『あいたくて ききたくて 旅にでる』という本をご存知でしょうか。著者の小野和子さんが東北のお年寄りのもとをたずね、その地方に伝わる民話をきいた、50年にのぼる体験談をまとめた一冊です。2024年夏に神宮前のLIVE ART GALLERYで開催された【在野の民話採訪者・小野和子とPUMPQUAKES】展は、若い画家や写真家とのコラボレーションもあり、とてもすばらしい展示でした。小野さんに伝えられた民話はそうしてまた、新しい時代へとつながれていきます。
そんな小野さんの歩みとならべるのもおこがましいですが、実力も実績もなく、なにものでもない自分にできることといえば、ただひとつ。会いにいくこと。実際に行ったこともない、見たこともない、お店やイベント、モノやヒトを紹介することに、どこか罪悪感というか、ひっかかりをいつも感じていました。そのため「Moiの○○です」と、Moiの名をかたって自己紹介するからには、ショップリストに掲載させてもらっているお店だけは、いつかたずねよう、かならず会いにいこう、と決めていました。それは自分自身とかわした約束でした。
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今回お届けする旅の舞台は、東海地方にあるフィンランド。一昨年の【Juhla Festival 2023】で、kokoti cafe オーナーの鈴木京子さんとはじめてお会いしたときに「いつか名古屋のお店にうかがいます」と声をかけさせていただきました。それ以来、大縄跳びになかなか入れない小学生のように、ずっとタイミングをはかっていたのですが、ようやく、えいやっ!と縄のなかに飛びこんでみました。
kokoti cafeへ行くとしたら、ほかの場所もめぐることができるかもしれない。そこで1日目に、rajakivi(名古屋市)、Cafeひなぎく(松阪市)。そして2日目に、kokoti cafe(名古屋市)、DLoFre’s(浜松市)をたずねる計画をおもいつきました。「東海地方フィンランドめぐり」です。
しかし、その計画の目論見はあまく、1日目から頓挫してしまいます。小田原市を過ぎたあたりで、ふと時計を確認すると、Cafeひなぎくの閉店時間にどうしても間に合わないことが発覚しました。すぐに計画を変更し、東京へ戻ってくる際におとずれようとおもっていた、DLoFre’sへと向かったのでした。
東海地方フィンランドめぐり 目次
・DLoFre’s 〜 里山のある風景
・rajakivi 〜 いつかの手紙
・kokoti cafe 〜 絵本のなかのお店
・Cafeひなぎく 〜 あたたかいフィンランド料理
DLoFre’s 〜 里山のある風景
DLoFre’s(ドロフィーズ)は、浜松市の都田地区にあるフィンランド・ヴィレッジ。過疎化のすすむ町で暮らす住民の方々からの相談で、地元の建設会社、都田建設が建物や田畑をリノベーション。北欧の暮らしやスローライフを体験できる場所としてオープンしました。

その広さ1万坪という敷地内には、食堂、カフェ、インテリアショップ、雑貨店、ギャラリー、宿泊施設など、さまざまな店舗があります。ショッピングモールというものが、商業施設のなかに町をつくるというコンセプトなら、ドロフィーズは、町のなかにショッピングモールをとけこませたような感じといえるかもしれません。その町にもとからあった地形や建物に、フィンランドや北欧のエッセンスをくわえて、あらたな魅力を生みだしているように感じました。

築100年という蔵を改装したブックストア。北欧関連の書籍や絵本、くらしをテーマにした本が多かったようにおもいます。2階にはたたみが敷かれていて、ゆっくりくつろげそうな雰囲気でした。この蔵をとおりぬけると秘密(?)の庭があったり、野外にアート作品が展示されていたり、敷地内はいろいろな趣向がこらされています。

毎週日曜日には「暮らしを美しくする日:DLoFre’s Sunday」として、デザインやガーデニング、リフォームの講座、コンサートなども行われます。マリメッコをはじめとする北欧のファブリックがならぶ棚は壮観でした。量り売りもしています。そのほか、ドロフィーズ・オリジナルの雑貨・衣料品・家具・ストーブなどもあり、できることはやってみようという意気込みを感じました。

敷地内の道路をあるいていると、うす茶色のイタチがよこぎっていきました。あぁ、ここは里山だ、とおもいました。あちらこちらで鳥や動物の気配がします。案内してくれようとしたのでしょうか、ちょろちょろと目の前にあらわれる猫をおいかけて歩きまわりました。山羊もいます(おそらくマイヤとイソラ。小屋にはアールト、サンナという名も)。

買い物をしたり、食事をしたり、くらしの相談をしたり、一日中ゆっくりとたのしめる場所だとおもいました。また今回は行くことができませんでしたが、徒歩圏内の都田駅には「MIYAKODA駅Café」というマリメッコをテーマにしたカフェもあり、マリメッコのファブリックで装飾した特別列車も走っています。
次は「rajakivi 〜 いつかの手紙」をお届けします。