#115 いまのままでそのままで

自分以外の誰かになんてなれないように、ほかの誰かも自分のようにはなれないよ ──

Moi!フィンランドをもっと好きになる115回目の配信レポートをお届けします。メニューはこちら。


東京蚤の市での再会

最初の報告は自分から。前回の配信が終わってすぐに家を出て、立川市の昭和記念公園で開催された東京蚤の市へ行きました。蚤の市というと掘り出しモノや未知のモノとの新たな出会いを想像しますが、今回の東京蚤の市で感じたのは「再会」というものでした。

気になるお店や催しにいってみたりしているうちに、これほど人見知りな自分でもたくさんのひとと知り合うことができました。そうしたいろいろな場所で出会った方たちと一つの場所で再会できるということも、蚤の市の魅力なのだと思います。

青空の会場内はとても賑わっていて、各お店のブース前では人をかき分けながら歩くような状態でした。なかなか声をお掛けするタイミングを見つけられず辺りをうろうろとしていました。そんな中でなんとか隙をみつけてお話しできたのが、フィンツアーの星さん、istutのおふたり、retro numberの廣瀬さんとそのお手伝いに京都から来ていた pieni leipomoさんでした。

ハ:初日の金曜日は台風の影響で中止になり、日曜日に行きました。
イ:かつて多摩川の河川敷で開催していた「もみじ市」とかでも天候がすぐれなかったりとかありましたよね。
ハ:そうですね、京王閣とか。
イ:ところでなにか収穫はありましたか?
ハ:いいえ、笑。とくに目的もなくフラフラとしていただけなので。


10万年後の銀板写真

次に紹介したのがフィンランドセンターのセミナー「アーティストトーク:新井卓」。都合によりセミナーの後半部しか視聴できなかったのですが、作品制作の話だけでなく氷河期から現在に至るまでの地球や人類の歴史など、とても興味深い話が聞けました。

Tokyo Art and Spaceのレジデンスプログラムで2022年にヘルシンキに滞在した新井さんは、ダゲレオタイプ(銀板写真)という手法で高レベル放射性廃棄物の最終処分場「オンカロ」周辺の写真を撮りました。それらの放射性廃棄物は無害化するまで10万年かかると言われています。そのため「オンカロ」は10万年以上の耐久性をもつ必要があり、誤って掘り起こされたりしないように保存されなくてはなりません。そのことは現在のピラミッドを想像してみるとよくわかるのではないかと話されていました。

新井さんはサーミのひとたちによる擬人石モニュメントや岩絵などの取材を通して、10万年後に人類が残せるものはどんなものだろうかと考えたそうです。そこで「オンカロ」の内部にダゲレオタイプの写真を残そうというプロジェクトを進めようとされています。それは「未来の考古学」とも云えるのではないかと。新井さんのレジデンスプログラムの成果は、8月19日から始まる展示会で観ることができます。

▶︎ Tokyo Art and Space レジデンス2023 成果発表展「誰かのシステムがめぐる時」


星佐和子 原画展『Sininen hetki』

ヘルシンキ在住のテキスタイルデザイナー星佐和子さんの原画展が中目黒の古書店dessinにて開催中です。

階段をのぼった先にあるのは誰もいない白い部屋。ガラス窓にも白い布がかけられていて明るく優しい光に包まれています。そんなちょっと夢現つの雰囲気の中、壁に並ぶ星さんの作品をただただ静かに眺めていました。原画展のタイトルは『Sininen hetki』、夜明け前と黄昏時の世界が青に染まる瞬間を描いた作品たち。

また会場ではほんのすこしだけ星さんにもお話を伺うことができました。大学の卒業制作時にクレヨンスクラッチという技法で作品を作り始めたこと、留学先にフィンランドを選んだ理由(そこには石本藤雄さんの存在も)、アールト大学でテキスタイルデザインだけでなく絵画作品として制作することになったきっかけ、実際のクレヨンスクラッチの方法やそこで生じる偶然性のおもしろさなど。

山が青く見えるのはどうしてだろうとか、森の中で感じる静寂はけして無音ではないなとか、光にも音を感じることがあるなとか、関係のないことかもしれないけれど作品を見ながらいろいろなことを考えていました。そんな静かな時間を会場で味わってみてはいかがでしょうか。

SININEN HETKI – Sawako Hoshi Exhibition
 会期:2023年6月2日~6月18日
 時間:13:00~18:00
 会場:dessin
 住所:東京都目黒区上目黒2-11-1

注目のイベント:EU FILM DAYS、フィンランド・グラスアート展

次の報告はミホコさん、注目のイベントをふたつ紹介してくれました。

まずひとつめがEU FILM DAYS 2023について。フィンランドの上映作品は『ブラインドマン』、昨年のフィンランド映画祭で『タイタニックを見たくなかった盲目の男』として紹介されたことのある作品です。今回のEU FILM DAYSはオンライン上映がないみたいだねと岩間さん。『ブラインドマン』については東京会場と京都会場のみの上映になっているようです。ぜひ会場へ。

▶︎ EU FILM DAYS 2023

ふたつめが6月24日から東京都庭園美術館で開催される展覧会『フィンランド・グラスアート 輝きと彩りのモダンデザイン』。アートグラスとしてデザインされた作品が並ぶそうです。個人的にもアートと工芸、アートとデザインの間にあるものが、フィンランドのおもしろさだと思っているのでとても楽しみにしています。

▶︎ フィンランド・グラスアート 輝きと彩りのモダンデザイン


スオメンリンナの歴史を学ぶ

もうひとつミホコさんから、フィンランド語の授業でスオメンリンナについての文章を取り上げた際、そもそもスオメンリンナの歴史はどうだったのかと改めて考える機会があったそうです。1748年にスウェーデン統治下で建設されたスオメンリンナ、その後ロシア帝国に支配権が移るなどいろいろな歴史があります。つねにスウェーデンとロシアがつば競り合いをしていてヘルシンキあたりが境界だったんじゃないかなとミホコさん。

ミ:もうちょっと勉強したいところです。
イ:以前ミホコさんからいただいた『フィンランド小史』(マッティ・クリンゲ著/百瀬宏訳)という本がここにあるんですが。
ミ:とてもコンパクトにまとまっていますよね、でもいま手元にないんです。
イ:元々フィンランドのOTAVA社から出た本ですが、日本での出版はどこなんだろう?
ミ:フィンランド外務省がサポートしていたと思いますが、奥付けに書いてありませんか?(国会図書館のデータによると出版は「フィンランド大使館」とのこと)

©︎mihoko-san

イ:ところで大聖堂の前の元老院広場にアレクサンダー2世の銅像が建ってるじゃないですか、アレクサンテリンカトゥとか通りの名前になっていたり。
ミ:はい、そうですね。
イ:どうしてかなとおもってフィンランド人に聞いてみたことがあるんです。すると当時のロシアに対しては印象が良かったみたいなんですよね。インフラを整備したり。
ミ:アレキサンダー2世さんは、スウェーデンと違ってフィンランド語を認めていたりしてましたから。つい「さん」ってつけちゃいましたけど、笑。
ハ:(ミホコさんのアレキサンダー2世に対する印象も良さそう)


北欧フェアと『LifTe 北欧の暮らし Vol.4』

最後の報告は岩間さんから『LifTe 北欧の暮らし Vol.4』について。

今回のVol.4では、とても盛況だった「北欧フェア」のために来日した北欧各国の方々がインタビューなどで紹介されています、と岩間さん。フィンランドのガラスデザイナー、マルック・サロやデンマークのフラワーアーティスト、ニコライ・バーグマン、それに島塚絵里さんなど。それにフィンランドのお菓子メーカー、ファッツェルやハルヴァ工場の現地レポートとか。

ミ:ハルヴァ?
イ:サルミアッキの。先日韓国のYouTube番組でフィンランドロケをしていて、罰ゲームに使われていました。
ミ:笑
イ:好きというわけではありませんが、食べてるうちに耐性がついてきますよね。
イ:ロウリュのことも載っているんですが、ミホコさんは行かれたことあります?
ミ:はい、サウナはありませんが、食べる方には。
イ:日本の施設というとやはりサウナが中心になっていますが、それ以外の目的でも訪れることができる場所ができるといいですよね。


── かっこつけなくても、ただそのままでいいのに。誰かになろうとしないこと、いまのままで十分。これは自分へのおまじない。それでは今回はこの辺で、次回もお楽しみに。

text : harada

#115|Best Imitation of Myself – Ben Folds Five