る舞いの描き方といい。

人々が生きるこの世界には表と裏、光と陰がある、という複眼的な世界観だけでなく、じつはそこにはそのふたつの世界を媒介するグレーゾンに生きる人種が存在するというのが、このストーリーのツボ。麻薬密売組織を壊滅するというミッションを担い、ある意味〝必要悪〟としてその存在の正当性を保証されている潜入者「パウラ」。ところが、彼は綱渡りのような危ういバランスの上に生きている。オモテの世界からもウラの世界からも切り捨てられたとき、「生き残る」という最後のミッションを賭けた「パウラ」の孤独な闘いが始まるのだ。そしてもうひとり、目の上のたんこぶ、昇進から永遠に見放された厄介者として上層部からも部下たちからも毛嫌いされている孤独な男、グレーンス警部もまた、その意味でグレーな存在にほかならない。この「簡単には諦めない男」と「命を賭けて生き残ることを決めた男」、ふたりの「執念」が火花を散らしながら重なり、爆発してゆくさまがたまらない。

そしてやはり、こんな重く暗いストーリーながら、そこかしこにあふれる北欧流のシニカルな笑いが好きだ。グレーンス警部と宿敵オーゲスタムのやりとりとか。

あっという間に読んでしまうので、買うときは上下巻まとめて購入するのがおすすめ。

【クリスマス】フィンランド風シナモンロール ご予約承り
2013.12.24|info

いよいよクリスマスも間近。気の置けない仲間や家族とともにホームパーティーを計画されている方も少なくないでしょう。持ち寄りやちょっとした手みやげに何か気のきいたものを、と頭を悩ましている方もいらっしゃるのではないでしょうか? そこで「moi」からの提案です。

クリスマスパーティーに人気の【フィンランド風シナモンロール】はいかがでしょう?

通常【フィンランド風シナモンロール】のテイクアウトは土日&水曜日のみとさせていただいておりますが、クリスマス期間中に限り特別に12/21(土)〜12/24(火)までの4日間、毎日お持ち帰り用のシナモンロールをご用意いたします。なお、上記期間中はご予約のお客様優先となりますので、下記の要領でご予約いただけますようお願いいたします。

クリスマスの食卓を《北欧のやさしい味》でいっそう賑やかに彩ってください!

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【お渡し日】
 ◎ 12月21日(土) お渡し 午前11時〜午後7時
 ◎ 12月22日(日) お渡し 午前11時〜午後7時
 ◎ 12月23日(祝) お渡し 午前11時〜午後7時
 ◎ 12月24日(火) お渡し 午前11時〜午後5時
 ◎ 12月25日(水) 臨時休業 ご予約は承れません

【お渡し場所】
 moi[カフェ モイ]吉祥寺 店頭

【ご予約方法】
 メールもしくは電話(営業時間内)にて必要事項[下記①〜⑤]とともにご予約をお願い致します。

 ① お渡し希望日 21日〜24日のいずれか
 ② 個数
 ③ お名前
 ④ お電話番号
 ⑤ ご来店予定時間 午前11時〜午後7時(24日〜午後5時)

なお、店頭でのご予約も承ります。スタッフまでお申し付けください。

すてきなクリスマスのお手伝いができますように!

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