2004.8
> 2004.7
BRAZIL:BODY NOSTALGIA(~25日、東京近代美術館)を観てきました。なにせ「ブラジル好き」でもあるもので。
9人のアーティストの作品を、〈身体性〉という切り口からとらえることで、複数の民族/歴史がポリフォニックに交錯するその国の特異性を浮き彫りにしようという意欲的な展示ではありました。
が、ひとくちに〈身体性〉といっても、深く社会性に根ざした表現がある一方で、限りなくパフォーマンス的なものもあり、全体を通しての印象という点ではちょっと希薄だったかも。
ふだんあまり接する機会のない、ブラジリアン・アートの「ショーケース」という意味で、むしろ刺戟的でした。
その後、神楽坂に流れて、路地裏のお茶屋さんの建物を改装(というよりはそのまんま)したお店でごはんをたべましたが、日頃あまり縁のない町の、しかも路地裏、というのは、ちょっとした「旅気分」をかきたててくれるものですね。
荻窪の路地裏(?)にたたずむmoiも、ときにはそんな気のきいた〈舞台〉としてみなさんのお役に立ちたいものです。
炎暑の中、道行くひとの気をなんとか引けないものかと思い、テイクアウトメニューを考案してみました。
自家製はちみつレモンスカッシュ。マラソンの給水所の発想で、①ちょっと栄養ありそうで、②歩きながらさくっと水分補給できる、のがポイント。 しかも、自分の体温を超えるような暑さになると、ひとは「炭酸系」のドリンクを欲する、という「飲食業界の定説(?!)」にならい、さわやかな炭酸系の味わいに。
ふと思いついてから3時間後には商品化。なんだこの異様なスピードは!ひとりで店をまわすということは、毎日が「すぐやる課」状態、この軽快さこそが身上なのです。
ところが、道行くひとの食いつきはいまひとつ・・・。う~む、企画だおれ、かも。すでに幻のメニュー誕生の予感。
「すぐやる課」は、こうしてときに「すぐやめる課」だったりもするのです。
国立のWILL cafeさんより今週のケーキ「あんずケーキ」が到着しました。食欲増進作用のある「あんず」は、夏バテ気味のいまの時期にぴったりですね。
ところで、今夜はやっと熱帯夜からも解放されそうですが、夏の夜にぴったりの耳に涼やかなライブはいかがでしょう? 都内のカフェやレストランを舞台にライブ活動をされているボーカリスト廣井亜以子さんのステージが、今週の土曜日、三鷹のレトロなバー文鳥舎さんでひらかれます。
キュートで透明感あふれる亜以子さんの歌声、そしておなじみのポップスからスタンダードジャズまで肩のこらない選曲は、リサ・エクダールやソフィア・ペッターソンといった北欧のボーカリストたちに共通する〈風通しのよさ〉を感じさせてくれます。いつかmoiでのライブも実現させたいですね、亜以子サン!
週末は音楽でクールダウン、おすすめします!
この夏は、いつにもましてフィンランドに行かれる(行かれた)お客様がおおい。
先週はムーミンのガムやカードを、そして今日はビールの王冠を再利用したマグネット、それにフィンランドやエストニアの、包装紙のデザインがなかなかにラブリーなキャンディーなどを「おみやげ」にいただきました....
以上「自慢話」におつきあいいただきありがとうございました?!
でも、実のところいちばん楽しいのは、旅のエピソードをいろいろ聞かせていただくこと。
十人十色とはよくいったもので、(当然ながら)ひとつとしておなじ旅は存在しない。そんなことにあらためて気づかされ、代わりのないじぶんだけの旅にまた出たくなるのです。
イノダコーヒという、ガイドブックにものってしまうような老舗喫茶店が京都にあって、ぼくも京都に行けばかならず立ち寄ってしまうクチなのだけれど、では「イノダのコーヒー」がそんなにおいしいかというと、そのあたりのことはよくわからなかったりするのです。
ただはっきりと言えるのは、イノダで飲む「イノダのコーヒー」は格別にうまいということ。
つまり、あの空間や「なじみの客」がつくりだすイノダならではの〈グルーヴ〉が、切り離しがたくその「うまさ」の一部となっているように思われるのです。
だからこそ、そのことを確認したくて、ときどき無性に京都へ行きたくなるのだし、その(思わず足を向けずにはいられないような)「存在感」に対して、同業のハシクレとしてリスペクトせずにはいられないのです。
きょう月曜日は週にいちどの定休日。夏バテ気味のからだを、ゴロンゴロンと休めていたいけれどそうもいきません。雑誌取材の対応のため、昼前に店へとおもむきました。
きょうは、旭屋出版の月刊『カフェ&レストラン』という、いわゆる業界誌の巻頭カラーページの取材。そのためメニュー写真の点数もふだんより多く、ちょっと大きめの取材という感じでした(このページの写真は、どうせなら取材の様子を取材してしまえということで激写した、シューティング中のフォトグラファーキミヒロさんの姿)。
編集部のKさんは、4月にこの雑誌を担当するようになって以来、若い感覚で新風を吹き込んでいる様子。カフェ好きの方は柴田書店の『cafe-sweets』同様、こちらもチェックされるとよいのではないでしょうか。
それにしても、取材のたびいつも感じるのはインタビューの難しさ。膨大な背景を捨象して、短い時間の中で要領よく、短いことばでエッセンスを伝えるというのはまったくもってぼくの不得意とするところ。
それでも、この店を通して自分はなにを実現したいのかということを思い起こさせてくれるという意味で、それはまた最良のきっかけでもあります。
こんな風に書くとさぞや修行僧のような面持ちで取材をうけているように思われるかもしれませんが、ご想像どおり、そんなことは全然ないんですけど、ね。
ムック『北欧スタイル』VOL.5(エイ出版社)が発売になります。
今回は「一冊丸ごとフィンランド」ということで、アールトの家具などが大きくとりあげられていて必見です。ただし、特集タイトル部分のアールトの名前の「つづり」も一冊まるごと間違えちゃってます・・・残念。
それはともかく、アールトの椅子というのは「使われている姿」がなんといっても最高です。
なんの変哲もない部屋の片隅に、年季の入ったアールトの椅子がぽつんと置かれているさまは、もうこれ以上ないほど愛おしいという感じがします。
ひとの暮らしをそっと黙って見守りつづけているような滋味深い存在感が、そこにはあります。オブジェとして、ではない、いうなれば一生の伴侶としての椅子。
アールトの椅子を、お気に入りの鍋のようにじぶんの生活の一部として、愛情こめて「使って」くれるひとがもっとふえますように・・・。
蛇足ながら、「北欧スタイル」VOL.5にはmoiも登場していますので、よろしければ本屋さんで手に取ってみてください。
シネクラブ「キノイグルー」が、またまたおもしろそうな映画を発掘してきてくれました。
今回上映されるのはなんと、「バザールでござ~る」や「だんご三兄弟」でおなじみのCMディレクター佐藤雅彦が1998年に制作したオムニバス映画「Kino」です。
地上のどこか(ロケ地はなぜかルーマニア!)で繰り広げられる、無名の人々による穏やかで幸せで不思議な6つの物語(50mins)。キノイグルーを主宰するふたりも太鼓判を押すおもしろさ。かなり力がはいってる様子でしたヨ。みなさんも佐藤雅彦の映像ワールド、ぜひこの機会に体験されてみてはいかがでしょう。
会場は、築地にあるクリエイター養成スクール「パレットクラブ」。日程は、8/6[金]、7[土]、8[日]の3日間。上映スケジュール、ご予約等はキノイグルーのWEBサイトをご覧になってください。なお当日は、wato kitchenさんのケータリングもあるそうです。
それにつけても、シネクラブというスタイルをとることで、映画を観るという行為にふたたびワクワクするような高揚感を取り戻してくれるキノイグルーの活動、これからも目が離せません。
そのひとの存在そのものが音楽であるような、ジョアン・ジルベルトとはそういうひとです。
たった一本のヴィオラォン(ギター)と声だけで、無際限に拡がる世界をあらわしてしまう気まぐれな神様。そしてそのライブは、音を聴くのでも、ましてや感じるのでもなく、まるで自然のふところに抱かれているような、ただただそこにあることで満ち足りてしまう、まさに至高の体験といえるものでした。
そしてこの秋、ジョアン・ジルベルトがふたたびやってきます(たぶん)。今回は、東京にくわえ、大阪2公演をふくむ全6公演の予定(あくまでも予定)。
昨年の初来日の際、全4公演中3回に足を運んだ経験からいえるのは、彼のライブは、すべてテンションも演奏曲目も異なる別のライブという感じなので、ぜひ時間とお金に余裕のある方は複数回行かれることをおすすめします(けっして損はしないと思います)。
かく言うぼくは、今年はちょっぴり大人になって(?!)全神経を一回のライブに集中させるつもり。
というわけで、moiはきたる10月7日[木]17時閉店となります。何卒ご理解の程よろしくお願い致します(かなり気が早いワケですが)。
どうしてもコーヒーが飲みたくって、と、近所の病院に入院中の方が「外出許可」をとってmoiにいらっしゃいました。
あいにくまだ開店前だったのですが、病院に戻る時間がせまっているという事情もあり、あわててお湯を沸かしてコーヒーを淹れてさしあげたところ、「おいしい、おいしい」ととてもよろこばれて、ほんの短い時間におかわりまでして下さいました。
そんなふうに飲んでもらえるコーヒーは、つくづく「しあわせなコーヒー」です。たかがコーヒー、されどコーヒー。毎日コーヒーを淹れていると、時おり、一杯のコーヒーがもつ、そのうつわの中身をはるかに超えた「大きさ」に驚かされるときがあります。
おいしいコーヒーを飲んでもらうことよりも、コーヒーをおいしく飲んでもらうことこそが「カフェという仕事」なのかもしれない、そう感じるのはこんなときです。
良くなって退院したらまた来ていいですか
経過があまり思わしくないとのことで辛そうなご様子でしたが、空になったコーヒーカップを前にほほえみながら、そうその方はおっしゃられました。
ええ、もちろん。元気になったその方に、一日も早くコーヒーをふるまえる日が訪れますように。
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