この3年間を思い返してみると、ちゃんと言いたいことを伝えられたと満足できたのは3回程度。すこしはうまく話せるようになってもいいのにね。穴があったら ──
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Moi!フィンランドをもっと好きになる155回目のレポートをお届けします。メニューはこちら。
- 北海道壮瞥町からフィンランドへ
- フィンランド・グラスアート展ふたたび
- フィンランドの食卓から社会が見える
- たき火とユリイカ〜フィンランドサークル
- 金沢フィンランド巡り
- フーさんから日本の子どもたちへをご紹介
北海道壮瞥町からフィンランドへ
最初の報告は岩間さん。NHKのローカル放送で北海道壮瞥町とフィンランドの交流についての番組を観ました。壮瞥町は、洞爺湖や昭和新山、有珠山に囲まれた自然豊かな町。その町と友好都市になっているのが、フィンランドのケミヤルヴィ市。
番組ではレポーターが地元の子どもたちとモルックをしたり、カンテレのコンサートなども紹介。そんな壮瞥町でいちばんの注目が、希望する中学生全員が公費でフィンランドに行けるという「中学生フィンランド国派遣事業」。こちらは1995年(平成7年)に始まった事業で、およそ30年間続けられてきました。現在の事業担当者もかつてケミヤルヴィにホームステイしたことがあるそうです。
岩間さんがツイートしたところ、現地在住の方から「寒さに慣れていると思うので北極圏でもしんどくないのでは。北の小さな町という共通点もあるのでなじみやすいのではないか」というコメントが届いたそうです。「そうした町に暮らすひとにしかわからない交流もあるかも」と岩間さん。
イ:ミホコさんは他にフィンランドと国際交流をしている町を知ってますか?
ミ:青森県の岩崎村がラヌアと姉妹都市でした。岩崎村の合併(現・深浦町)で解消された(?)
イ:統廃合とかあるかもしれませんが、せっかくなので残してほしいですよね。
ハ:(深浦町もまだラヌアと友好関係が続いているようです)
フィンランド・グラスアート展ふたたび
次は兵庫からミホコさんの報告です。ミホコさんが兵庫にいる理由は、再度【フィンランド・グラスアート】展を鑑賞するため。
「初めて訪れた兵庫陶芸美術館は公共交通機関だとなかなかたいへんな場所にありました」とミホコさん。「地元や近県の方々が車で行く場所なのかもしれません。でもそれを見ていたらフィンランドの景色を思い出しました。高校生とか駅に車で迎えにくる人が多いんです。自然に集まってきて各々いなくなるような」。
前回の庭園美術館と異なり「今回は作品の見え方が違った」とミホコさん。そしてグンネル・ニューマンの作品が多かったように感じたそうです。「押し合いへし合いにならず、ひとつひとつをきちっと見せてくれる展示でとてもよかった」と。
また「美術館のある丹波篠山周辺は窯元の多い場所で、陶芸のテーマ展(丹波焼の世界 season8)も開催されていました」とミホコさん。
こちらの【フィンランド・グラスアート】展は【ムーミンの食卓とコンヴィヴィアル展 ─食べること、共に生きること─】との同時開催で、2024年5月26日まで。
▶︎ フィンランド・グラスアート ── 輝きと彩りのモダンデザイン|兵庫陶芸美術館
イ:東京都庭園美術館で開催されていた展覧会ですよね。ミホコさんは3回目?
ミ:はい、そうです。3回目ではあるけれど、新たな発見もありました。
イ:兵庫陶芸美術館はどうでしたか?
ミ:大きな箱で全体的にゆったり配置されていたので満喫できました。
イ:普段、駆け足で観ることが多いから、それはよかったですね!
フィンランドの食卓から社会が見える
もうひとつミホコさんが紹介してくれたのが、岡根谷実里著『世界の食卓から社会が見える』(大和書房)。著者が世界各地の家庭に滞在し、その土地土地の料理をつくり、食卓を囲むことで見えてくるものとは、というテーマで書かれた一冊。フィンランド編は「パンケーキ作りに透けてみえる子ども中心教育」。
ミ:フィンランドのパンケーキというと、レットゥ(Lettu)ですね。子どもが作るのを親が見守ったり。
イ:ホテルの朝食でレットゥを焼けるコーナーがありましたよ。
ミ:ありましたか。本では子どもの教育についてのデータとかもきっちりしていました。
イ:たしかnoteで連載していたものでしょうか? 以前おもしろいと聞いたことがありました。
たき火とユリイカ〜フィンランドサークル
最後は自分の報告です。Moiのフィンランドサークル nuotio|takibi でたき火を囲む会を開催するため、都内某所の河原へ下見に行ってきました。その下見に付き合ってくれた小学生にもレットゥをフライパンで焼いてもらいました。
火を使ったり、ナイフを使ったり、なかなかハラハラする場面もありますが、自らやりたいと思うことを見守るのも周りの大人の役目かなと思います。とにかく怪我がなくひと安心。
気持ちのいい季節になってきたので、近々開催したいと考えています。モルックもよいかなと。まずは岩間さんのスケジュールをおさえたいと思います!
イ:レットゥにはジャムとか?
ハ:はい、手作りのマーマレードを(バターとチーズをのせたものも)。
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トーヴェ・ヤンソンの本を紹介した前回、ミホコさんから雑誌『ユリイカ』の特集もおすすめですよとアドバイス。そこで「もし見かけたらご一報を」とレポートに書いたところ、サークル仲間のSさんがとてもくわしく図書館の所蔵について教えてくれました。
国会図書館のほか、都立図書館(中央・多摩)、各市区町村の在庫状況まで。というわけでさっそく都立図書館で『ユリイカ』を閲覧予約をしてみました。Sさんがそうして知らせてくれたことがなによりうれしいことでした。
つねづねサークルが「こんな本を読みました」とか、「あのお店へいってみました」とか、「今度イベントがありますね」とか、「今度フィンランドへ行くんですけど、おすすめは?」とか、気軽に会話できる場所になったらよいなと思っていました。フィンランドについてくわしい方もたくさんいらっしゃるので、ぜひ書き込んでみてください。また、たき火やモルック、その他なんでもリクエストをお待ちしています!
金沢フィンランド巡り
たまたま金沢へ行く用事があり、Moiのショップリストに掲載しているお店を訪ねてみることにしました。リストにあるすべてのお店を巡りたいとずっと思っているのです(とつぜんお邪魔するかもしれませんが、どうぞよろしくお願いします)。
まず初めは、犀川のほとりにある小さなカフェ KUPPI。店内はとても落ち着いた雰囲気で、窓辺から見える犀川や遠くの山並みの景色をぼんやりと眺めながらすごしました。サクッと香ばしいシナモンロールも優しい味のセムラもとてもおいしかったです。テイクアウトの焼き菓子や北欧ヴィンテージ雑貨なども取り扱われています。
お暇するときにご挨拶すると「岩間さんはお元気ですか?」と店主のNさん。いろんなお店で岩間さんやカフェ moi の話を聞くとき思うのは、あるお店の存在がまた別のお店をつくるのかもしれないということ。きっと moi を訪れて、こんなお店にしてみたいなとか、自分ならこうしたいなとか、考えながら過ごしていたんじゃないかなと。moi がなくなっても、そうして受け継がれたものがどこかに残っていくのでしょう。
「もうすこしすると川岸の桜が咲いて、さらにいい眺めになります」とNさん。またいつか違う季節にもうかがってみたいとおもっています。本を読んだりしながら静かにすごしたいという人にはとてもおすすめのお店です。
ハ:岩間さんはKUPPIのNさん、ご存知でしたか?
イ:はい、もちろん。お店(moi)にも何度も来てくれました。奥さんがすばらしいパティシエなんです。
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次に向かったのが、築100年以上の町屋を改装した北欧ヴィンテージ雑貨のお店 PIPPURIKERA。金沢に行くのなら行ってみたほうがいいと教えてもらいました。お店に入ってまず胸をぐっと掴まれたのが、地元の映画館のフライヤーにあったアナ・トレント(『ミツバチのささやき』と『瞳をとじて』を観たばかり)の写真。そして店内のスピーカーから流れてきた USVA(靄を漕ぐ)の音楽。
店主のMさんは東京から移住されて、2013年に PIPPURIKERA をオープンされました。お店という場所への想い、フィンランドや北欧の魅力、ヴィンテージやお店の商品のこと、現地買付けでのエピソード、金沢の街や能登の現状について。時を忘れていろいろなお話に聞き入ってしまいました(とてもここでは書ききれないほど充実の内容だったので、いつかどこかでご紹介できたら)。
ハ:いつのまにか3時間近くも‥‥。本当にご迷惑をおかけしました。
イ:(苦笑)
ハ:いや、あの、けっこう雨が降ってて、ちょうどお客さんもいなくて‥‥、
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最後に紹介するのは、北欧カフェ apila。金沢駅から20分ほど、雨の中をてくてくと歩いて行きました。こちらは家庭的な明るい雰囲気のお店で、ところどころにムーミンのキャラクターがいました。カウンターに座る常連の方々との会話が弾んでいて、きっと地元の方や家族連れに愛されているお店なのだろうなと思いました。
北欧風プレートランチは、ライ麦パン、サーモンスープ、カレリアパイ、ミートボール、マッシュポテトと本格派。初めて飲んだカルダモンたっぷりのスパイスコーヒーに驚きました。もちもちのワッフルが人気メニューとのことなので、次回はそちらを目指して行きたいと思います。お店の中を案内していただいたり、せっかくなら片山津温泉へとおすすめを教えてもらったり、店主の方がとても優しく朗らかでした。
金沢を巡りながら考えていたのは、お店というものは本当におもしろいということ。お店を営むということはお金を稼ぐというだけでなく、人の営みと同じように人生をどう生きるかということの表れなのかもしれません。それぞれのお店が持つ想いや姿に共感して、その場所にお客さんが集まってくる。両者が尊重し合いながら、その場所が続くように守っていけたらいいのになと思いました。
イ:いろいろなお店があるのでショップリストをぜひ参考にしてみてください。
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その後ふたたび、帰りの新幹線に間に合うように急ぎ足で PIPPURIKERA へ。
そこで、カイ・フランクのデザインした「プリズマ」という小さなグラスをひとつ購入しました。このグラスにはサイズ違いのものがあり、家に持ち帰って重ねてみると大中小3つのグラスがぴったり一体化。光が消えるのは闇の中ではなくて、光の中なのだとハッと気づきました。
3つのグラスはそれぞれ異なるヴィンテージショップを通して、フィンランドの家庭(おそらく)から、自分の元へやってきたもの。その重なりあった輝きを見つめていると、ここにはいくつもの見えない光がぎゅっと凝縮されているんだと感じました。フィンランドで使われていた時間、お店の人がフィンランドで探してきた時間、自分たちがいろいろなお店を巡った時間、そこでたくさんの話を聞いた時間。これからこのグラスを使う時間。いつか自分の手を離れたそのあとの時間‥‥
フーさんから日本の子どもたちへをご紹介
くりかえしのお知らせになりますが、チャリティトークイベント【フーさんから日本の子どもたちへ】を今月30日に開催します。そこで今回は3つのトークイベントの内容をご紹介。
①『ちょっとディープなフィンランド』
フィンランドの関わりが25年以上になるというミホコさんが、フィンランドでの体験やこれまでの移り変わりをお話しします。ガイドブックでは語られないフィンランドを知りたい方へ。
②『書簡集 あとがき』
昨年10月に刊行されたヘイッキ・アアルト=アラネン著『アイノとアルヴァ―アアルト書簡集』(草思社)について訳者であるミホコさんがあとがき目線でお話。著者とのやりとりや翻訳について知りたい方にも。
③『切手で旅するフィンランド』
かつてcafe moiでも数回開催され、好評を博した企画を再び。フィンランドの切手をモチーフにフィンランドの基本の「キ」をご紹介します。フィンランドの暮らしや文化を知りたい方に。
各回90分/定員10名の入替制です。参加費は2,500円。イベントで集まったお金(経費を除く)は、能登の子どもたちにも役立ててくれることを期待して「あしなが育英会」へ寄付を送る予定です。みなさんのご参加をお待ちしています。
── とにもかくにも、まずは耳を傾けてくれたみなさんに感謝を。そしてこのレポートを読んでくれたみなさんもありがとうございました。自画自賛にはなるけれどとてもいいバランスだったように思います。フィンランド人気に先んじて moi を続けてきた岩間さん、フィンランドと日本の関わりをいろいろな面から長年サポートされてきたミホコさん、フィンランドファンの鏡のようなユカさん、そして見習いの自分。まるで最終回のようですが残すところあと2回。去り際は美しく。それでは今回はこの辺で、次回もお楽しみに。
text : harada
#155|I Want To Vanish – Elvis Costello & The Attractions