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2013.9

アイザック・アシモフ『鋼鉄都市』
2013.10.8|review

筋金入りの右脳人間にもサクサク読めるSFミステリ。未来の社会にあって、人間特有のコンプレックスやプライドゆえロボットとの協調を断固として受け入れようとしない〝懐古主義者〟たちの存在をどのように扱うかという〝命題〟がユニーク。甘やかでも、苦々しくもなく、人間存在という目線から未来の姿を描こうとするアシモフの〝リアリズム〟に舌を巻く。

PS.ほぼ初めて読んだSF、楽しく読めました。O田さん、ドモアリガト。

トークカフェ『無意識のデザイン』
2013.10.10|event

ひさしぶりにトークイベントのご案内です。しかも、昨年7月のイベントで大好評だった建築家・関本竜太さんが再登場します。

今回は、「moi」の設計者でありフィンランド建築留学の経験ももつ関本さんが、見慣れた街の光景の中にそこからデザインが芽生える、いわば「デザインのたね」を見つけ出し、素朴な生活者の目線からいっしょにデザインについて考えてみようというもの。

プロフェッショナルではないけれど建築やデザインに興味がある、街を歩きながら不思議なもの、面白い光景を見つけるのが好きというみなさんのご参加お待ちしております!

──

◎ 無意識のデザイン
 出  演:関本竜太(「RIOTADESIGN」主宰)
 日  時:2013年10月30日[水]19時~(開場18:45)
 場  所:moi[カフェ モイ] 吉祥寺
 参 加 費:1,500円(ワンドリンクつき)
 申し込み:先着順(定員に達し次第締め切らせていただきます)

参加希望の方は、お名前、連絡先お電話番号、人数を明記の上、メール(件名「トークイベント」)にてお申し込み下さい。折り返し、受付確認メールを送らせていただきます。
また、申し込み受付完了のご連絡は営業時間内(正午~20時)となりますので、あらかじめご了承下さい。

入江相政『侍従長のひとりごと』
2013.10.11|review

ジジュウチョウ。肩書きは硬いけれど、著者の心はとても柔らかい。

たとえば、趣味として楽しんでいた「書」について、その〝いきさつ〟をこう語る。「街をあるいていて、そば屋の看板の『そ』の字がすばらしいと思えば、すぐ手帳に書きとめる」といった手習いならぬ「目習い」を通して「書」に触れてきた。ゆえに「師はないが、またすべてが師でもある」と(「すべてわが師」)。

数え年というものがあったからこそ、すべての日本人が同じように感じ得た「大晦日」がもたらす「甘いセンティメンタリズム」(「歳末、正月」)など、戦前の日本人の心のありようについて触れた文章も、なるほどなぁと面白い。

せわしない現代に生きる読者にとっても、鷹揚なジジュウチョウの「ひとりごと」につきあうのは至福のひとときといえるだろう。

戸板康二『劇場の迷子―中村雅楽探偵全集4』
2013.10.21|review

鷹揚な「千駄ヶ谷の小父さん」が、意外な〝童心〟をのぞかせる「中村雅楽探偵全集」第4巻。77年から91年にかけて発表された28篇が収録されており、これで「中村雅楽」が登場する短編はすべて出尽くしたことになる。

事件は、劇場やその近辺に生じるいわゆる「日常の謎」がすべて。血なまぐさい殺人などいっさい起こらない。戸板康二の関心は、劇的な事件そのもよりも、歌舞伎役者ら劇を演ずる人間の心の内側のドラマに迫ることにあったのかもしれない。

この第4巻であたらしいのは、若き編集者「関寺真知子」がひんぱんに登場し、中村雅楽にさまざまな影響をあたえるところ。わずか3ページ強で、二人の役者が重ねてきた長い歳月を読者に感じさせる「銀ブラ」、失意の雅楽のために竹野がひと肌ぬぐ「おとむじり」など、これまで以上に地味ではあるが味わい深い小品が並ぶ。

林伸次『バーのマスターはなぜネクタイをしているのか?』
2013.10.21|review

舞台裏なんてわざわざ見せる必要はない、と主張する人たちがいる。いま見えている舞台こそがすべて、だからだ。一理ある。けれども、お店の主人がどんなところに心を砕きつつ日々を過ごしているか知るとき、客として、その店への共感や愛着がますます強くなるということだってあるだろう。

ここには、とある渋谷のワインバーの「舞台裏」が、ときにちょっと生々しいくらい書かれている。もしかすると、それをちょっと厭だなと感じるひともいるかもしれない。けれども、夜な夜な笑い声に包まれるそのステージはこんな舞台裏なくしては存在しがたい儚い世界だというのも、また事実。店の当事者にして、こういうことがらをしれっと書くことができ、しかもそれが許されてしまうのは、もう、ひとえに著者である林さんの人徳以外のなにものでもない(真面目に笑)。

知り合いの書いた本だけに勧めづらいこともなくはないけれど、これから個人でお店を開くことをかんがえているひとはもちろん、客としてお店を利用する側の人たちにもぜひ読んでもらいたい一冊。お店という「ステージ」は、お客様の存在ひとつで輝きも濁りもするということを、きっとこの本を通じていっそう深く知ることになるだろうから。

ロバート・チャールズウィルスン『世界の秘密の扉』
2013.10.30|review

家族の再生がテーマのパラレルワールド譚。

広瀬和生『落語評論はなぜ役に立たないのか』
2013.10.30|review

「BURRN!」編集長として音楽評論の世界に携わってきた著者が、落語評論家としてのみずからのアティチュードをまとめた一冊。

ここで著者は、落語の本質を「同時代の観客の前で演者が語る芸能」としたうえで、評論家とは「ツウの客」「最も良い客」であろうとすることで「演者」と「客」の中間に位置する「媒介」として、客の側に語りかける者、いわば「水先案内人」のうような存在であるとする。それゆえ入門者に対しては、歴史でもあらすじでもなく、まず同時代の「誰を聴けばいいか」という情報を提供することこそが評論家の役割ということになる。そしてこうした立場から生まれたのが、著者の『この落語家を聴け!』(2008年、集英社文庫)である。ここでも、最後に特別付録として「『落語家』『この一席』私的ランキング2010」が収められており、本編と付録とで一応は(というのは、本人がこれは「落語ファンとしての2010年の総括であって「決して『お薦めの落語家』のガイドではない」とわざわざ断っているので)「理論と実践」のような構成がとられている。

「なぜ知っている噺を何度聞いても面白いのか?」「『ネタバレ』で問題無し」「マクラの意味」など、落語初級者にとって興味をそそられる内容もすくなくない。

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