近年さらに注目が集まるフィンランドのサウナ。ここ日本でも様々な地域で工夫を凝らしたフィンランド式サウナ施設がオープンしています。そうした日本独自のサウナ文化も育つ中、本国フィンランドのサウナを体験してみたいと思われる方も少なくないのではないでしょうか。
人口550万人に対して330万ものサウナがあるといわれるフィンランド。フィンランドの人たちにとってサウナとは一体何なのか? そのサウナ文化の奥深さは計り知れません。
そこで今回は、今年2022年夏にオープン予定のサウナを含め、フィンランドならではの個性的なサウナをご紹介したいと思います。
+ 海に浮かぶサウナレストラン|Sauna Restaurant Meri
+ 国境地帯を望む絶景サウナ|Hotel Cahkal
+ 新しい芸術体験ができるサウナ|Art Sauna
+ 古代人と野生動物たちのサウナ|Bear Sauna Safari
+ 小さな島の夏限定サウナ|Lonna Sauna
海に浮かぶサウナレストラン|Sauna Restaurant Meri
今夏、オストロボスニア地方の西海岸ヴァーサの街にオープンするのが『サウナ レストラン メリ』。 「Meri|海」という名の通り、海の上に浮かぶサウナ&レストランです。北欧最大の海上サウナ施設で、ヘルシンキのAllas Sea PoolやクオピオのSaanaを手がけたBluet社の設計だということで期待がもてるのではないでしょうか。
新鮮な魚やシーフード、季節の野菜などにこだわったレストランを指揮するのは、フィンランドで最も有名なミシュランシェフ、Hans Välimäki (ハンス・ヴァリマキ)氏。「このレストランがヴァーサの宝石となることを信じています」とその抱負を語っています。
ヴァーサといえば、クヴァルケン群島。スウェーデンのハイコーストとともにユネスコ世界遺産にも登録されているこの地域は、氷河の融解により土地が隆起する現象が地球上で最も現れるというめずらしい場所。『サウナ レストラン メリ』のインテリアデザインも、そのクヴァルケン群島からインスピレーションを受けています。
浮かぶサウナと浮かぶ島。フィンランドの文化と自然の不思議な出会いが感じられます。
国境地帯を望む絶景サウナ|Hotel Cahkal
こちらは、今年6月23日にグランドオープンする『ホテル カハル』。フィンランド最北西端、スウェーデンとノルウェーとの国境に挟まれたキルピスヤルヴィにある家族経営のホテルです。客室やレストランの大きな窓からは、フィンランドでは珍しい1000m級のサーナ山を一望でき、もちろんサウナからも北極圏の大自然を眺めることができます。
キルピスヤルヴィで注目のスポットは、マッラ自然保護区にある3国が接する国境点「三国ケルン」。湖の上に浮かぶモニュメントをぐるりと回れば、わずか数分(数十秒?)でフィンランド、スウェーデン、ノルウェーを巡れてしまうというお得(?)な場所です。
11月から5月まで雪に覆われるというこの地域では、短い夏が駆け抜けていきます。6月に湖の氷が溶け、7月には花が咲き乱れ、8月はオーロラが出現し、9月には幻想的な紅葉が。そんな目まぐるしい変化を見せる大自然の中でサウナを体験すれば、きっとあるがままの自分に気づくことができるのではないでしょうか。
新しい芸術体験ができるサウナ|Art Sauna
セルラキウス美術館ゴスタに隣接する『アートサウナ』も今年の夏にオープン。芸術・自然・建築を同時に楽しめるこのサウナ施設は、美術館から湖畔へと下る斜面に建設され、屋根を緑化させることで、穏やかな湖水地方の環境に美しく溶け込みます。
新たな芸術体験を生み出すことをテーマとするセルラキウス美術館では、フィンランドの文化や生活様式と結びつくサウナの伝統に注目しました。石や木を大胆に使った建物には、光や自然の色が降り注ぎ、内装にはフィンランドの現代アート作品やデザイン家具が並びます。
円形のサウナ室前には広大なテラスと桟橋も設置される予定です。自然の生み出すアートと人間の生み出したアートが融合する『アートサウナ』。芸術とは?美しさとは?そんな根源的な問いにも想いをはせてみてはいかがでしょう。
古代人と野生動物たちのサウナ|Bear Sauna Safari
クーサモの南に位置するホッサ村。ハイカーやピクニック客に人気の Julma-Ölkky 渓谷の岸壁には、紀元前1500年~2500年と推定される壁画 Värikallio(ヴァリカッリオ)が残されています。血や土で描かれたという神秘的な動物や人間の姿は、狩猟やシャーマニズムに関連していると考えられていま す。
そんなホッサ村の大自然の中にひっそりと佇むのが『ベア・サウナ・サファリ』。ここではゆったりとサウナを楽しみながら、窓からクマや野生動物を観察することができます。古代より人と動物が等しく暮らしてきた神秘的なホッサ村の風景に身を委ねてみてはいかがでしょうか。
自然の静けさというものは、厳しさよりも優しさを感じさせるように思います。「遠い場所」を意味するサーミ語の古語「Huossa」に由来するホッサ村には、どこかの遠い場所、どこかの遠い時間が、いまも息づいているはずです。
小さな島の夏限定サウナ|Lonna Sauna
ヘルシンキのマーケット広場からフェリーで10分のところにあるロンナ島。かつては基地として利用されていた歴史もありますが、現在はレストランやコーヒーショップ、ミュージアムなどが、5月~9月の夏の期間だけ営業しています。
2017年にオープンした『ロンナ・サウナ』では、薪で温められたフィンランドの伝統的なサウナで神聖な感覚を味わえます。サウナの外には海に面した大きなテラスがあり、群島の壮大な景色の中を泳ぐこともできます。
サウナの後は、伝統的な島の料理を現代風にアレンジした季節の料理のレストランへ。地元産のオーガニック食材を使用しているため、時期ごとにメニューが変わります。都会の喧騒を離れて美しい夕陽を眺めながらリラックスした時間を過ごしてみてはいかがでしょうか。
海の上、美術館、大自然の中、ありとあらゆる場所に存在するフィンランドのサウナ。そのことは、サウナというものがフィンランドの人たちにとって欠くことのできない存在であることの表れに違いありません。
今回ご紹介したサウナは、いずれも自然を感じさせてくれるもの。サウナとは、自然とフィンランドの人たちとをつなぐ大切な場所なのかもしれません。そんなサウナの秘密をいつか解き明かしてみたいものです。
text : harada
資料提供 : Visit Finland