JUHLA FESTIVAL 2023 〜 出会いを繋ぐ場所

Juhla tokyo主催による音楽フェス【JUHLA FESTIVAL 2023 テラノオト】が、11月4日(土), 5日(日)の二日間、東京・千駄木の養源寺にて開催されました。「静寂の中で聞く、音楽の祝祭」というテーマに相応しく、Juhla tokyo周辺は都心のなかでも少し落ち着いた雰囲気の街。近くに森鴎外記念館や夏目漱石の旧居跡もありどこか文化的な香りがします。

フェスの醍醐味といえばやはり、いままで知らなかった音楽に出会えることかもしれません。しかし【テラノオト】は、音楽を求めてやってくる人、マルシェを楽しみに来る人、近くにお住まいの人など、お客さんの顔ぶれもそれぞれ。そこには思っていた以上の出会いや発見がありました。


お寺の境内のマルシェ

白華山 養源寺。朝からとても良い天気

良いお天気に恵まれ11月とは思えない暖かさだった一日目は、境内で行われていたテラノオトマルシェを中心にたのしみました。入場無料のこのマルシェでは毎回、北欧関連のお店だけでなく、近隣の様々なお店も出店しているのが特徴です。

北欧ヴィンテージのtuikku。今年6月に予約制の実店舗をオープン

お寺の境内でマルシェ? と一瞬とまどってしまいそうですが、神社のお祭りと同様に老若男女どんな人でも立ち寄ることのできる敷居の低さを感じました。子どもたちが自由にかけまわったり、普通にお墓参りにくる方がいたりと、日常と地続きにあることがとても自然でよかったと思います。

Sota Leather Productのワークショップ。おじいさんとお孫さんが並んで革細工を

また出店者のみなさんが楽しみながら参加されているのも印象的でした。今回初めて出店されたという方からは「雰囲気がとてもいいイベントですね。他の出店者のみなさんとの交流もうれしいです」といった声を聞きました。

フィンランドデザインの和ろうそく WAFIN。このあと立川や北海道へも

フィンランド・カフェがやってきた

kielotieでは特製マッカラを。両日の出店

テラノオトマルシェの一日目には、フィンランドを感じられるカフェが各地から集まりました。京都 のpohjonen、名古屋のkokoti cafe、荻窪のkielotie、表参道のHyvää Matkaa!(北欧旅行フィンツアー)、KIELO COFFEEの姉妹店 Be green by KIELO COFFEE、そしてJuhla tokyoでシナモンロールなどを提供しているMaijanpullat。

pohjonenのサーモンスープ。焼かれたサーモンが香ばしい

「今回も濃いフィンランドを持ってきましたよ」とpohjonenのえみぞうさん。こちらのサーモンスープを目当てにやってきたというお客さんもいました。そしてMaijaさんのシナモンロールは焼き上がるとすぐに列ができて、あっという間になくなってしまうほど大人気。

Maijaさん焼きたてのシナモンロール

今回のマルシェで、個人的にいちばん楽しみにしていたのがkokoti cafeのKさんにお会いすることでした。何度かメールでやりとりしていたことがあり、いつかお店に伺いたいですとお伝えしたままでした。想像していた通りの優しい方でとてもうれしかったです。「お店に来る時には連絡くださいね」とKさん。

kokoti cafeのリンゴンベリーマフィン。最後の一つをおみやげに

異文化と出会うサブステージ

今年は円形のブースで。DJ毎の選曲がたのしい(木村勝好さん)

境内には手作りのDJブースも設置され、サブステージとして北欧にまつわるトークや音楽ライブが行われました。Jun Futamataさんは、アイスランドを代表するバンド、シガーロスのスタジオでレコーディングしたことやアイスランド滞在時の話など。本堂のメインステージを終えたミュージシャンとお話しする機会があるのもフェスならでは。

Jun Futamataさんはアイスランドの話をフィンツアーのIさんと

サブステージに登場したノルカルTOKYOは、ハーディングフェーレとランゲレイクという伝統楽器でノルウェーの音楽を。目を瞑ると共鳴弦やドローンの響きで、北欧の草原に誘われそうになります。モーテンさんは指孔のないセリエ・フルートという笛も演奏。

ノルカルTOKYOの酒井絵美さんとモーテン・ヨアキム・ヴァテンさん

バルト三国の料理を取材した本も好評の食文化研究家、佐々木敬子さんは「バルトの森」として、消しゴムはんこの「とみこはん」と一緒に出店。リトアニアのキビナイというミートパイが素朴な味でおいしかったです。こうした異文化に触れられることも【JUHLA FESTIVAL】ならではないでしょうか。

佐々木さんとフィンツアーのHさん。エストニア旅行の話など

一日目の夜、そして二日目へ

日が暮れるとまた親密な趣に

開催前にJuhla tokyoの小川さんから、朝から夜、一日目と二日目とぜひその変化を感じてもらえたら、とお聞ききしていました。そこで前日に引き続き、お昼前に会場へ(両日オープニングのアルヴォ・ペルトが聞けなかったのが心残り)。この日はマルシェの出店者も半分ほど変わり、日曜日ということでよりにぎわいが感じられました。

本堂のメインステージにはグランドピアノが中央に

そして二日目は本堂メインステージでのライブを体験。石橋英子さん(一日目)や寺尾紗穂さん(二日目)などなど、充実のラインナップで全てのステージを本堂で聴いていたかったくらいです。そのなかで最初に聴かせてもらったのが、Suomi Morishita Duo Strings。

本倉信平さん(チェロ)と森下周央彌さん(ギター)

Suomiという文字にフィンランド・ジャズを演奏するのかと思いきや、ご本人の名前が周央彌さんでした。ギターのアルペジオとチェロのピチカートが、夜に迷い込むような不思議なメロディを奏でます。Vanha linna(古城)など曲名にもいくつかフィンランド語が使われていて、きっと由縁があるのだと思います。


静寂の中で聞く、テラノオト

本堂の天井に描かれた龍神

お寺の中で音楽を聴くというとどこか意外な気持ちにもなりますが、教会で音楽を聴くというのと変わらないようにも思いました。ある意味では鐘や木魚やお経も音楽のひとつと捉えることができるのではないでしょうか。本堂自体が音を響かせる造りになっているのかもしれません。

機材にビニールをかけて特設の雨樋も設置

Suomi Morishita Duo Stringsの演奏中、外ではざぁっと通り雨があったそうです。そのため境内で演奏予定だったジャズギタリストの浅葉裕文さんのステージは急遽本堂で。臨機応変に対応するスタッフのみなさんも素晴らしかったです。その後はすぐに日が射して、雨に濡れた緑がキラキラと輝いていました。

大きなクスノキに守られた境内

音楽でつながる祝祭の輪

そしてトゥルク出身のギタリスト、ニクラス・ウィンターさんのライブ。共演者が甲斐正樹さんに変更になりましたが、Hyvää Matkaa!で観た最初の演奏とどう変わったのかを聴くのもたのしみでした。ニクラスさんにとって日本ツアー最終日ということもあり、すこし疲れがあるようにも感じられましたが、甲斐さんの好サポートで納得のステージだったと思います。

ニクラス・ウィンターさんと甲斐正樹さん。Hyvää Matkaa!、kokoti cafeとツアー3度目の共演。

演奏中、合図を送るニクラスさんにアイコンタクトで応える甲斐さん。「次の曲は素晴らしいベーシストである彼の特別なソロからだよ(ニクラスさん)」「なんかハードル上げてるなぁ(甲斐さん)」といったやりとりも。またいつかふたりの共演が観られることを期待しています。

Juhla tokyo 小川さん

最後に、今回のJUHLA FESTIVAL 2023もJuhla tokyoという一つのお店が主催しているとは思えないほどプロフェッショナルなフェスティバルだったと思います。もちろんそこには地元の方々や仲間のみなさん、出店者の方々など様々な協力があってこそだとは思いますが、それらを繋いでカタチにする小川さんをはじめとするJuhla tokyoのみなさんに最大限の拍手を贈りたい気持ちです。

そして「若いスタッフのみなさんががんばってくれました」という言葉にも次回への期待がふくらみます。会場でお会いできた方々や声をかけてくださったみなさんにも感謝しています。ありがとうございました。そしてまた「JUHLA FESTIVAL」でみなさんとお会いできたらうれしいです。

text + photo : harada

開催概要

JUHLA FESTIVAL 2023 テラノオト

日時 2023年11月4日, 5日
   11:00~21:00(マルシェは20時終了)
会場 白華山 養源寺 
   東京都文京区千駄木5-38-3

主催 LiL (Juhla tokyo)
   juh.la/2023