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#150 はじまりの季節

「みなさん、あけましておめでとうございます」 という岩間さんの言葉からはじまった今回の配信。「昨日(2月10日)は旧暦のお正月でしたから」 ──

Moi!フィンランドをもっと好きになる150回目のレポートをお届けします。メニューはこちら。


フィンランドのヴァレンタイン・デイ

2月14日はヴァレンタイン・デイ。フィンランドでは、恋人たちの日といったものではなく、友だちの日で 「Ystävänpäivä|ウスタヴァンパイヴァ」と呼ばれます。友人にカードやささやかな贈り物をしたりする日だそうです。

この日にあわせてフィンランドの友人たちにカードを贈ったというミホコさん。そして国内の「Ystävänpäivä」の習慣に親しんでいる友人たちへも。

©︎mihoko-san
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ハ:やはりフィンランドにはカードを贈る機会がたくさんありますよね。
ミ:そうですね。でも最近はメッセージなどの手段もあるので減ってきているようです。


お気に入りのムーミンマグ

続いてミホコさんから、最近目にしたムーミンのキャラクター商品について。ノートパソコン、バッグや財布の革製品、MOOMIN SHOPで取り扱われているジュエリーなど。「考えてみると、大人の使うものが多いですよね」と。

そしてミホコさんが普段仕事場で使っているムーミンマグの話題へ。ある日フィンランド人の同僚から「そのマグは使わない方がいいよ。家に持って帰ったら?」と言われたそうです。1990年代に発売されたもので、現在ではなかなか入手できないマグだとか。

イ:どんな種類のムーミンマグやイッタラのティーマなどを使っていますか?という質問が来ていますね。
ハ:岩間さんは?
イ:スニフのマグです、スニフ好きなので。ティーマのマグは薄い黄色ですね。ティーマというと最初にフィンランドへ行った時に見た「濃青色/濃緑色/薄黄色/白色」の4色がやはり基本かなと。
ハ:自分は以前貰ったムーミンパパのマグがひとつだけあります。ミホコさんは?
ミ:いまプロフィール画像(下のInstagram)に挙げてみました。こちらは職場で使っているものとは違いますけれど。

©︎mihoko-san

イッタラの新しい時代

「いまイーッタラのロゴの話題で騒然となっていますね」と岩間さん。ご存知の方も多いかと思いますが、2024年2月にイッタラのロゴが新しくなりました。これまでのロゴには、ティモ・サルパネヴァが1956年にデザインした赤い《 i 》のマークが使われていました。

イ:最初は違和感があるかもしれないけど、いいかなと。時代によって企業の精神にも変化が必要なのかも。
ミ:あー、変わるんだ、そういう時代なんだ、という感じですね。それよりも《 i 》マークのシールを剥がす剥がさない問題のほうが、笑。
イ:《 i 》マークは印象が強かったからね。あのシールはどうなるんでしょう?
ハ:サステナビリティの観点から、今後シールはつけなくなるみたいです。
ミ:サステナビリティですか? あの小さなシールで。
ハ:材料面だけでなく、シールをつける作業とか人手とかいった面もあるんじゃないでしょうか。
イ:時代の変化が見えるという意味ではフィンランドウォッチャー的にはおもしろいですね。
ミ:そうですね。
イ:Nokiaはもともと長靴の会社でしたっけ。それからタイヤ、ケーブル、電話、今は通信インフラ? ロゴどころじゃないですよね、笑。老舗的な、創業から頑なに守り続けている企業はありますかね?
ミ:Fazer(ファッツェル)でしょうか。
イ:フィンランドには変化することを恐れないところがあるよね。

このロゴの話題で思い出していたのが、前回レポートしたNORDIC TALKS JAPANでのこと。その中でいちばん印象的だったのが「否定ではなく肯定が大事。肯定することで新しい世界が見えてくることがあると感じた」という長坂常さん(スキーマ建築計画代表)の話でした。新しいことはまず信じることからはじまるのかもしれません。

▶︎ New era of Iittala|イッタラ&アラビア


自分のペースでフィンランド

もうひとつ岩間さん。「フィンランドについて口にするとき、幸福度No.1とか高福祉の国とか手放しに賞賛したりすると、詳しい人たちから指摘されることがありますよね。モグラ叩き的な」

「いろんな見方、フィンランド観が語られるのでお腹がいっぱいになります。異文化の受容といった点でも、そのうちアメリカやフランスに対するもののように、憧れと現実が混ざっていくのでしょう。ものすごいスピードで疲れてしまうよね、SNSとか」

自分は憶えた端から忘れていってしまうので、ずっと初心のままでいられるような気がしています、笑。すこし距離を取ったり、休んだり、自分のペースでフィンランドをたのしめるといいですね。


ラスキアイスプッラはじめました

配信日の11日は四旬節前の日曜日、ラスキアイススンヌンタイ(Laskiaissunnuntai)でした。この時期、フィンランドでは多くの家庭でラスキアイスプッラ(セムラ)が作られます。またソリ滑りを行う習慣もあるそうです。今年は13日火曜日がラスキアイネン(Laskiaistiistai)。

最近では日本でもいろいろな北欧カフェやベーカリーで見かけられるようになったラスキアイスプッラ。今シーズン最初は青山のスパイラル5Fにある「Call」で。こちらのお店はミナ ペルホネンによるセレクトショップで、ファブリックだけでなくヴィンテージや工芸品、日本各地から集められた食品などが取り扱われていて、「家と庭」という名のカフェも入っています(石井桃子さん?)。

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セムラという呼び方で提供されているだけあって、パンの中にはスウェーデン流(?)にアーモンドペーストが入っていました。カルダモンはひかえめに感じましたが、アーモンド粒の食感も絶妙でとても美味しかったです。ラスキアイスプッラを食べるたび、わかっているのに「あ、甘い」と思ってしまいます。

ハ:おふたりはラスキアイスプッラ食べましたか?
ミ:ラスキアイスプッラは、、
ハ:ミホコさんは甘いもの得意じゃなかったですものね。
イ:今年はまだ食べていません。


『夏のサンタクロース』おはなし会

岩波少年文庫から昨年出版されたアンニ・スヴァンの童話集『夏のサンタクロース』。翻訳を担当された古市真由美さんによる「朗読とおはなしの会」が銀座の教文館ナルニア国で開催されました。

まず最初に古市さんの朗読からはじまったおはなし会。本棚に囲まれたナルニア国という場所で朗読を聞いていると、まるで子どもの頃に戻っていくかのような不思議な感じがしました。それから岩波書店の担当編集者の方の進行で、フィンランドの「童話の女王」と呼ばれたアンニ・スヴァン、挿絵を描いたルドルフ・コイヴの紹介へと話が進んで行きました。

1875年生まれのアンニ・スヴァンは、スウェーデン系の両親を持ち、九人姉妹のひとりとして育ちました。幼少の頃には「リディ」という名のImaginary Friend(空想の友だち)がいて、物語づくりの素養があったそうです。飼い猫が行方知れずになったときにも、猫は王子様で自分の王国へ帰っていったのだと信じていたとか。また森で過ごすことが好きで、古市さん曰く「森で育った少女であることがお話からも伝わります」と。

シベリウスや画家のエーロ・ヤルネフェルトとも親戚関係だったアンニ・スヴァンは彼らの子どもたちを「春をむかえにいった3人の子どもたち」というお話の中に登場させています。実際に読み聞かせなどもしていて、子どもたちから「童話の女王さま」へと金紙でつくった王冠をプレゼントされたという逸話もあるそうです。

そして、ルドルフ・コイヴの挿絵についてもスライドや絵本を交えながら紹介してくれました。「コイヴのことを紹介するのも今回のおはなし会の目的の一つでした」と古市さん。またフィンランドの物語によく登場する動物たち、ヒーシやペイッコといった空想の生きものについても教えてくれました。

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古市さんがフィンランドに興味を持ったのは、小学生の頃に出会った文学全集の中の童話やムーミンの物語。結構はちゃめちゃでどこか激しさもあるムーミン、けれどそれらを包み込む静けさのような他の児童文学にはない部分に惹かれたそうです。古市さんのお気に入りは『ムーミンパパ海へ行く』。

ムーミンが好き過ぎて、いつか作者のトーベ・ヤンソンに出会ったら「ムーミンの物語のつづきを書かせてもらえませんか」と伝えようと思っていたという古市さん。そんな子どもの頃の想いが今につながって「お話をつれてくる係として翻訳を手がけています」と。

アンニ・スヴァンの原文についてはどんな印象でしたかという質問に、「端正な文章で、子どもたちに読み聞かせるような言葉で書かれています」と古市さん。どうして『夏のサンタクロース』という書名になったのですかといった質問もありました。

自分が『夏のサンタクロース』を読んでそこここに感じたのは、フィンランドの景色、文化に風習、その暮らしや考え方など。Moiに関わるようになってから数年間、いつの間にか自分の中に蓄えられてきたものがあるのだなと。フィンランド好きの方だったら、より深くアンニ・スヴァンの物語の世界に入っていけるのではないかと思いました。


NORDIC JOURNEY Vol.6

そしてもうひとつ自分からの報告。天王洲のアイルしながわで開催された【運河のほとりの北欧市 NORDIC JOURNEY Vol.6】へ行ってきました。今回は過去最多となる出店数で、会場はこれまで以上の賑わいが感じられるようでした。

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全国各地から集まったお店にはそれぞれ特徴があって、その幅広さもおもしろいなと思いながら会場内をゆっくりと巡りました。出店者のみなさんとお話ししたり、はじめましてのごあいさつをしたり、たのしい時間を過ごすことができました。ヴィンテージのことをくわしく知りたいと思ったら、お店の方からお話を聞くのがいちばんなのではないかと思います。

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テレビ番組のお知らせ

最後にフィンランド関連のテレビ番組をふたつ、ミホコさんからお知らせがありました。

ひとつは、世界の大学入試に紹介するNHK Eテレ『ニュー試』という番組。今回はフィンランドのオウル大学が取り上げられました。

▶︎ ニュー試|NHK

もうひとつは、BSフジ『ガリレオX』。フィンランドで新たに稼働したオルキルオト原子力発電所や使用済み燃料の処分施設オンカロなどを紹介。ミホコさんも番組のお手伝いされたそうです。

▶︎ ガリレオX|BSフジ

『ニュー試』は2月14日に、『ガリレオX』は3月3日に、それぞれ再放送があります。見逃した方、ご興味のある方はぜひご覧ください。


── そして「150回おめでとうございます」というコメントもいただきました。150回。同じ数だけレポートもあるということに自分で驚いています。はじめてみることで見えてくる景色だってあるはず。それでは今回はこの辺で、次回もお楽しみに。

text : harada

#150|When It Started To Begin – Nick Heyward