フィンレイソン展

暮らしの中のフィンランドデザイン〜創業200周年記念フィンレイソン展







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テーブルの上のフィンランド

テーブルの上のフィンランド

日本初となるフィンレイソンの展覧会

フィンランドを代表するテキスタイルブランド、フィンレイソン(Finlayson)。その創業200周年を記念して、日本各地を巡回してきた『フィンレイソン展』が、新宿の京王百貨店で開催中です。本展では、これまで長い年月に渡ってフィンランドの人たちに親しまれてきたフィンレイソンの素晴らしいデザインの数々を、原画と実際のテキスタイル生地で堪能することができます。

会場に展示されているテキスタイルや資料は、主にタンペレ歴史博物館とフォルッサ博物館に所蔵されている貴重な品々。そして、このタンペレとフォルッサという二つの街の工場の存在こそが、フィンレイソンにとって重要な位置を占めています。

フィンレイソン展

フィンレイソンの歴史が始まったのは、1820年タンペレの街に誕生したフィンランド最古の紡績工場。創業者はスコットランド出身のジェームズ・フィンレイソン。偶然とはいえ、なんともフィンランドの企業にぴったりな名前ではないでしょうか。

その後1836年にロシアの実業家らにフィンレイソン社は継承されますが、ジェームズ・フィンレイソンの意志を継ぎ、病院や学校、教会などをつくり、工場で働く労働者の環境や福祉を整えていきました。その結果、1860年代にはタンペレの人口の1/3を雇っていたそうです。これらのことはまさに、フィンレイソン社がタンペレの街を育てたといえるかもしれません。会場には、当時フィンレイソンが発行していた通貨も展示されています。

フィンレイソン展

フィンレイソンでは、1838年から製織を開始し、いろいろなパターンの生地が製造されるようになりました。会場の壁一面に展示されていた1890年代後半に作られた生地は、ストライプやチェックなど基本的なデザインではありますが、細かく見ていくと糸の太さなどでパターンにアクセントがつけられていて、とても興味深いです。これらはフィンレイソンが紡績工場からスタートしたことの強みだと思いました。

紡績、染色、デザイン、製織とテキスタイルにまつわるほぼ全てをひとつの会社でまかなっていたところに、フィンレイソンの特徴があるのではないでしょうか。

フィンレイソン展

そして1934年、フィンランド第二の紡績工場フォルッサ社と合併し、フィンレイソン-フォルッサ社となります。この合併により、タンペレでは織り、フォルッサではプリント、という精算ラインの棲み分けがされるようになりました。

またそれと同時期に始まったのが、PMK(木綿工場販売事務所)との広告キャンペーン。キンモ・カイヴァント作の切り絵のようなポスターはとてもポップで、いまでも充分広告になりそうです。そのほかガラスデザイナーのティモ・サルパネヴァによるファッション冊子なども刊行されました。

フィンレイソン展

フォルッサデザインアトリエのデザイナーたち

現在、フィンレイソンと聞いて思い浮かべるテキスタイルは、フォルッサで製造されたプリントテキスタイルかもしれません。1950年代に入るとフォルッサにデザインアトリエが設置され、さまざまな社内デザイナーたちが活躍するようになります。

フィンレイソン展

その筆頭といえるのが、アイニ・ヴァーリ。デザインアトリエに入った当初はトレース係でしたが、アトリエでの実践や通信教育などで学び、「コロナ」「タイミ」「オンップ」といった代表的なデザインを生み出しました。

フィンレイソン展

会場で見て驚いたのが、アイニ・ヴァーリのそのデザインの幅の広さ。花や植物をモチーフにしたものが多いですが、幾何学模様からパターン、さらにイラストまで。少ない色の組み合わせで、これほどカラフルにデザインできるということは、本当に素晴らしい才能だと思いました。

フィンレイソン展

そのほか、アリヤ・マッティラ、ウッラ・ペルホ、ピルッコ・ハンマルベリなど、個性的なデザイナーたちの原画と生地をぜひ会場でご覧になってみてください。

また、テキスタイルを制作するというのはデザイナーだけの仕事ではありません。実際にデザインを生地に落とし込む際、クライアントや工場の技術者たちと相談しながら色や柄を決めていったそうです。その共同作業によるある種のズレのようなものがテキスタイルのおもしろさを生み出しているように思います。

フィンレイソン展

1973年にフィンレイソン-フォルッサ社は、ストックマンデパートでムーミンのテキスタイルを独占的に生産していたポリンプーヴィッラ社と合併し、フィンレイソン社となりました。1980年代の終わりになると、トーベ・ヤンソンのムーミンは、デザイナーのリーサ・コタによりフィンレイソンのテキスタイルとして蘇りました。ムーミン好きの方は、大きな原画や生地見本もぜひお見逃しなく。

フィンレイソン展

フィンレイソンはその200年の歴史の中で、「デザインには、生活の場としての世界をよりよくしていくという責任がある」という考えのもと、働く人々や街を支え、女性を雇用するなど、さまざまな変革をおこなってきました。そうして培われてきた信頼や市民の暮らしを大切にする思想があったからこそ、フィンランドの家庭で愛用されるようになったのではないでしょうか。こうして日本へと届いた理由もきっとそこにあるのかもしれません。

フィンレイソンが生み出した暮らしの中のフィンランドデザイン、ぜひ会場でお楽しみください。

フィンレイソン展
開催概要
創業200周年記念 フィンレイソン展

会期 2022年9月21日〜10月3日
会場 京王百貨店 新宿店 7階大催場
住所 新宿区西新宿1-1-4
開場時間 10:00〜20:00(最終日は17時閉場)後援 フィンランド大使館、文化服装学院
特別協力 フィンレイソン社
協力 タンペレ歴史博物館・フォルッサ博物館、アンドフィーカ
企画制作 東映

ホームページ京王百貨店 新宿店


また、フォルッサ博物館による展覧会「旅するテキスタイル フィンレイソンのプリントが生まれた町、フォルッサより」が、富士吉田市のFUJIHIMUROにて10月1日より開催。

こちらの展示では実際にフィンレイソンのテキスタイルに触れることができるそうです。フィンレイソン展と合わせてどうぞ。

開催概要
旅するテキスタイル フィンレイソンのプリントが生まれた町、フォルッサより/併設パネル展「フィンレイソンとフォルッサ」

会期 2022年10月1日~10月30日
会場 FUJIHIMURO
住所 富士吉田市富士見1-1-5
開場時間 11:00〜17:00
開館日 金・土・日・月主催 フォルッサ博物館、ふじよしだ定住促進センター
協力 フィンレイソン社、アンドフィーカ、装いの庭
後援 富士吉田市、フォルッサ市、フィンランド大使館、スカンジナビア・ニッポン ササカワ財団
助成 粟井英朗環境財団

ホームページFUJIHIMURO

text & photo : harada

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