「私のアート、そして私の人生では、自然のなかにある美しさを追い求めています」
ピヴェ・トイヴォネン(Pive Toivonen)さんは、ヘルシンキを拠点とするビジュアル・アーティスト。水彩画をメインに、学校や病院のパブリックアートなども手がけています。そのほかイラストレーターや美術教師としても活躍されてきました。
昨年末に出版された『アートで楽しむ サウナぎつねのフィンランド巡り』の発売記念として【ピヴェ・トイヴォネン展】を東京・神田ポートにて開催。展示会初日(2024年2月21日)に行われたレセプションで、ご本人からお話を聞くことができました。
会場の前には《galleria Kettu》という黄色い看板。この《galleria Kettu》とは、フィンランド南西部の農場にあるピヴェさん自身のギャラリー(夏の季節、金曜日のみオープン)です。「Kettu」はフィンランド語で「きつね」のこと。
森と海に生きるきつね
本の中でも自身をオレンジ色のきつねとして描かれているピヴェさん。それはどうしてですか?と尋ねてみたところ、「きつねには森の中に独りでいるイメージがあるから」。その時ふと、森のなかを独りで散策するピヴェさんの姿が目に浮かびました。ああ、やはりフィンランドのひとだ、と。そして「海の色にオレンジが映えるでしょう」と。
会場には、本に登場するイラストの原画とピヴェさんが普段描いている水彩画、そして今回のために書き下ろした小さな作品がありました。本のイラストでも充分表現されていますが、実際に見るとより水彩画特有のにじみや美しい色の変化が感じられました。
ヨットやカヤックでセイリングするのが好きだというピヴェさん。大きな街から海へ出て、小さな群島を巡り、星空を見上げたりしながら、自然のなかにある美しさを探し求めます。来日する直前まで1ヶ月間、40人しか住んでいない島に滞在して、絵を描いていたそうです。
絵を描くことは記録すること
海や森といった自然をモチーフに創作してきたピヴェさんが、なぜサウナを描こうと思ったのか。その理由は「私にとって絵を描くことは、写真を撮りたいと思う気持ちと似ていて、記録をすることです」というピヴェさんの言葉に表れているように思います。
これまで公衆サウナから個人宅のプライベートサウナまで、400軒以上のサウナに訪れたことがあるというピヴェさん。「描くことでサウナをコレクションしたいと思ったのです」。そのためサウナの絵はドキュメントであり、実際にそこに存在したものしか描かれていません。
一方で、本の中のキャラクターはヒトではなく動物として描かれています。そのように現実的でありながら、ファンタジーでもあるということがとてもおもしろく感じました。ピヴェさんによると動物にした理由は「年齢や性別、髪の色によって区別されないから」。
サウナのなかにある自然
サウナを描く方法は、まずスケッチブックと鉛筆を持ってサウナに入り、その記憶を忘れないうちに持ち帰って、水彩絵の具で仕上げるというもの。気持ちよさそうに目を瞑って寛いでいる動物たちやサウナの窓から見えるフィンランドの景色によって、それぞれのサウナの雰囲気が個性的に表現されています。
またピヴェさんは、サウナ小屋の外だけでなく、サウナの中にも自然があるといいます。それはサウナの火、ストーブの石、ロウリュの水、内装の木‥‥。「私にとってサウナは、自然の美を感じる場所です。そこでは人生の意味を考えたり、自分の内面を見つめたりすることができます」。
「これらの絵を通してみなさんに伝えたいことは、実際に訪れてみたいと興味を持ってほしいということ。そして、サウナというものは、ほんのちょっと日常から離れて、その瞬間瞬間を大切にする方法であり、身体だけでなく心もきれいにする場所だということです」。
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神田ポートでの展覧会は、3月10日まで。さらにジェイアール名古屋タカシマヤの催事「LOVEサウナ」に出展、2月27日にはトークイベントも開催予定です。
『アートで楽しむサウナぎつねのフィンランド巡り』出版記念 ピヴェ・トイヴォネン展
会期:2024年2月21日(水)〜3月10日(日)
時間:11:30〜19:00
休廊:2024年3月3日(日)
会場:神田ポート
所在地:千代田区神田錦町3-9-1F
https://kandaport.jp/event/20240207
https://pivetoivonen.fi
text + photo : harada