#105 魔法のじゅうたんに乗って

春ですね。眠いですね。眠いのは春だからなのか、それとも ──

Moi!フィンランドをもっと好きになる105回目のレポートをお届けします。メニューはこちら。


リュイユ─フィンランドのテキスタイル

今回の配信は打合せなしだったのですが、3人ともリュイユ展についての報告でした。

展覧会の図録を読んで「小さな展示としては立派な図録です」と岩間さん。その中で発見したのが“リサ・ヨハンソン=パッペ”という名前。ストックマン・オルノ社の照明デザイナーとして活躍し、岩間さん曰く「フィンランド照明界の母」という人物(石井幹子さんの師匠でもある)。リュイユのデザインをしていたというのを初めて知ったそうです。

またフィンランドのデザインと美術に関する本のなかで、実用的なものであったリュイユがキットなどの発売によりフィンランド国内に広がっていったこと、テキスタイル・デザイナーのドラ・ユングもリュイユをデザインしていたことなども読んだとのこと。

ウィキペディアによると、ヨハンソン=パッペさんはストックマンに入社する前、フィンランド手工芸友の会のデザイナーとして働いていたようです。またドラ・ユングとストックホルムで二人展を開催したことも。

次は「その日は雨が降っていたんですが、リュイユを見てあったかいなと思いました」と、先週展覧会を観たばかりのミホコさん。「3つくらいの展示室に分かれていて、(最初の部屋に置かれていた)岩のかたちをしたリュイユに寄りかかってみたいなと思ったけれど、入っちゃいけないな、とか、笑」。

またミホコさんが注目したのが、京都国立近代美術館所蔵の2つの大きなリュイユ。天井から吊るすのに波打ってしまうくらいの大きさ。これらの作品があったからリュイユの展覧会をやろうと考えたのかもしれませんねとミホコさん。

そして会場で実際に見る色と、写真を撮った時の色が違うことに気づいたそうです。写真の方が鮮やかに見えたということですが、やはり光の当たり具合によって見え方が変わる面白さがあるように自分も感じました。

ミ:京都国立近代美術館では、ほかにも見どころがありましたね。タペストリーも数点展示されていて、坂本繁二郎の馬の絵ですとか。
イ:へえ、そういうものも。
ミ:そうそう、桜も眺めてきましたよ。
イ:いい季節に行かれましたね。

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一人でも多くの人に実物をみてほしいという思いと、リュイユに対する驚きが想像以上だったということがあります。とても充実した展覧会でした。

もし時間があったら、いちど自由に見た後に制作年順で見てもらえたら、もっとたのしいかなと思います。山形にも巡回する予定があるそうなので、機会がありましたらぜひ!

▶︎ リュイユが映す世界〜フィンランドの変わり続ける織物

また、岩間さんが言っていたように図録がとても充実しています。出品しているソパネンさんや専門家、学芸員の方の文章も読み応えがあります。


鍼灸院のチューリップチェア

ここからはそれぞれ気になった話題を、まず岩間さんから。近所に古くからある鍼灸院の前を通りかかると、入り口にあった待合用の椅子が、エーロ・サーリネンのチューリップチェアであることに気づきました。なぜそんなところに?どうして今まで気づかなかったのか?と驚いたと岩間さん。

イ:レプリカだとは思いますけど。
ミ:プラスチック製の丈夫なものですよね。
イ:たいてい座面に赤とか黒のシートがあるんですが、居酒屋にあるような座布団でした。
ミ:身近なところで見つけたフィンランド、笑。
イ:はい、思いかけず、笑。


フィンランドでスキーはいかが?

次は、ひとりでもスキースクールに入って滑るほどスキーが好きだというミホコさん。フィンランドのレヴィで開催されていた『インタースキー2023(世界スキー指導者会議)』をネットで観ました。

世界各国のスキースクールのインストラクターの方たちが出場するイベントで、デモンストレーションを行います(調べてみたところ日本プロスキー教師協会や国際スキー教師連盟というものがある)。

出場者たちの「寒さで鼻が凍る」といった声や「キュキュキュ」っという雪の音を楽しみながら観ていたとミホコさん、「いろいろ動画もあがっているので『インタースキー2023』で検索してみてください」。

イ:日本はもう桜の季節ですけれど、フィンランドはまた雪が降ったりして寒そうですね。
ミ:そうですね、今週末はもうイースターだというのに。
イ:なかなか展開しないシベリウスの音楽みたいに、笑。フィンランドのスキーというとクロスカントリーのイメージがあるんですが、ダウンヒルもできるんですか?
ミ:はい、できます。雪質がかっちりとしていて滑りやすいです。あと雪のシーズンが長いので合宿などにも。


今週の気になる一冊:『メディア地質学』と『a+u2023年4月号』

そしてミホコさんから、朝日新聞の書評で見かけた気になる一冊を紹介。ユッシ・パリッカ『メディア地質学ごみ・鉱物・テクノロジーから人新世のメディア環境を考える』(太田純貴訳/フィルムアート社)。

©︎mihoko-san

メディアというと新聞やテレビ、ネットなど二次元的なヴァーチャルの世界を思い浮かべますが、物質的な観点からメディアを考察しているとのこと。

ミホコさんの話を聞きながら(本書の内容とは異なるかもしれませんが)、たしかに情報やそこに費やされたエネルギーはどこに行くのだろう?ゴミになってしまうのだろうか?と考えていました。

▶︎ メディア地質学|フィルムアート社

もう一冊は自分から。『a+u2023年4月号』(新建築社)という雑誌でアルヴァ・アールトの設計した10の図書館を特集しています。

▶︎ a+u 2023年4月号|新建築社


映画『ガール・ピクチャー』とままならない青春

最後は今年のユッシ賞で5部門を獲得した映画『ガール・ピクチャー』について。映画の主人公は誰だろうと思いながら観ていたのですが、原題『Tytöt tytöt tytöt(Girls girls girls)』を思い出して、3人とも主人公であることに気づきました。

その中で気になったのがミンミというキャラクター。誰よりも人の心がわかっているのに、どうしたらよいかわからなくなって、人との関係性や自分の思いを壊さずにいられないような。『コンパートメントNo.6』のリョーハと同様そうせざるえない気持ちをわかるわかると思いながら観ました。

なにが青春かなんてわからないけれど、本人にとってはすごく大きな問題や悩みがそれぞれにあって、解決方法も答えも違う。いつわかるかもわからない。わかっていても解決できない。それらをみんな受け止めて肯定してくれるような映画だと思いました。

劇場公開は4月7日(金)から。表参道Hyvää Matkaa!では写真パネル展が開催されます(15日まで)。

▶︎ 映画『ガール・ピクチャー』


── 魔法のじゅうたんのように布団に寝たまま学校へ行けたらいいのにと想像したことはありますか。行きは眠さが勝るからいいけれど、帰りも布団で帰らなくちゃいけないのは恥ずかしいなと考えたことを思い出しました。それでは今回はこの辺で、次回もお楽しみに。

text:harada

#105|Magic Carpet Ride – Pizzicato Five