フィンランドのメディア・アーティスト/音楽プロデューサーのミッコ・H・ハーポヤ(Mikko H. Haapoja)によるサウンドスケープ・アート・プロジェクト【ヘルシンキの道|Helsingin reitit – The Routes of Helsinki】の15周年記念展が、2025年4月、東京・谷中のGallery TEN、埼玉・飯能のメッツァビレッジにて開催されます。この度3月31日に行われたプレス・イベントで、ハーポヤさん本人から記念展についてくわしく聞くことができました。

街の音とはいったいどのような音でしょうか。その街で暮らすひとにとっては当たり前すぎて、耳を傾けることはほとんどないかもしれません。自動車の走る音、クラクションやサイレン、線路と踏切、道路工事に建設現場‥‥、東京の音はどこか殺風景です。けれど耳をすませてみれば、野鳥のさえずりに猫や犬の鳴き声、子どもたちの嬌声、川の流れる音や街路樹の揺れる音だって聴こえてきます。

ヘルシンキをはじめて訪れたとき、アカデミア書店近くの歩道にチェロを抱えて座っているひとを見かけました。演奏はしていなかったけれど、いまでもヘルシンキの街をおもいだすとき、チェロの音色が聴こえてくるような気がします。2023年にリリースされたミッコ・H・ハーポヤの最初のソロ・アルバム『Unheard Landscapes』から聴こえてきたのは、そのチェロの響きだとおもいました。しかし実際のそれはチェロではなく、ヨウヒッコ(Jouhikko)というカレリア地方で演奏されてきた民族楽器の音でした。

彼がメインで使用するベース・ヨウヒッコは、ミュージシャンで伝統楽器製作の巨匠でもあるラウノ・ニエミネン作。通常のヨウヒッコよりも1弦多い4弦の楽器で、おもにスウェーデンやエストニアで演奏されるといいます。もともとはチェロを演奏していましたが、シベリウス・アカデミーで音楽テクノロジーとフォーク・ミュージックを学ぶなかで、ヨウヒッコを持つようになりました。演奏については、イルッカ・ヘイノネン(Ilkka Heinonen)や Värttinä のラッシ・ルーグレン(Lassi Logrén)に師事したといいます。

手前にあるバイノーラル録音用のヘッドフォン型マイクは、自分の向いた方向の音を録音できる
2010年にはじまったサウンドスケープ・プロジェクト【ヘルシンキの道|Helsingin reitit – The Routes of Helsinki】では、自然と都市の境界にあるサウンドスケープに焦点を当て、世界各地でフィールド・レコーディングを行い、それらにヨウヒッコの演奏、エレクトロニクスなどを加えて、音響作品やショートフィルムを製作してきました。今回の記念展で展示されるのは、それらの作品です。

また、最新アルバム『Helsingin reitit – Helsinki Soundtrack』では、ヘルシンキの街でフィールド・レコーディングした素材をコラージュ。それはまさしく音で巡るヘルシンキのようです。都市計画や建築が好きだという彼が、さまざまな音を配置して街の地図をつくりだします。こうしたサウンドスケープ作品に取り組むことで、彼自身も大好きなヘルシンキという都市の一部であるような感覚を得ることができるといいます。
15年という長期間に渡るプロジェクトとのことですが、ヘルシンキの街の音に変化はありますか? と聞くと、ヘルシンキは東京と比べると小さな街だけれど、それでもすこしずつ都市が広がり、たしかに変化していることが音の面でもわかります。けれども変わらない音もあります、とハーポヤさん。それはカモメの声とトラムの音。きっとヘルシンキを訪れたことのある方なら誰しも思い浮かべる音なのではないでしょうか。今回の展示では10年前、15年前の音と現在の音を組み合わせたサウンドスケープ作品がならびます。

そしてこの記念展と同時に、ヘルシンキ市立博物館に常設展示されている「Luotisuora – Beeline」から生まれたモバイル・サウンド作品を4月6日(日)より公開。その初日にはサウンドウォーク・イベント “TOKYO SOUND WALK” が東京駅周辺で開催されます。サウンドアーティストと一緒に聴く「東京」の音はどのように響くのでしょうか。きっと新たな発見を得られる素晴らしい体験になるはず。

また、彼はマルチ楽器演奏家でもあり、クラシックやフォーク・ミュージック、そしてサウンドスケープのような現代音楽/アートだけでなく、ラップ・ミュージック(haapoja & illmari)やエレクトロ・ポップ(uni uni)、コンテンポラリー・ダンスとのコラボレーション(Keitaat/Oases)などさまざまなジャンルを横断する才能豊かなミュージシャン。期間中、各地で開催されるライブ・パフォーマンスも見逃せません。
音というものは本当につよく記憶と結びつき、イメージを喚起するものだとおもいます。近頃、フィンランドが足りていないという方、ヘルシンキを感じたいという方はもちろん、リラックスしたい・リフレッシュしたいという方も、ヘルシンキの街をサウンドスケープと美しい映像で巡ってみてはいかがでしょうか。情報をお確かめのうえ、ぜひそれぞれの会場へお出かけください。
text + photo : harada
Mikko H. Haapoja
プロフィール

エレクトロアコースティックなフォーク音楽と世界中の音風景の融合を試み続ける、フィンランド・ヘルシンキ出身のミュージシャン、 メディアアーティスト、音楽プロデューサー。伝統楽器ヨウヒッコ と、同国内でも珍しい低音楽器のベース・ヨウヒッコを軸に、歌、カンテレ、電子ビート、そしてヘルシンキ、東京、イスタンブール、ニューヨーク、バマコといった都市や自然の音風景を多層的に組み 合わせた、唯一無二のパフォーマンスを披露する。 ヘルシンキ芸術大学卒業後、母校で「3D サウンドスケープ作曲」「都市音響芸術」「ライブエレクトロニクスとグローバルミュー ジック」などを指導。エレクトロフォークデュオ「uni uni」、ス ポークンワードやラップ、歌を組み合わせた「Haapoja & Illmari」 としても活動し、また毎年様々な音楽アルバムの録音やミキシング も行っている。(資料より)
アーティスト公式サイト内プロジェクト情報(英語)
https://mikkohaapoja.net/japan2025
イベント情報(日本語)
https://o-moro.co.jp/mh2025/
2025年4月3日(木)〜13日(日)
Gallery TEN
東京都台東区谷中2-4-2
https://galleryten.org
2025年4月11日(金) LIVE
Juhla Tokyo
東京都文京区千駄木5-38-9
https://juh.la
2025年4月16日(水) LIVE
大阪・関西万博 2025
大阪府大阪市此花区夢洲
https://www.expo2025.or.jp
2025年4月19日(土)〜27日(日)
メッツァビレッジ Craft bibliotek
埼玉県飯能市宮沢327-6 メッツァ
https://metsa-hanno.com/news/press_release/36821