#139 愛ゆえに

大切なものは壊れやすい。壊れやすいから大切なのでしょうか ──

Moi!フィンランドをもっと好きになる139回目のレポートをお届けします。メニューはこちら。

  • ヘルシンキ・ヘルシーランチ
  • マクヤマク しあわせの味あわせ
  • TAUKO – Into the Forest
  • 作品展【tipu kangas】
  • ヨーロッパ文芸フェスティバル
  • ミートボールと器:お知らせ詰め合わせ

ヘルシンキ・ヘルシーランチ

どなたか話したい方いますか? ── えっ!そういうシステムになったの、笑

人任せな司会、というわけで今回は岩間さんが口火を切ってくれました。あるレストランのメニュー表で見かけたという「ヘルシーランチ」の表記。ん? ヘルシンキランチ? と一瞬見間違えたと岩間さん。

そこで思いついたのが「ヘルシンキ・ヘルシーランチ」。どんなメニューに? どこで提供するの? など妄想が広がります。やっぱりミルク粥(リーシプーロ)でしょうか‥‥。

ハ:みなさんもきっとそういう勘違いしちゃいそうですよね
イ:空目しますね。ミホコさんは空耳もあるんじゃないですか?
ミ:あります。このひとフィンランド語を話してるのかな、とか
イ:北海道の方言がフィンランド語のイントネーションと似ていると前に聞いたことがあります
ミ:抑揚ですかね。寒いところだから、口を開けないとかあるんでしょうか
イ:方言を聞いて懐かしくなったとフィンランド人が言ってましたよ


マクヤマク しあわせの味あわせ

次に岩間さんが紹介してくれたのが、『マクヤマク しあわせの味あわせ』(アルク)というエッセイ。著者は、ヘルシンキ在住でオンライン料理教室「マクヤマク」を運営している料理人の星利昌さん。

日本料理店で修行し、2008年にフィンランドへ移住したという星さんのフィンランドでの日々の暮らしが綴られているこの本。移住には色々なパターンがあるけれど、日本人だけの家族からという視点が新鮮だったと岩間さん。現在は陶芸にも力を入れていて、Mustakiviの石本藤雄さんとのエピソードもあるとか。

また、この本の装画も担当されているパートナーの星佐和子さんのカレンダー原画展が29日から始まります。星佐和子さんは、MarimekkoやSamujiなどのデザインも手がけたテキスタイルデザイナーで、現在は自身のブランド「arkietti」で活躍しています。

arkietti 2024 calendar exhibition -in bloom-】

 会期:2023年11月29日〜12月3日
 時間:12:00〜18:00
 会場:Gallery Iro|東京都武蔵野市吉祥寺本町1-37-7-101

TAUKO – Into the Forest

次の報告は自分です。開催から早ひと月、表参道Hyvää Matkaa!で開催された展示会【TAUKO – Into the Forest】のレポート記事を公開しました。フィンランドで活躍する現代のデザイナーたちがまとまって紹介されるという、なかなか貴重な機会だったと思います。

取材にあたり、フィンランドから連想するイメージを一度保留して、いちデザイナー/アーティストとして、それぞれの作品やワークショップを見てみようと考えていました。やはりそこにはフィンランドの自然というものを大切にしている姿が見えてきました。すると反対に、日本やその他の地域のアーティストたちにとって自然とはどんな存在なのだろうという疑問も浮かんできました。

読んでいただけるとうれしいです。


作品展【tipu kangas】

そしてもうひとつ、本日26日まで国立のmaika/kb’s bakeで開催されていたイラストレーターtipuさんの作品展【tipu kangas】を観てきました。昨年に引き続き、maika オリジナルカレンダーのイラストを描かれています。今回は「kangas = ファブリック」がテーマということで、イラストをプリントした布絵や、tipuさんのデザインした布の小物などが並んでいました。

フィンランドを訪れたことがある人には、あの場所の景色だ、と思い出されることがあるかもしれません。トートバッグにある「Mennäänkö mustikkaan?」について教えてもらったり、ベリー摘みの写真を見せてもらったり、tipuさんから旅の思い出をおすそわけしてもらっているような気持ちになりました。


ヨーロッパ文芸フェスティバル

最後は報告はミホコさん。【ヨーロッパ文芸フェスティバル】で2つのイベントに登壇しました。

1つ目は、11月23日に青山のスパイラルホールで開催された「ああいう、交遊、EU文学」発足記念イベント『変容することばたち』。EUとして初めてのプロジェクトで、ヨーロッパ文学の動向や未邦訳の新刊を翻訳者たちが紹介、朗読と音楽によるパフォーマンス、対談などが行われました。

「27あるEU加盟国から19の言語の翻訳者が参加しました。これほど多くの翻訳者たちが集まる機会もなかったのでとてもいい経験でした」とミホコさん。「ヨーロッパでは20世紀に入ってからも国家的・民族的に複雑な状況があり、そういった意味で安定しているフィンランドは幸運な国かもしれない。しかしこれから成長していこうとする国々はエネルギッシュに感じました。また歴史の長い国では昔の作家の掘り起こしなども行われています」

「さまざまな国をすべて旅をすることは難しいけれど、文学を通して知ることができます。そして生活者、それぞれの国の人たちが紡ぎ出しているものに触れたい。そんな本の可能性や力を思った」とミホコさん。「ヨーロッパ全体のことを知るとフィンランドのこともより理解できるのではないでしょうか」

2つ目は、11月25日に「北欧文学と日本語翻訳者」として港区立産業振興センター小ホールで行われた講演。ミホコさんは『アイノとアルヴァ アアルト書簡集』について話しました。映画を観た人には本もぜひ読んでほしいと思っていますとミホコさん。

ここからは聴講した自分からレポートをお届けします。登壇されたのは、上山美保子さん(フィンランド)と枇谷玲子さん(デンマーク)、いずれも北欧語書籍翻訳者の会のメンバーです。

まず創立25周年となるフィンランドセンターのアンナ=マリア・ウィルヤネン所長からの挨拶と上山さんの紹介がありました。昨年同様(「世界の窓と時空の旅〜ミカ・ワルタリ『エジプト人』の翻訳について」)、紹介されるご本人が通訳。

「言語もさまざまなヨーロッパでは翻訳者の存在はとても大事です。翻訳が良くないと本は死んでしまいます。アルヴァル・アールトについての書籍はこれまでにも多くの研究者によって出版されていますが、それぞれ方向性が異なっており、今回の本ではアーティストの家族が書いていることに価値があるのではないでしょうか」と所長。「この本を読むことで、アイノとアルヴァル*、二人の関係が平等、対等であったことに気づくでしょう」

(*フィンランドではみんな「アルヴァル」と呼ぶので、いつもアルヴァル・アールトと表記したいなぁという気持ちになります)

そして上山さんによる本の紹介が始まりました。「『アイノとアルヴァ アアルト書簡集』には、あとがきや解説がありません。今回は訳者あとがきのつもりでお話しします。アイノとアルヴァの生きた時代がどんなものだったかを知ることによって、この本をより楽しめるのではと思っています」

著者ヘイッキ・アールト=アラネンさんにヘルシンキのアールトカフェで会った上山さん。そこでヘイッキさんから「この本が書けたのはアイノのおかげです」と聞いたそうです。それは几帳面なアイノが手紙をすべてとっておいてくれたから。その手紙たちはフィンランド語、ドイツ語、英語などで書かれていて、家族間のものだけでなく、ル・コルビュジエやフランク・ロイド・ライトといった建築家たちとの交流も。また夫婦間の関係がここまでわかる本は今までなかったとのこと。

さらに、スウェーデンとロシア、そしてドイツに翻弄されてきたフィンランドの歴史、民族叙事詩『カレワラ』からアレクシス・キヴィ、フランス・エーミル・シッランパー、ヴァイノ・リンナ、そして現代の作家へと続くフィンランド文学について、『アアルト書簡集』が出版されるまでの経緯、翻訳する上での難しさ(言葉の統一、感情の置き換え、アルヴァの失読症など、事実関係の確認)などを聞くことができました。

紹介された本

・マウリ・クンナス『Koirien Kalevala』
・アレクシス・キヴィ『七人兄弟』
・F.E.シッランパー『若く逝きしもの』
・ヴァイノ・リンナ『無名戦士』『ここ北極星の下で』
・ハンヌ・マケラ『Mestari:Eino Leinon Elämä ja Kuolema』
・トンミ・キンヌネン『四人の交差点』
・ソフィ・オクサネン『粛清』『Koirapuisto』
・Merja Mäki『Ennen Lintuja』
・Iida Rauma『Hävitys』
・Juhani Karila『Pienen Hauen Pyydystys』
・Niillas Holberg『Halla Helle』

トークイベントの終了後、上山さんが持参されていた原書を見せてもらうことができました。タイトルの『Rakastan sinussa ihmistä』をあらためて読んで、「ihmistä」ってどういう意味ですかと友人に聞くと「人間かな?」と。そこで友人が上山さんに尋ねてみたところ、「そういえばタイトルについて話すのを忘れてしまいました。『あなたの中の人間性を愛しています』といった意味ですね」

ハ:ミホコさんが話していた著者のサイン見つけられませんでした
ミ:えっ!本当ですか? 扉すぐのところにあったのに、笑
ハ:(ということで、ミホコさんから写真をお借りすることができました。上右画像)

続いて、枇谷さんが紹介された本はトーヴェ・ディトレウセン著『結婚/毒 コペンハーゲン三部作』。こちらはオートフィクションとして書かれたもので、ディトレウセンのパーソナリティや生きた時代、ディトレウセン・ツアーに参加したときのエピソードなどをまじえて話を聞かせてくれました。トーヴェ・ディトレウセンについては初めて知ったのですが、とても波瀾万丈な人生を送ったようです。

そして、来年出版予定という『カレン・ブリクセン/イサク・ディーネセンについての小さな本』について、著者のスーネ・デ・スーザ・シュミット=マスンさんがビデオメッセージを寄せてくれました。イサク・ディーネセンといえば『アフリカの日々』や『バベットの晩餐会』で知られるデンマークを代表する作家。こちらもたのしみです。


ミートボールと器:お知らせ詰め合わせ

ひと月後はもうクリスマスということで、クリスマスカードの準備をはじめたというミホコさん。みなさんもいかがでしょうか?

そしてミホコさんからお知らせを二つ。

ひとつは広尾のCafe Calvaが今年12月29日で閉店されるということ。フィンランド風ミートボールが食べられるお店として、以前ミホコさんが紹介してくれていました。フィンランド人も喜ぶという手づくりのミートボール。平日ランチのみとのことで気になる方はぜひお店へ。有栖川宮記念公園のそばです。

もうひとつが立川GREEN SPRINGSにあるPLAY! MUSEUMで開催中の「鹿児島睦 まいにち」展について。フィンランドとの関わりについて教えてもらい、観に行こうと思っていますとのことでした。

ミ:鹿児島睦さんは、フィンレイソンにもデザインを提供していたり、ルート・ブリュック展ではYouTubeで紹介されたりもしていました
ハ:当時その動画、観たことがあります
ミ:どんな感想でしたか?
ハ:すみません、覚えていません、笑。また観てみます。ちなみにルート・ブリュック展のウェブサイトもまだ記事が読めるのでおすすめですよ

ここ最近イベントが目白押しですが、今後に行われるものを最後にいくつか紹介します。

  • フィンランドウィーク@神奈川大学 11/27〜12/2
  • 親密なからみ合い:フィンランドの現代ファッション@目黒区美術館 11/29〜12/3
  • フィンランド・エストニア絵画展@池袋東武 11/30〜12/6
  • 関西蚤の市@万博記念公園 12/1〜12/3
  • スオミ教会チャーチカフェ 12/2
  • フィンランドフェア in SAGA-ARITA 2023 12/2, 12/3
  • 北欧クリスマスマーケット@Keitto 12/9, 12/10
  • マイヤ・カウハネン JAPAN TOUR 2023 12/9〜12/17
  • フィンランド・グラスアート展@岐阜県現代陶芸美術館 12/16〜3/3

── 壊れてしまうからではなく、壊したくないから大切なんだと思います。人もお店も街もどんどん変わっていきます。それでも本当に大切なものは変わらない。自分にできることといえば、いつだってそれを忘れないこと。それでは今回はこの辺で、次回もお楽しみに。

text : harada

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