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2月のれんらく帳
2005.2.1|column

2月になりました。

東京では、おそらく一年でもっとも寒い月ではないでしょうか。じっさい、日が陰ったなとおもったらいきなりちらほら小雪が舞ってきたりと、いかにも2月のはじまりにふさわしいきょうの空模様です。

さて、今月のおやすみは次のとおりです:

2/7[月]、14[月]、21[月]・22[火]、28[月]

なお、21[月]・22[火]は連休となりますので、お間違いのないようよろしくお願い致します。

今月もあたたかいお飲物をご用意して、みなさまのご来店をお待ちしております。

RONNY JOHANSSON TRIO『Tenderly』
2005.2.2|music

雪白(ゆきしろ)のジャズ。

スウェーデンのピアニスト、ロニー・ヨハンソン率いるトリオが奏でるジャズには、どこかそんなたたずまいがある。とりわけアールトの花瓶「Savoy」をあしらったジャケットデザインもしゃれている、最近でたアルバム「テンダリー」のオープニングを飾るナンバー「On Vacation」は、よく晴れた冬の朝にこそききたい一曲。

ロニー・ヨハンソンの弾くピアノはどこまでも透明で、軽い。それにクリスタルを通過した光のようなほどよい硬さ、がある。スウェーデンで活躍する森泰人のベースも存在感たっぷりで、全体のサウンドをギュッと引き締めている。このCDにきけるのは、まさしくあのなつかしい《北欧の空気》そのものだ。

つけくわえて、もうひとつ。「北欧」のジャズに、ピアノトリオというスタイルはもっともふさわしい。ピアノ、ベース、そしてドラムスという三つの楽器に期待されているのは、そこでは白熱したやりとりよりも、意味深い「余白」であるかのようにみえる。主張しすぎない、そんな「北欧的な美質」はまた、やはりジャズプレイヤーたちにもあてはまるのだろうか。

爽快で端正なサウンドをきかせるロニー・ヨハンソンやラーシュ・ヤンソンら「北欧のピアノトリオ」作品は、どこか北欧のプロダクトデザインにも似て、派手さには欠けるものの、じっくりと腰をすえてつきあいたいどれもチャーミングな「佳作」ぞろいである。

気の滅入る話
2005.2.3|column

20倍といえば、かつては「ボルツ」のカレーの話だったわけだが、いまはちがう。花粉だ。ことしのスギ花粉の飛散量はなんと昨年の15~30倍(!) 、もはや大量殺りく兵器である。報道によると、東京をふくむ関東地方南部で花粉の飛散がはじまる「Xデー」は2月10日を予想。けれどもみなさんお気づきのとおり、すでに1月から症状でてます、よね?

そのむかし、友人が「どのようにしてアレルギーになるのか?」についてとてもわかりやすく説明してくれたことがあった。友人によると、ひとはみなカラダのなかに「コップ」をもっているのだという。「コップ」の大きさには、当然「個人差」がある。「大ジョッキ」のような「コップ」をもつひともいれば、せいぜい「おちょこ」くらいの大きさしかないひともいる。その「コップ」には、日々アレルギーを引き起こすもととなる「抗原」が蓄積されてゆく。そうして、蓄積されてきた「抗原」が「コップ」いっぱいになってあふれだしたとき、そのひとはアレルギーを発症するのだそうである。

ぼくの場合は、どうやら「スギ花粉」にたいする「コップ」がかなり小さかったとみえ、「花粉症」にかかってからすでに20年以上にもなる。そのころはまだ「花粉症」の存在すら知られておらず、ぼくもただ「春先になるといつも、たちのわるい風邪をひく」とかんがえていたくらいだった。ところが、いまや「花粉症」はちょっとした「社会問題」の感さえある。それはまた、ここ20年ほどのあいだに「『コップがあふれてしまったひとびと』が激増している」ということを意味している。となると、花粉の大量飛散が取り沙汰されているこの春は、いままで「花粉症」と無縁だったひとにとってもいっきに「コップ」があふれてしまう危険を孕んでいるということになる。御用心!

ちなみにフィンランドには「スギ花粉症」は存在しないけれど、「白樺花粉症」というのはありそうだ。どうやら安住の地にはなりそうもない。

「ミラノっ子」事情
2005.2.4|column

ミラノ在住のイラストレーターで、友人のふじわらいずみちゃんと、パートナーでオリジナルの自転車を製作している安田マサテルさんがmoiにあそびにきてくれました。いずみちゃんとは、彼女がかつて「詩人」としても活動していたころにイベントを通じて知り合っていらいのつきあいですが、会うのはほんとうにひさしぶりで5年ぶりくらいのことでした。

今回おふたりからは、ミラノをめぐる「おもしろ話」をいろいろと伺いました。たとえば、ミラノはぜんぜんおしゃれじゃないという話。安田氏いわく「東京ではジャージで歩けないが、ミラノなら歩ける」とか。あと、イメージ的にいかにも「イタリア」だなぁ~とおもったのは、イタリア人というのは、いまだに「人と人」との「つながり」をもっとも大切にしているという話。

イタリアでは、ビジネスでもなんでも、直接会って、顔をみて話をしをしないことにはなにも始まらない。だから、いまだにホームページをもたないお店も多いし、あまりそういうことに熱心ではないらしい。それは、根底に人の手を介していないものにお金は払わないという考え方があるからで、そのせいかイタリアでは自動販売機がいっこうに普及しないのだ、とおしえてくれました。安易な「便利さ」よりは人の手の「ぬくもり」をとる、そんなある種の「ヒューマニズム」がこの国にはいまだ根強く残っているのでしょう。

ところで、いずみちゃんの今年の目標は・・・「お金持ちになる(「ユーロ」で)」(笑)。いいね!ぼくもぜひマネしたいとおもいます(「円」で)。そうそう、安田さんがつくる「木製自転車」、むっちゃカッコいいです!また、オリジナルデザインのフレームなど日本からのオーダーも受け付けているそうなので、気になったかたはぜひ安田さんのサイト「キノピオ」をチェックしてみてください。

※画像は「ふじわらいずみinキールナ(sweden)」

FLYING FINN!
2005.2.5|finland

雑誌『photon(フォトン)』#5の販売をはじめました。

特集は「FLYING FINN!~クリエイターにとって、フィンランドは特別な国なのだろうか」。巷にあふれるインテリア誌やファッション誌がとりあげるイメージ先行型の「フィンランド特集」にはもう飽きた、そんな方にこそぜひ手にとっていただきたい一冊です。

多数の写真とインタビューから構成される内容は、なかなかに興味ぶかいもの。フィンランド人デザイナーたちの、「フィンランドデザインとは何か?」という問いかけに対する「答え」もおもしろいのですが、それと同時にフィンランドを拠点に活動する日本人クリエイターたちに対してもおなじように問いかけている点があたらしいところでしょうか。つまり、フィンランド人/外国人という括りではなく、「フィンランドのクリエイターたち」という視点から「フィンランド」で活動することの意味をさぐってゆこうという趣向になっているのです。

もうひとつの「見どころ」は、moiの食器デザイン&照明プランを手がけた、おなじみ梅田弘樹&かおりご夫妻を大フィーチャー(!)した「光の旅」という特集。おふたりがフィンランドの教会建築を旅しながら、フィンランドの「光」、フィンランド人にとっての「光」を語っています(写真多数で「UMEファン」必見ですね・・・笑)。

とりわけフィンランドのデザインや建築に関心がなかったとしても、フィンランド人の「心性」にまでスポットをあてようというこの一冊は、フィンランドに行ってみたい、フィンランドに暮らしてみたいとかんがえるすべてのひとにとって、なかなかに読みごたえのある内容になっているのではないでしょうか。

WEB中心の販売、しかも東京ではまだほとんど取り扱っている店鋪がないというこの雑誌『photon(フォトン)』、お求めはぜひmoiでどうぞ!

◎ 『photon』ISSUE.5
 特集《フィンランド-FLYING FINN!》 1,000円(税込み)
 万が一、売り切れの際にはご容赦ください。

底力、なのだ
2005.2.6|column

ダービーや天皇賞は、「スピード」や「スタミナ」だけでは勝てない。「名馬は『言い訳』しない」と言ったのはたしか、かの井崎脩五郎センセーだったろうか。雨で湿った芝で持ち味のスピードが生かせなかったとか、距離がすこし長過ぎたとかいった「言い訳」のたぐいはしょせん「負け犬の遠吠え」、いや「負けウマのいななき」にすぎない。真の「名馬」とは、どんな状況下にあろうともきっちり結果を出すものである。「名馬」の条件、それはスピードでありスタミナであり、それ以上に「底力」である。

さて、ナゼいきなり「競馬」の話かというと、この週末のmoiは無気味なまでの静けさだったからである。「競馬」同様、お客さんが少ないとついその「言い訳」をさがしてしまいがちだ。雨だったから、暑かったから寒かったから、年の瀬だからお盆休みだからと、「安堵」するためにひとは「言い訳」をさがす。でも、それはちがう。雨だろうが雪だろうが、暑かろうが寒かろうが、年の瀬だろうがお盆休みだろうが、「繁盛店」はいつだって、どんなときだって繁盛しているものなのだ。つまり、moiには「底力」が不足している。

はたして一体どうしたら「底力」が身につくものなのか、それはわからない。というよりも、それがわかるようなら「競馬」でひと稼ぎするのもそうむつかしいことではないだろう。商売とは、どうにも厄介な代物である。

ラーメンのまち
2005.2.7|column

不思議なもので、「そういえば最近『取材』のオファーがないな」と思ったときにかぎって話が舞い込んでくる。こういうのも《言霊》っていうのでしょうか?

きょうは午前中、雑誌『東京ウォーカー』の取材。でも、うっかり発売日を確認するのを忘れてしまいました。「荻窪」の街を紹介するコーナーだそうです。

ライターさんによると、今回あえて「ラーメン屋」ははずしたとのこと。なんだかんだいっても、やはり「荻窪=ラーメンのまち」というイメージは根強いようですね。でも、地元のお客さんと話をしていると、「めったに荻窪ではラーメン屋に入らない」というひとも多かったりします。かく言うぼくも、そのひとり。ラーメンに対してさほど情熱的ではないもので。それに、言われるほどには「ラ-メン屋」もないですしね。

だから、ぼくに「荻窪のおいしいラーメン屋さん、おしえてください」と尋ねるのは、どうかご遠慮ください(笑)。

Rainwaltz
2005.2.8|column

雨はひさしぶりだった。

カウンター越しに雨模様の街をみやりながら仕事をしていると、不意に、なんともいえずしっとりとしたうつくしいメロディーが耳に飛び込んできた。CDのタイトルリストをチェックすると(ふだんはぜんぜんタイトルなんてみないし、覚えもしないのだ)、ずばり「Rainwaltz」。う~ん、出来すぎ。

それはともかく、店でつかっているMacの具合が悪くて困っている。正規代理店に持ち込めばあっさりなおるような症状だが、修理代は5万円以上かかる。最近でたmac miniが買えてしまうような値段だ。あまりにばかばかしいのでだましだまし使っていたのだが、さすがにそれでは済まないような状況になってきた。そこで、どこかに安くMacを修理してくれるようなひとはいないだろうかとおもっていたところ、宅配便のドライバーが近所に修理できるひとがいるとおしえてくれた。聞きもしないのに、である。しかも、いつも来るのとはちがうドライバーが、だ。自身Macユーザーであるそのドライバーが、ぼくがMacを使っているのをみておしえてくれたのだ。仕事でよく出入りしているところだという。

これもまた、出来すぎな話。

無音の恐怖
2005.2.9|music

きのうにひきつづき、出来すぎな話を。

CDプレーヤーが壊れてしまった。カエターノ・ヴェローゾのCDが終わって、べつのCDに差し替えたとたんうんともすんともいわなくなってしまったのだ。念のため、ちがうCDで試してみたりしたものの状況は変わらず。そういうときにかぎってターンテーブルの針は折れてるわ、MDプレーヤーは自宅に持って帰ってしまったわで、打つべき手立てがみあたらないのだった。そして、店内は無音。無音はいやだ。だいたいが、気まずい雰囲気になる。いかにふだん「音」に助けられていたかが、こんなときよくわかる。

しばし途方に暮れていると、やってきたのはレコードショップ店員のSさん。続いて、仕事のかたわら、ミュージシャンとしてライブハウスなどで活動しているOさんもやってきた。ともに起きている間はつねになにか音楽をきいているという無類の音楽好きである。そんなふたりが、よりによってこんなときに限ってやってくるのだからもうワケがわかんない。いつもならば持ってきた音楽を聴かせてもらったり、逆に聴かせたりして音楽談義に花を咲かせるところだが、主役を欠いた舞台よろしく無音の世界ではどうにも調子がでない。挙げ句の果てには、「なんなら交代で歌でも歌いましょうか?」なんてバカな提案をしてお茶を濁す始末・・・。

けっきょく、これはきっとお前ら、たまには耳を休ませたらどうなんだという「音楽の神さま」のおぼしめしにちがいない、ということで話を無理矢理まとめて笑いあったのだった。ところが、おふたりが帰られた後ダメもとでもういちどCDをかけてみると、なんと、まるでなにごともなかったかのように音が出るではないか!!!うーん、まったくもって出来すぎな話である。

COFFEE AND ROASTER
2005.2.10|book

コーヒーをじぶんで淹れる、最近そんな「たのしみ」にハマっているという方、おおいのではないでしょうか?

「おいしいコーヒー」を飲むためにいちばん大切なこと、それはよく「教則本」にあるような知識-どんな器具をつかって、何グラムの豆をどのくらいの温度のお湯で抽出すればよいかといった-である以前に、じぶんにとって「おいしい」とおもえるコーヒーとはどんな味なのかを知ることにあるとぼくはかんがえています。というのも、あくまでも「目的地」は「おいしいコーヒーを飲むこと」にあるのであって、「目的地」があってはじめて、その「道筋」(たとえば「抽出技術」)も決まってくるものとおもうからです。ですから、これからじぶんで「おいしいコーヒーを淹れたい」という方にはぜひ、じぶんにとっての「目的地」といえる味と出会うところからはじめてもらいたいものです。いろいろな喫茶店やカフェでコーヒーを飲んでみたり、自家焙煎店でコーヒー豆を買ってみたり、そんななかで、ある日きっと「これだ!」とおもえる味と出会えるはずだからです。

最近でた本『COFFEE AND ROASTER』(旭屋出版)は、そんなみなさんにぜひ手にとっていただきたい一冊です。とくにおすすめしたいのは、「私のおすすめコーヒー」と題したロースタリーカフェ(自家焙煎したコーヒーを提供しているカフェ)や自家焙煎コーヒー店へのインタビュー記事。じぶんにとっての「理想の味」を追求するロースターたちの、百人百様の《哲学》のようなものが伝わってきます。また、焙煎技術の基本やブレンドの意図、それに近ごろよく耳にする「スペシャルティコーヒー」や「フェアトレード」といった言葉の解説もされていて、焙煎にも関心がある、コーヒーについてもっと深く知りたい、といったひとにも役立つ内容になっています。

コーヒーを飲むというよりはコーヒーと出会う、そんなたのしみを教えてくれる一冊です。

side-b 配布中です
2005.2.11|publicity

取材の様子を、以前このブログでもご紹介したフリーペーパー『side b』が完成、手元にとどきました。

特集は「北欧デザインに出会う旅。~アルヴァ・アアルトからフィンランドのデザインに触れる」。このブログを読んでくださっているかたならきっと、いろいろな雑誌に登場する「北欧」や「フィンランド」にかんする記事を日ごろからチェックされていることと思います。そしてそんなかたは、もしかしたらこの特集に登場するショップやスポットを目にしても、「ああ、またか」という感想を抱かれるかもしれません。でもやっぱり、フィンランドの落ち着いた街並やショップの洗練されたディスプレイの写真を見れば自然と旅心をかきたてられ、なんだかなつかしい気分になってしまうのです。もちろん、これから行ってみたい!というかたにはカジュアルなガイドブックとして役立つはず(さすがは「TAITO」さんがつくられているだけあって、フリーペーパーとはおもえないクオリティーですよ)。

moiも登場しているこの『side b』、現在moiの店頭にて配布中です。ほかにも、渋谷のカフェ、クラブ、CDショップ、映画館などを中心に配布中とのことですので、もし街でみかけたら手にとってみてくださいね。

PETER NORDAHL『Directors Cut』
2005.2.12|music

北欧ジャズの風通しのよさをいまもっともよく体現しているのがこのひと、スウェーデンのピアニスト、ペーター・ノーダールではないだろうか。

ピアニストとしては、トリオでの活動をとおしてスタンダードからバカラックまで幅広い楽曲を柔軟にとりあげる自在さを、またプロデューサーとしても、キュートなシンガー、リサ・エクダールを世に送りだすなどスウェーデンの若手ジャズミュージシャンのなかでも一際目をひく存在であるペーター・ノーダールだが、ここに紹介するアルバム『Directors Cut』はとりわけ異色の一枚だ。

全10曲のうち、彼自身のオリジナルが8曲(残りの2曲はバカラックの「ディス・ガイ」と映画「イル・ポスティーノ」のテーマ)。トリオをベースにしながら、曲ごとにフルート、サックス、それにトロンボーンといった管楽器をくわえてよりクラブジャズ的なアプローチを展開している。逆にいえば、あまりジャズの匂いのしないアルバムではある。3年ちかく前に手に入れたものだが、moiではオープン以来コンスタントにかけつづけている「定番」でもある。

ペーター・ノーダールのピアノというと、なんともいえないリリカルな音色が魅力なのだが、本来の持ち味はそのままに、ここではよりクールでスタイリッシュなプレイが繰り広げられている。それはたとえるなら、ステファン・リンドフォルスがデザインした食器「Ego」のような印象、かな?

ちょっとブルージーで映画のサウンドトラックを彷佛とさせる「at the movies」。ラテン・フレーバーの楽曲での趣味はいかにも「北欧人」ぽい。とりわけ、夜のしじまにしみ入ってゆくようなワルツ「hymn 3:4」。ストックホルムへ行って、もしも夜、そぼふるような雨降りだったならこの曲を口笛で吹こうときめている(まだ、行ったことないのです)。

ジェリー・マリガンの名作「Night Lights」への北欧からの返答。スクエアなニューヨークとヒップなストックホルム、ふたつの夜に思いをはせつつ耳かたむけたい。

バレンタイデー
2005.2.13|column

ワケあって、「イデー」(IDEE)についてブログ検索してみたところ、意に反して「バレンタイデー」 などという「入力ミス」のブログ記事がひっかかってきた。しかも多数。

うっとうしいと思いつつ、こんどは、わざと「バレンタイデー」で検索をかけてみた。37人も、いた。「バレンタインデー」を、勢いあまって「バレンタイデー」と入力しちゃったひとの数が、である。どうでもいいっちゃいいのだけれど、ちょっとなんだか新鮮な驚きがあったもので書いてみた。

で、いま気づいたのだけれど、こんなネタを書いてしまったからにはこの記事も「バレンタイデー」でひっかかっちゃう、ということ???あーあ。みなさま、よいバレンタインデーを!

バイオリズム
2005.2.14|column

店にも「バイオリズム」といったものがあるようで、その日その日で好不調の波がやってきます。

三連休最後のきのうは、まさに「アンバランス」な一日。満席になるような時間帯と「無人くん」状態とが交互にやってくる、おかしなパターンが終日つづきました。しかも満席状態のときにかぎって、わざわざ遠方から足を運んでくださるお客さまがやってきたり・・・店主としては心が痛む瞬間です。

それにこういうこともめったにあることではないのですが、きのうは開店前に3人、閉店後に2人お客さまがやってきました。おもわず、天にむかって悪態のひとつもつきたくなるような心境です。

お入りいただけなかったお客さまには、この場を借りて「ごめんなさい」。どうぞまたいらしてくださいね。せめてお入りいただけたお客さまには、よい時間をすごされたことを願うばかり。

きょうのおやすみで仕切り直しといきたいところです。

ココロの調律
2005.2.15|health

最近どうもひきこもり気味だ。

休日、家でこまかいしごとを片づけたりなどしていると、あっという間に一日が終わってしまう。夜からでかければいいのだけれど、あくる日のことをおもうとなんとなく億劫だ。だいたい昔から、どうしても外に出ずにはいられないといった性分でもなかったし、日々いろいろな方々とたのしくおしゃべりなどさせてもらっているので、ま、休日くらいはじーっと静かにすごすのも悪くないかなとかんがえていた。けれども、こんなふうにして毎日が飛んでいってしまうという生活は、やはりどうも具合がよくないんじゃないだろうか・・・。

楽器に調律は欠かせない。調律をせずに使いつづけていたら、やがてその楽器はほんらいの正しい音をだせなくなってしまう。ココロもおなじこと。調律をしないココロからは、ゆとりのないギスギスした感覚しかうまれない。そして「休日」とはきっと、ココロを調律するためにあたえられた日なのだろう。たとえほんのわずかな時間であったとしても、しごとを離れてじぶんのココロの「声」をきく時間こそがぼくらには必要だ。

散歩の途中、ふらりと立ち寄った古本屋で手にした北欧のえほんをながめながら、そんなことをかんがえた。

地震だっ
2005.2.16|nature

明け方の「地震」で飛び起きたというかた、多いのではないでしょうか?

茨城県の一部で震度5弱、moiのある東京都杉並区でも震度4を記録しました。震源は茨城県南部、震源の深さは約45キロ、マグニチュードは推定5.4とのこと。地震のエネルギ-と震源の深さのわりには「けっこう揺れたな」という印象をもちました。

それにしても、きのうsanapuuさんから「空の様子がおかしい」というコメントをいただいていたばかりだったので、かなりびっくりしました。たしかに、きのうは朝から「地震雲」にも似た帯状の雲がたくさん出ていたのですが、この時期にありがちな飛行機雲が上空に残りやすい気象条件だったこともあり、あまり気にはしていませんでした(実際、飛行機の姿も確認していましたので)。そこでsanapuuさんにも「ご心配なく」なんてコメントを返したばかりだったのに・・・。あるいは、まぎらわしい空模様だったことで、かえってほんとうの地震雲を見逃してしまった可能性もあります。やはり、何ごとも頭ごなしに決めつけるのはよくないですね・・・反省。

ところで、きのうのそのコメントにもかいたのですが、ここ最近ふたつほど気になっていたことがありました。ひとつめは、今回の震源にもちかい茨城県那珂湊沖で、10日ほどまえにめずらしい深海魚が捕獲されたというニュース。もうひとつは、日曜日の帰宅時に目にした大きな赤い三日月。大きな地震のまえに深海魚があがってくるという話はよく聞くところですが、今回もその符号が一致しています。「月」の異常も同様ですが、ただ空がもやっていたりすると赤みがかって見えることはよくあることですし、低い位置の「月」もまた大きく赤みがかって見えるものですので、ある程度は気をつけてかかる必要があります。今回の場合、星がみえるようなクリアな状態にもかかわらず、しかも位置がやや高くなってからもますます赤みが増しているような状態だったので気になっていました。画像はそのとき携帯で撮影したものです(画面中央の街灯の左手、オレンジ色の光が「月」です)。ふたつとも気にはなっていたものの、残念なことに、今回のような地震を確信するまでにはいたりませんでした。

ところでもうひとつ、気になっていることが・・・。じつはけさ、寝坊しました。毎朝、携帯電話の目覚まし機能をつかって起きるのですが、どうしたわけかけさにかぎって作動しなかったのです。設定を確認しましたが、問題はなし。もちろん、いままで一年半くらいのあいだ、こうしたトラブルはいちども起こっていません。大きな地震の前には電磁波の影響によって電気製品が誤作動するという話もよく耳にするだけに、たんなる故障かなにかであればいいのですが・・・。ついつい後回しにしてしまいがちな防災用品の準備をととのえるには、ある意味絶好の機会といえるかもしれません。

というわけで、きょうのおススメ本は田中康夫『神戸震災日記』(新潮文庫)です。

北欧の家具のような音楽
2005.2.17|music

ストイックでありながらも、けっしてひとの手のぬくもりをわすれない北欧の家具がぼくはすきです。そして、The Sleeping BeautyのあたらしいCD「liv」はまさに、そんな北欧の家具をおもわせる作品です。

じつはこのCD、2003年の秋にmoiでおこなわれた高木やよいさんによるドローイング展のために制作、限定発売されたものなのですが、今回その音源を「泣く子も黙る(?)」オノ セイゲンがリマスタリング、さらにスリーヴデザインをリニューアル(もちろん高木やよいさんの作品。うつくしい!必見!)しあらたに正規リリースされることとなったものです。朝、夕暮れ、夜、そして雨の日の午後に聴きたい音の粒-という帯のことばどおり、ピアノとアコーディオン、そして声という3つの「色」が繊細なタッチで静謐な時間をなぞってゆきます。ここにあるのは、白いキャンバスに絵の具を塗り重ねてゆくようにていねいに描かれた音のタブロー。

moiの空間をふまえておこなわれた展示だけに、ここに聴けるサウンドはまた、ある意味moiで響くためにうまれてきた音といってもよいかもしれません。そんなわけで、ここmoiの空間を気に入っていただいている方、また、こころの「磁針」がいつも北を指しているという方はぜひ、いちどこのCDを手にとってみてください。

◎ The Sleeping Beauty / liv(マドレーヌレコード)
  1,575円 発売中

お求めは、moiのほか、HMV、タワーレコード、amazonなどでどうぞ。

まぼろしの肉パン
2005.2.18|cafe

エスフィーファのメニューから「肉パン」が消えてしまったという《衝撃的なニュース》を知ったのはきょうのこと、京都に帰省していたNさんから教えられたのだった。

と、こんなふうに書いたところで、いったい何のことを言っているのかわからないという人もいるだろう。そこでちょっと説明をしておくと、「エスフィーファ」というのは京都にあるちいさな喫茶店のことで、くだんの「肉パン」というのはその店のいわば看板的存在のメニューである。この「肉パン」、イメージとしては揚げてないピロシキといった感じのもので、ブラジルでよくたべられているものらしい。そもそも「エスフィーファ(esfiha)」という店名からして、すでにこの「肉パン」のことなのだ。

ぼくがmoiをつくるとき、「こんな店をつくりたい」と心のなかで思い描いた《理想の店》がじつはこの「エスフィーファ」である。「ちいさな空間でひとりで切り盛りしている」とか、「大通りからすこし入った路地にたたずんでいる」とか、「いろいろなお客さんがやってくる」とか、「店内にちっちゃな電球がたくさん灯っている」とか、ちょっとした部分で共通するところもおおい。そんなわけで、「エスフィーファ」は「moi」にとって「心の師」、あるいは「頼れる兄貴」的存在のお店といえる。

そうして、その「エスフィーファ」にならってこしらえたメニュ-がmoiにはある。プッラ(フィンランド風シナモンロール)である。コーヒーのアテとして提供しているこの「moiのプッラ」は、じつはなにをかくそう「エスフィーファの肉パン」に影響されてメニュー化されたものなのである。もちろん、「エスフィーファ」にはほかにも「赤いグラタン」と「白いグラタン」という名物メニュ-があるし、コーヒーだってちゃんとしている。たとえ「肉パン」がメニュ-から消えてしまったとしてもお店としての魅力が消えてなくなってしまうというわけではない。それに、長年お店の「顔」として親しまれてきたメニューをなくすというのはそれ相応のやむにやまれぬ事情あってのことであろうから、外野がとやかく言うべきことではないとおもう。けれども、あの「肉パン」をもう口にすることができないのかとおもうと、やはりそれはとても淋しいことではある。

ところで《衝撃的なニュース》はもうひとつ、あった。「エスフィーファ」に新たなメニュ-が加わっていたというのだ。ごくすくない、けれども選りすぐりのメニュー構成を貫いてきたこの店だけに期待は高まる。で、そのあたらしいメニューというのは、カレーだった。食べてもいないのにこんなことを言うのもどうかとは思うが、「カレーはないだろ、カレーは!」、そう叫ばずにはいられない心境だ。とはいえ、そのこだわっているのかいないのかさっぱりわからない微妙さ加減がまたこの店ならではの魅力で、「いいよエスフィーファ」ってなるわけだけれど。こういうのって、倒錯の愛と呼ぶのでしょうか・・・?

一連の「手続き」
2005.2.19|music

ターンテーブルの針を、まだ交換してそれほど間がないにもかかわらずうっかり折ってしまった。

腹立たしいのでそのまましばらく放置していたところ、「フィンランド語教室ただいま休学中」のN本クンが「家に眠っていたので・・・」と言いつつ、あたらしいカートリッジを手にやってきた。「えらい、えらいぞN本クン。さすがは4月から『新社会人』だ」というわけで、ひさしぶりに店でアナログレコードをきいている。いいねぇ、アナログは。いかにも音楽をきいている、という感じがする。

コーヒーを淹れたり、レコードをかけたり、しょせんぼくはその一連の「手続き」がすきなのかもしれない。

bar bossa
2005.2.21|column

渋谷の「バール・ボッサ」へ。

かつて職場が目と鼻の先だったころにはよく寄せてもらっていたものだけれど、その後渋谷へでかける機会もめっきり減り、いまではすっかりごぶさた気味である。思えば、この店のおかげでずいぶんたくさんのひとたちと出会うことができた。音楽家の高橋ピエールくん、ギタリストのゴローさん(aka.moose hill、naomi & goro)、ウッフコック号、ボッサ51の小嶋さん、先日このブログでも紹介したThe Sleeping Beautyのおふたり、それにCINQ DESIGNの保里さんやグラフィックデザイナーのAくん、インディーズレーベル「MOTEL BLEU」を主宰するSさん、Kさん、雑貨などのスタイリストとして活躍中のKさんなどなど挙げていったらきりがない。

ごく親しいというわけではないけれど、イベントを手助けしてもらったり、ひさしぶりにどこかで顔をあわせれば「どうもどうも」なんていいながら話がはじまるようなひとたちである。そんなわけで、bar bossaという店はぼくにとってどんなカフェよりも「カフェ」といえるような場所だった。そしてこんなふうにしてひととひととがつながっていられたのは、ひとえにマスタ-林さんの手腕によるところである。

ぼくにとって林さんというひとはブラジル音楽の先生であり、また「とっておきの話」(笑)をこっそりおしえてくれる同業の先輩であると同時に、ひととひととをつなぐことにかけてはまさに「名手」と呼べるようなひとである。ということは当然、つなぐべきではないひとたちをつながない「名手」でもまたあるわけで、そのあたりの絶妙なさじ加減にはひたすら感服するしかない。

「客あしらい」ということばが正しいか否かはべつとして、「よい店」にはこうした目配りのきく「主人」の存在が不可欠なものである。なんて、この店ではいつもほろ酔い気分のあたまでかんがえている。

国立へ
2005.2.22|cafe

国立(くにたち)へ。

以前、銀座においしくてカジュアルなフレンチのレストランがあったのだけれどいつのまにかなくなってしまい残念におもっていたところ、その店のシェフがあらたに国立に店をかまえたという話を聞きつけ、散歩がてらランチにでかけてみた。駅から6,7分ほどあるいたところにあるルミエール・デュ・ソレイユという店。手ごろな値段で、素材をいかしたシンプルな味つけのおいしいフレンチにありつける。ご近所のかた、ぜひ行かれてみてはいかがでしょう。おすすめ。

そして、その後は腹ごなしの散歩もかねて(といいつつ、じつのところ道に迷ってめちゃくちゃ歩くはめになったのだが・・・)WILL cafeへ(写真)。おなじみ、moiのスゥイーツをお願いしているパティシエ来栖さんのお店。あかるい店内でゆっくりすごす早春の昼下がりは、やはり最高。「むらさき芋チーズケーキ」は、「むらさき芋」のまったりした舌ざわりとチーズのほどよい酸味がブレンドされて絶妙な味わい。う~ん、ごちそうさま。

きくところでは、中央線高架工事にともない「原宿駅」に次いで古いという国立の駅舎も近い将来なくなってしまうのだとか・・・。「大学通り」の桜もうつくしいこれからの季節、郊外の趣きがいまものこる「国立」の街をのんびり散歩するのもよいのでは?

春一番
2005.2.23|column

ふつうのひとがよろこぶべきところをよろこべないとなると、それはたいてい「あまのじゃく」と片づけられてしまうのだが、花粉症のひとが「春一番」をよろこべないのはどうしようもない。かなしい現実だ。

つよい南風が吹きあれたここ東京では、きょうついに「春一番」が観測された。気温も4月並みのあたたかさということで、いよいよ本格的なスギ花粉シーズンの到来となりそう。あるニュースによると、「花粉症」にともなって医薬品を中心に毎年かなりの「経済効果」があるらしい。たしかにぼく自身も、アレルギー症状を抑える薬、目薬、マスク、目の洗浄液といったアイテムがこの先、ゴールデンウィーク前後まで手ばなせなくなるし、またひとによっては空気清浄機や乾燥機つき洗濯機を購入するなんて話もあるだろうから、かなりの「効果」があるとしても不思議はない。

ところがその一方で、花粉症のひとが無駄な外出を差し控えることにともなうマイナス効果のほうが、その「経済効果」をはるかにしのぐという調査報告もあるのだとか。実際、ぼくもこれからの季節プライヴェートで出かけるなら雨の日or寒い日ねらいだし、不必要な外出はできるかぎり避ける。花粉症にとっての「花粉」は「毒ガス」にひとしいからだ。

ところで、ここにきて林野庁がようやく「スギ花粉対策」にのりだした。雄花のおおいスギを優先的に伐採することで花粉の飛散を半減できるという調査結果がえられたというのだ。もともと国の植林政策の失敗が引き起こしたいわば《公害》であるだけに、国はきっちり責任をもって国民の「花見する権利(?!)」も守っていただきたいものである。

CLUB AURORA
2005.2.24|music

フィンランドのユースカルチャーに関心があるというかたに、うってつけのイベントがあります。

「テクノ界のエルトン・ジョン」ことジミ・テナーをはじめ、国内外で活躍するフィンランドのDJ、ミュージシャン、メディアアーティストらが一堂に会してくりひろげる一夜限りのクラブイベント「CLUB AURORA(クラブ・オーロラ)」です。ジミ・テナーのほかにも、Uusi Fantasia、DJ ヨリ・フルッコネン、それに60年代から70年代にかけてのフィンランド産ジャズやレアグルーヴの復刻などでも知られるSahko Recordingsのレーベル・オーナーDJ TGといったメンツが登場予定。また、当日はメディアアーティストによる作品上映などもあり、フィンランドのクラブシーンに興味のあるひとにはたまらない内容となっています。

ところでこの「CLUB AURORA」、来月開幕する「愛・地球博~expo.2005」の関連イベントとしておこなわれるものだそうですが、こうしたイベントの場合、往々にしてふだんこの手のイベントとは無縁の「おエラいさん」のお客もおおくイベント的に盛り上がりに欠ける内容になりがち。というわけで、みなさんの力でぜひフロアを熱く盛り上げてください!

◎ CLUB AURORA@SDLX

 2005年3月18日[金]スーパーデラックス(六本木)
 前売3000円、当日3500円(ワンドリンク付き・税込)
 前売お問い合わせ 「スーパーデラックス」
 予約専用メールアドレス aurora*super-deluxe.com

現実逃避?!
2005.2.25|column

春一番が吹いたかとおもえばそのあくる日には雪が降りつもるという、あいかわらず激しいお天気模様です。

そんなお天気に左右されてか、昼間はずっとひまだったのに夕方から急にお客さまがたてこんだりと、ヒトの動きもなにやら激しい一日です。店をやっているかぎり「確率論者」にはならないでしょうね・・・でも、「神秘主義者」にはなるかもしれない。ヒトの行動パターンはつくづく「ミステリー」です。

それはともかく、昼のあいだはひまにあかせて「あてのない旅」のプランを練っていました。それもかなり綿密に。もし荷物さえまとめれば、いますぐにでも出発できるくらいに。いや、ほんとうは、ひまならひまで「あてのない旅」よりも「さしせまった確定申告」の準備をしなくてはならないところなのだけれど・・・現実逃避とはまさにこのこと。

Archi+Decor No.3
2005.2.26|publicity

ムック『Archi+Decor(アーキアンドデコール)』No.3(エイ出版社)の「その道の人がすすめるワザあり小物」というコーナーに、店主/岩間が登場しています。

「これさえあれば北欧風!」ということで、気軽に手にはいる雑貨2点をセレクトさせていただきました。休日を北欧のカフェ風にしてしまう小物ということでえらんだふたつは、フィンランドのティモ・サルパネヴァが手がけた傑作「Timoグラス」と、スウェーデンのピアニスト、ロニー・ヨハンソンのCD「Tenderly」。どちらもすでにこのブログで紹介済みのグッズです。

シンプルなフォルムと実用性に徹底的にこだわった「Timoグラス」は、いまmoiで取り扱っているアイテムのなかでもとりわけ人気の逸品。お求めいただいたお客さまからも好評です。ロニー・ヨハンソンのCDは、ジャズ=夜というおきまりのイメージとは裏はらに、冬の晴れた朝にこそききたい一枚。アールトの有名な花瓶「サヴォイ」をあしらったジャケットは、雑貨的にもアリですよね?

さて、ここからは「こぼれ話」。じつは「小物」ということでボツになってしまったのですが、今回セレクトしたなかにはもうひとつ、第三のアイテムが存在していました。アルヴァー・アールトの「スツール#60」です。アールトが設計した図書館のためにつくられたことから、しばしばその名前をとって「ヴィープリの小椅子」ともよばれるこのスツールは、一見なんの変哲もないよくありがちなスツールにもみえますが、全体のバランス、それに「挽き曲げ」というフィンランドの伝統技法を応用した美しいカーブをもつ脚など、みればみるほど、使えば使うほど愛着がわいてくるなんともチャーミングな椅子なのです。

いうまでもなく、アールトのスツールの魅力はそれだけではありません。最大の魅力は、その使い勝手のよさにあります。小ぶりで場所をとらないこと、スタッキングがきくこと、そして自由に持ち運びができることがそれです。つまり、部屋の中のいちばん陽あたりのいい場所に持ち運んで使えば、いつだって「特等席」で過ごすことができるというワケです。使わないときには、ちょっとしたオブジェを飾るのにも最適です。

椅子/音楽/ドリンクという《カフェの聖三角形》を念頭にセレクトしただけに、そのうちのひとつだけがボツってしまったのはなんとも無念・・・。本屋さんで手にした折りには、ぜひ「フムフム、これとあと『アールトのスツール』なワケね」とかんがえながら眺めていただけると、うれしいです。

アールト? アアルト?
2005.2.27|finland

ギョエテとは オレのことかと ゲーテ言い。

こんな、古い川柳を思い出させるような事態が、フィンランドの建築家「ALVAR AALTO」をめぐってもまた、おこっている。というのも、日本の雑誌などにこの建築家の名前があがるとき、それはおおよそ4通りの仕方で表記されているからにほかならない。

その1 アルヴァ・アアルト
その2 アルヴァ・アールト
その3 アルヴァー・アアルト
その4 アルヴァー・アールト

原因は、苗字、名前それぞれについてカナに変換する場合の見解が統一されていないことにある。じつは、ほかにも苗字をアルヴァル、アルバルなどと表記するケースもごくまれにあって、事態はますます混乱する一方だ。

では、いったいどれが「正しい」のかという話になると、これもまた意見の分かれるところでそうカンタンには答えはでないのである。フィンランド語の発音からすると、苗字についていえば「アールト」がより自然であるように感じる。一方、名前はというと、「r」の発音が巻舌になるのでこれをカナに直すというのはかなり困難だ。それだけにやはり、なにがしかの「きまりごと」をつくって統一したほうがよいのではないか、そう思っている。ちなみに、フィンランド大使館とフィンランド政府観光局では「アルヴァル・アールト」で統一しているのか、おなじ表記をしている(当たり前か・・・)。

以前、『アールトとフィンランド-北の風土と近代建築』を著した伊藤大介先生がmoiに来店された折りにも、たしかそんな話をされていたように記憶している。ぼく個人は、「アルヴァー・アールト」という表記に統一していて雑誌等にもできるだけそのように表記してもらえるようお願いしているのだけれど、もしガイドラインのようなものが存在するのであればいつでもそれに変更する心づもりはできている。もちろんそのときには、moiの「ブレンド」の名前もまた変わることになるわけだけれど。

喫茶 茂井?!
2005.2.28|event

喫茶 茂井、と書いて「きっさ もい」と読む。って、いきなりなにを言いだすんだとお思いでしょうが、春、三月のmoiはこんなイメージでいってみようかな、といま思案中。

じつはさきほど、あすからはじまる柏木江里子さんの展示「パターンは踊る展」の搬入を終え、すっかりそんな気分になっているところなのです。柏木さんは、最近では井上由季子さんの著書『紙から生まれる暮しの愉しみ』のブックデザインなど手がけていらっしゃるグラフィックデザイナーで、その凛とした空気をたたえたデザインは、思わず姿勢を正したくなるようなきりりとしたうつくしさが印象的。「和」の意匠を連想させる柏木さんの作品ですが、そこにはまた、どこか北欧の空気を思い出させるものも・・・。そこで、「ぜひmoiで展示を」と無理を承知でお願いしたところ、晴れて今回の展示が実現したという次第なのです。

この「パターンは踊る展」は、先ごろ柏木さんのデザインによってつくられた「ブックカバーになるグリーティングカード(画像)」のモチーフとしてもつかわれている、シンプルでありながらとても緻密に考え抜かれたオリジナルの「パターン」作品の数々を展示するものです。ほかにも、オリジナルの「文様」をあしらった「てぬぐい」や「ぽち袋」、「文箱」といった小物、桜のはなびらや葉っぱをかたどった「コースター」や「ティーコジー」もあわせて展示・販売します。

より多くのみなさんにごらんいただきたいので、会期はおよそ一ヶ月間と長めに設定しました。いつもより、「和」のテイストざっと50%増量中(当社比)の「moi」、あ、いや「喫茶 茂井」をぜひよろしくお願いいたします!

2005.3
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2005.1