普段の生活の楽しみや日々の潤いに
今回ご紹介するのはフィンランド語の翻訳・通訳をされている上山美保子さんのフィンランド語講座です。フィンランド語を楽しく学ぶためになにより大切なのは自分に合った講座や教室を選ぶことではないでしょうか。上山さんの講座はフィンランドのことを語り合ったり、フィンランドを通して仲間が見つかる場所にもなっているそうです。
また上山さんは、フィンランド語を学ぶ目的はどんなものでも構いません、ささやかなきっかけでとりあえずやってみようという感覚で始めてみてくださいといいます。実際の講座にも普段の生活の楽しみや日々の潤いを求めて参加されている方もいらっしゃるそうです。長く続けられるということも自分にあった講座の条件かもしれません。
それではこれからそんな上山さんとフィンランド語講座の魅力を体験レポートを交えながらご紹介したいと思います。
大切なのは伝えること
まず最初に上山美保子さん(以下、みほこ先生)のプロフィールをご紹介します。
みほこ先生は、東海大学文学部北欧文学学科(現在の北欧学科)のご出身。在学中に研修旅行で訪れたフィンランドの街の雰囲気に魅了され、どうしても留学したいと決意されました。留学先のトゥルク大学人文学部フィンランド語学科で最も印象に残ったのは、文法が間違っていても単語だけでどんどんコミュニケーションをとっていく他国から来ていた留学生たちの姿でした。フィンランド語を正しく話すことよりもまず意思疎通することの大切さを実感したそうです。
卒業後、フィンランド系銀行やフィンランド政府観光局をはじめとする政府系機関に勤務します。とくに思い出されるのがオーロラのキャンペーン。政府観光局に勤めはじめた当時、北欧旅行といえば夏のものでした。そこで冬のフィンランドにも訪れてもらえるようにオーロラの素晴らしさを紹介することになりました。その効果が実り、多くの方が冬のフィンランドを訪れました。今ではフィンランドといえばオーロラを思い浮かべる方も少なくないのではないでしょうか。
フィンランド語の翻訳・通訳・講師として活躍されているみほこ先生ですが、講師になるきっかけは恩師の荻島崇先生(フィンランド語辞典編纂者)に背中を押してもらったことだそうです。これまで30年以上見つめてきたフィンランドをありのままに伝えたい、フィンランドを理解することで客観的にものごとを見るきっかけにしてもらいたいと現在もフィンランドの文化を広める活動をされています。
これまでの翻訳・監修作品(抜粋)
・『アキ・カウリスマキ』フィンランド語監修(エスクァイアマガジン・ジャパン)
・『フーさん』シリーズ翻訳(ハンヌ・マケラ著/国書刊行会)
・『絵を見て話せるタビトモ会話 フィランド語』(JTBパブリッシング)
・『フィンランド・森の精霊と旅をする』監修(プロダクション・エイシア)
・『ラヤトン 無限の森へ フィンランド・アカペラの響き』翻訳(プロダクション・エイシア)
はじめての語学教室
画像提供:上山美保子さん
今回体験した『フィンランド語必須単語持久走1000』は、フィンランドの新聞や小説、ニュースなどから頻出度で選んだ1000の重要単語を覚える講座です。先生ご自身の留学先での経験などから考案されました。
開講前に受講生のみなさんと簡単なご挨拶。年齢も性別も地域もそれぞれですがフィンランド好きという共通点があるので安心感があります。いつもはこの時間に近況報告や情報交換をされているそうです。
1回の講義で学ぶ単語は10~20個ほど。穏やかな語り口でユーモアを交えながら講義は進みます。
lehti、この単語の意味はなんでしょう? まずは各々辞書で調べます。みほこ先生のこだわりの一つが紙の辞書を使うこと。ただ1個の単語を覚えるだけでなく、その周囲にある単語も一緒に確認できるからです。
そして sanomalehti や lehtipuu といった派生語を教わります。lehtipuu(落葉樹)の反対語は havupuu (針葉樹)。
lehti|新聞、葉 sanomalehti|新聞、paperi|紙、vihkonen|帳面 aikakauslehti (aikakausi + lehti)|定期刊行物、雑誌 lehtipuu|落葉樹 / ruska|紅葉 havupuu|針葉樹 / havumetsä|針葉樹林
ここで紅葉は?という質問が挙がりました。ruska ですね、とみほこ先生。この ruska を含めフィンランドには5つの季節があるともいわれるそうです。自然豊かなフィンランドにはその言葉にもたくさんの表現や語彙があります。
このように lehti という1個の単語から教科書だけでは気づかない派生語や同義語、反義語、そしてフィンランドの自然や季節にまで次々と話題が広がっていきます。
初めての語学教室体験でしたが雰囲気も和やかでとてもわかりやすい講義でした。独学で学んでいる方にも、すでに他の講座で学んでいる方にも習熟度に関わらずフィンランド語の単語に対するより深い理解が得られるのではないでしょうか。
また、この講座『フィンランド語必須単語持久走1000』を続けることで、自分だけのフィンランド語事典ができるかもしれないと思いました。復習や日々の学習によって自らつくる事典なのでいつでも取り出せます。フィンランド語を生きた言葉に、実際に使える言葉にする方法を教えてもらえる講座だと思います。
講座・セミナーのご紹介
みほこ先生が担当するフィンランド語講座では、いずれも受講生を募集中です。現在はオンライン講 座なので教室が遠くて通えないという方でも気軽に参加できます。日本全国のフィンランド好きと交流 する機会になるかもしれません。
◯ フィンランド語必須単語持久走1000(オンライン/単発でも可) フィンランド語の頻出度が高いトップ1000の単語を覚えよう。 ◯【朝活】フィンランド語基礎・入門編 (オンライン)
系統立てて勉強したいという方向けの基礎・入門編。
◯ もっともっとフィンランド語(オンライン)
文法の復習・応用に重きをおきたい方に。5年以上学ばれている方が多いそうです。
◯ フィンランド語で『絵本』を読む会(一時的にお休み中/単発でも可)
フィンランド絵本作家の大御所マウリ・クンナスの『七人の兄弟』(原作:アレクシス・キヴィ)。
▶ 講座の詳細をみる
◯ フィンランドで考える 人々を支える社会制度のこと(オンラインセミナー)
日時 : 9月24日 (金) 20:00~21:00(終了しました)/ 参加費 : 1000円
フィンランドの社会制度、教育や移民などの現状について、フィンランドという国を知りたい方へ。
◯ フィンランドのユーモア小説を読む(オンライン/体験受講も可)
フィンランド語の原書講読講座のお試しとしてもおすすめ。長い文章を読みたい中級以上の方へ。
▶ 講座の詳細をみる
* 講義の進度などにつきましては、それぞれの窓口までお気軽にお問い合わせください。
フィンランド好きのみなさんへ
フィンランド語を学ぶことでフィンランドに暮らす人たちの思考回路を理解することができます。フィンランドの日常生活や社会制度を知ることは日本で暮らす私たちの生活にも役立つのではないでしょうか。みほこ先生の話を聞いてみたいという方には9月24日に開催されるセミナー『フィンランドで考える人々を支える社会制度のこと』をおすすめします。
これまで実際にフィンランドで過ごしてきた多くの経験や長年のフィンランドに関わる仕事で培われた知識、フィンランドの方々との交流で身につけられた感覚を通してしっかりフィンランド語を学べることがみほこ先生の講座の大きな魅力です。
フィンランド語が使える楽しさを伝えたい 、もっとフィンランドを身近に感じてほしい、大好きなフィンランドを知ってほしいというみほこ先生ならではのフィンランド語講座を一度体験されてみてはいかがでしょうか。
「フィンランドが好きという方はどうか一度フィンランド語を学んでみてください。フィンランドがもっとわかります」(上山さん)
text : harada