謎はすべて解けた! ──
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Moi!フィンランドをもっと好きになる112回目の配信レポートをお届けします。メニューはこちら。
- LONG LIVE WIVI LÖNN!
- モノ・つなぐ市@輪粉
- maikaの暮らし展 -フィンランドの古い器-
- 渡部千春『「北欧デザイン」の考え方』
- アルベルト・エデルフェルト展@アテネウム美術館
- 世界里山紀行「フィンランド 森とともに生きる」
- ノンフィクション『フィンランド 虚像の森』を訳して
LONG LIVE WIVI LÖNN!
今回は自分の報告から。早稲田大学西早稲田キャンパスで開催中の展覧会「LONG LIVE WIVI LÖNN!」へ行ってきました。
ヴィヴィ・ロンはフィンランドの建築家。ゲセリウス・リンドグレン・サーリネンらと同時代、独立した女性建築家としては草分け的な存在です。数年前フィンランドセンターのオンラインセミナーで彼女についての講義を聞いたことがあったのですが、それほど情報も多くなく自分にとっては謎の存在のままでした。
それが今回、フィンランド建築博物館の協力を得ていることもあり、ヴィヴィ・ロンが手がけた建築や彼女のプロフィールについて深く知ることができました。彼女が活躍した当時はフィンランドでもまだ女性であるということでハンディキャップがあったそうです。そんな中でも実力を発揮して、数多くの学校建築などを残しました。
ハ:ヴィヴィ・ロンが設計したYWCA(キリスト教女子青年会)オフィスというのがあるんですが、それが今のホテル・ヘルカだそうです。実は泊まったことがありまして‥‥
ミ:ヘルカ、ありますね
イ:ホテル・ヘルカは比較的リーズナブルで泊まりやすいので、日本人観光客にもよく利用されるよね
ハ:ホテルの入り口の左の方にシルエットとパネルが掲示されているんです。昨日久しぶりにその写真を見直していたら、そのシルエットがヴィヴィ・ロンだったことが判明しました。長年の謎が解けました!笑
ミ:それはよかった、笑
ハ:記憶の中ではずっと、おじさんの影だと思っていたので‥‥
ミ・イ:いや、あれは女性でしょう!
ハ:ちなみにヴィヴィ・ロンは長い間(38年間)ここで暮らしていたそうですよ。
イ:でも、こうしてあとからフィンランドで出会ったことに再会するというのもいいよね。
モノ・つなぐ市@輪粉
そして土曜日には、長野からistutが出店されるということで、新座市のベーグルと北欧雑貨のお店「輪粉(わこ)」で開催された『モノ・つなぐ市』へ。istutのおふたりから輪粉の店主・高野さんをご紹介していただき、お話をうかがうことができました。
高野さんはムーミンカフェ1号店の立ち上げメンバーのおひとりで、デザートやスープの調理などを担当されていたそうです。16年前に独立されて、こちらの輪粉をオープンされました。新座駅や志木駅などで出張販売をされることもあるそうです。またお店は聾者さんたちの交流の場ともなっていて、手話でのコミュニケーションを楽しむ「わてわてマーケット」なども主催されています。
お店で、istutのコーヒータウコやシナモンロールを取り扱われるようになったきっかけは、高野さんご自身がistutのファンであったからだとか。「コーヒー販売されると知ってすぐに連絡しました」と高野さん。
今回の『モノ・つなぐ市』は東日本大震災復興支援を兼ねたイベントで毎年開催されているそうです。野菜の販売やジビエ料理、コーヒーにお菓子、雑貨などのお店が参加され、とてもにぎわっていました。とてもおだやかで自然体な印象の高野さんでしたが、いろいろなお店やひとをつなげてイベントを開催してしまうなんてすごい!と思っていました。
次回はベーグルとスープをめざして、おうかがいしたいと思っています。
▶︎ 輪粉 blog
maikaの暮らし展 -フィンランドの古い器-
続いて、国立のmaika / kb’s bakeで開催中の「maikaの暮らし展 -フィンランドの古い器-」へ。こちらは5月に移転オープンされて1周年。
今回の展示販売会では、RUSKAをはじめとするARABIAのヴィンテージ食器が並んでいました。ヴィンテージのことについてほとんど知らない自分にとっては手がかりがなくどんなものを選んだら良いのかわかりません。maikaの宮原さんによって選ばれた食器たちということで、その中から自分の好みのものを選ぶことができるのでとても安心感があります。
好みの色、デザイン、組み合わせを考えたりしながら、あっという間に時間が過ぎていきます。同じものでも微妙に色あいや線が違っていたりして、ひとつひとつじっくり見比べます。
ようやく、これ!というものを見つけたときのうれしさ、そこから生まれる大切にしようという想い、それらがヴィンテージの楽しさなのかもしれないと思いました。宮原さんに「よい組み合わせですね」と言われて、またさらにうれしくなりました。(maikaの暮らし展は6月4日まで)
ミ:今週はいろいろがんばりましたね
ハ:はい、がんばりました、笑
渡部千春『「北欧デザイン」の考え方』
次の報告は岩間さん。渡部千春著『「北欧デザイン」の考え方』(誠文堂新光社)を紹介してくれました。
副題が「プロダクト、建築、テキスタイル 名作をつくった人と時代とアイデンティティ」で、90年代の北欧ブームの黎明期からデザインなどの記事を書いている渡辺千春さんの原稿をまとめたものと岩間さん。エッセンスのつまったコンパクトな本ではあるけれど、北欧デザインの入門編としても、さらにはそういう側面もあったのかと発見できる一冊とのこと。
フィンランド関連では、今では北欧の代表的なテキスタイルだと考えられているマリメッコについて、それほど北欧らしくないのではないかと書かれているそう。長い歴史のなかで順風満帆とはいかず、何度かの経営危機を迎えてきたマリメッコ。新機軸や他にない個性を追求することで、今までになかったテキスタイルを生み出していったのではないかと。
そうした背景を知ることで点と点がつながっていく面白さを感じられる本だそうです。そのほかカイ・フランクやアルヴァ・アールトなど、おもちゃやアウトドア製品、グラフィックといった話題も取り上げられているそうです。気になる方もたくさんいるのではないでしょうか。
アルベルト・エデルフェルト展@アテネウム美術館
最後はフィンランドから戻ったミホコさんの報告です。アテネウム美術館やキアズマへ行きました。
ミホコさんが最初におすすめするのが、リニューアルされたアテネウム美術館の常設展。これまでの並び順とは違い、黄金期の絵画の代わりに1930年代のコンテンポラリーでモダンなものが多くなり、新鮮な気持ちで見ることができたそうです。
そして美術館の3階では開催中のアルベルト・エデルフェルト展も観ました。今回の展示は元々ロシアで開催する予定だったものだそうです。また美術館所蔵の有名な絵画だけでなく、個人蔵の作品が多く含まれ、これまでに観たことのない作品も出展されていたとミホコさん。機会があればぜひ行ってみてほしいとのことでした。
世界里山紀行「フィンランド 森とともに生きる」
先日、NHKの4Kプレミアムカフェという番組で【世界里山紀行】が放映されていたのをご存知ですか? とミホコさん。2007年に制作されたこの番組は、フィンランドの森を舞台に、そこで暮らす人々たちの日々を追ったドキュメンタリーです(もとの題名は「世界里山紀行 フィンランド・森・妖精との対話」)。木に墓碑銘を刻むカルシッコ、熊に対する信仰、タールはどうやって採るのかなどなど。
この番組を制作するきっかけとなったのが、リトヴァ・コヴァライネン、サンニ・セッポによる『Puiden Kansa|Tree People』。のちに『フィンランド・森の精霊と旅をする』(プロダクション・エイシア)として日本語版が出版されました。
ドキュメンタリーを制作した監督の柴田昌平さんと日本語版の監修を務めたミホコさんを招き、moiでトークイベントを開催したこともありました、と岩間さん(2009年5月)。
ハ:放映されていたのを気づきませんでした。
イ:2007年放映なんですが、何年前かというのは数えないようにしておきましょう、笑
ミ:再放送ないんですよね。
イ:大人の事情ですかね?
ノンフィクション『フィンランド 虚像の森』を訳して
最後にミホコさんよりお知らせです。
日本フィンランド協会の5月の例会で、ミホコさんが~『フィンランド 虚像の森』(新泉社)~をテーマにお話しされるそうです。本書との出会いや翻訳について、日本フィンランド協会のことを知りたい方もぜひとのことでした。きっとフィンランドのお話もたっぷり聞くことができると思います。
日時:2023年5月24日(水)午後6時30分より
講師:上山美保子氏(翻訳家)
会場とオンラインのハイブリッドでの開催です。会場での聴講を希望される方は明日5月22日までにどうぞ。くわしくは下記リンクをご覧ください。
▶︎ 5月例会:「ノンフィクション『フィンランド・虚像の森』を訳して」
── 解けたらいいけれど、もし本当にすべての謎がなくなってしまったらちょっとさみしい気もしますね。それでは今回はこの辺で、次回もお楽しみに。
text : harada
#112|Find The Answer Within – The Boo Radleys