#149 よければ一緒に

表参道の路地の向こうから、たくさんの小鬼たちがやってきました ──

Moi!フィンランドをもっと好きになる149回目のレポートをお届けします。メニューはこちら。


シェルフベックとか愛媛のみかんとか

最初の報告は岩間さんから。最近読んだ江國香織の小説『シェニール織とか黄肉のメロンとか』(角川春樹事務所)に見つけたフィンランド。

物語の主人公が、ある映画の試写会で編集者の男性と再会。その映画というのは、フィンランドの女流画家を描いたものでした。「女流画家の映画といえば、みなさんすぐにわかりますよね」と岩間さん。「そんなふうに予期しないところで、フィンランドと出会うのは楽しいですね」。

そしてNHK Eテレ「太田光のつぶやき英語」に映画『枯れ葉』の主演アルマ・ポウスティさんが出演されている回をアーカイブで観ました。「インタビューに答えるアルマさんを見ていて、とてもいい人なんだろうなぁと思いました」と岩間さん。

さらに前回の配信でミホコさんが紹介していたTV番組「海外クルーを呼んでみた。」について。フィンランドとインドの撮影クルーが、それぞれ外国からの目線で愛媛のPR動画を撮影するという番組です。こちらは2月27日までTVerで観ることができますので、ぜひ視聴してみてください。

イ:インドの動画はPRになっていましたが、フィンランドの動画はなっていませんでしたね、笑。
ミ:そうですね、笑。
イ:つくりたいものを作っちゃったという感じで、いい思い出をありがとうと楽しんでいるようでした。


フィンランドの学校に校歌はありますか?

次はミホコさんの報告。フィンランド人の知り合いとの日常会話からこぼれ話をいくつか紹介してくれました。

まずはフィンランドでは国歌をいつ歌うかという話から、校歌や学校の話になったこと。ちなみにフィンランドの国歌は「Maamme|我等の地」。詩人のルーネベリが書いたスウェーデン語詞(Vårt land)に、フレデリック・パシウスが曲をつけました。フィンランド語詞はパーヴォ・カヤンデル。

フィンランドには校歌や卒業式などはなく、卒業試験を通過したセレモニーがあるだけとのこと。また小学校では発表会はあるものの、授業参観というものはないそうです。「親が学校にしばられないことはいいかもしれないけれど、『どのように子どもたちが授業を受けているのか、とても興味がある』と言っていました」とミホコさん。

また小学校での先生へのイタズラの話へ。黒板消しを教室の戸に挟むというのはフィンランドでもあるよう。同級生がやっていたイタズラについて話すと「それは相当悪いね!」という感想があったそうです。どうぞほどほどに、やっぱりイタズラはあとで笑えるものがいいですね。

イ:校歌の話はおもしろいですね。日本だと学校同士で競う対抗文化があるよね、応援歌とか。
ミ:フィンランドでは、ジュニアスポーツとかクラブチーム対抗みたいな感じですね。
イ:日本はイギリスの寄宿学校とかの文化の影響を受けているのかもしれませんね。


気持ちに寄り添うこと

配信中「フィンランドでのお悔やみの気持ちの伝え方を教えてください」という質問がありました。そこでミホコさんが教えてくれたのが「Otan osaa」という言葉。

そして、香典といった習慣はないので「お花を贈ってあげたりするといいかもしれません。教会に飾られているような百合の花とか。また、あとに残らないものを贈るといいですね。カードだけでも伝わると思います」とミホコさん。

「お悔やみを申し上げます」も「Otan osaa」も相手の気持ちに寄り添うことではあるけれど、「お悔やみ」には自分も悲しんでいますという気持ちが含まれているように思います。「Otan osaa」は自分の気持ちよりも相手のことを尊重する、もう少し優しい言葉のような気がしました。


デザインとサステナビリティ – NORIDC TALKS JAPAN

最後は自分の報告です。持続可能な未来に向けて行動している北欧諸国と日本の識者が対話するイベント【NORDIC TALKS JAPAN】をオンラインで聴講しました。今回のテーマは《デザインとサステナビリティ – 社会におけるデザインの機能》。登壇されたのは以下の方々(敬称略)。

モデレーター:
 猪飼尚司(編集者/ジャーナリスト)

パネリスト:
 オーラ・ルーネ(建築家:クラーソン・コイヴィスト・ルーネ)
 フレヤ・ストールベリ=アールト(建築家:JKMM アーキテクツ)
 長坂 常(スキーマ建築計画代表)

UNIVERSITY of CREATIVITY(2024年1月31日)

サステナビリティを別の言葉に言い換えるとするとどんな言葉になりますか?という質問に、JKMMのフレヤさんは「責任」と「喜び」という言葉を挙げました。

「20年以上使われてきた『サステナビリティ』という言葉ですが、本来の意味を失いかけているのではないか」と。たしかにその言葉が免罪符やファッションになってしまっているようにも感じます。また「自分たちの行動やライフスタイルに責任を持たなければなりません。自分を変化させる喜びや新しいソリューション(課題解決)を見つける喜びを感じることも重要です」と。

一方、オーラさんは「本当にサステナブルになりたいのならば、何もしないほうがいい」。そんな矛盾を持つけれども、「自分の行動に誇りを持ち、人生よりも長く、次世代に残る高いクオリティを目指すこと」ではないかと。

また長坂さんは「責任というものはもちろんあるけれど、新たなコンテクスト(枠組み)としてとらえています。(サステナビリティについて考えることで)今まで見えていなかった世界が見えてくるのではないでしょうか」。

そのほか、シェアリングやリノベーション、木材の利用、建築やデザインの未来などについて話し合われました。技術の発展や社会構造の変化だけでなく、一人ひとりの意識と行動の変革が大切になってくるのだと思います。


幸せのレシピ – JKMM Architects

そしてもうひとつ、Artek Tokyo Storeで開催された【JKMM talk event – Recipes for Happiness】へ行ってきました。このイベントはオンラインでも開催され、100名以上の視聴があったそうです。

JKMMからは4名のメンバーが来日されていて、自分の知っているだけでもフィンランド大使館、東京大学農学部(北欧建築・デザイン協会)、東川町地域交流センター(北海道)、NORDIC TALKS JAPANと、さまざまなところで講演を行われてきました。

今回のイベントに登壇されたのは、創設者の一人でもあるテーム・クルケラさんとインテリア部門の責任者パイヴィ・メロウネンさん。幸福な空間をどのように建築とデザインで実現していくかということをテーマに、JKMMがこれまで手がけてきた建築をいくつか紹介してくれました。

会場ではイベントの後、(自分の最も苦手とする、笑)懇親会があったのですが、翻訳を担当された方に「カメラマンの方ですか」と間違われ、アルテックの方からも「折角なので写真をどうぞ」とお寿司を撮りました(美味しくいただきました!)。イベントの内容については後日記事を書きたいと思っています!

ハ:建築家やデザイナーが100名以上もいる大きな建築事務所なんですが、アールトの魂を引き継いでいくと言っていましたね。
ミ:アールトの魂ってどういうことですか?
イ:オンラインで視聴しました。JKMMは優等生的でもありますね。もっと上の世代の建築家たちからは「アールトの呪いを乗り越える」といった話を聞きました。アールトを否定して、どういった個性を出していくかというような。一方、彼らは「レイヤーを加える」と言っていましたが、アールトの偉大な遺産を受け取った上で、自分たちの個性を加えようと考えているそうです。


── 自分で描いた鬼のお面をつけた子どもたち。土曜の夜には「鬼は外」の声が住宅街に響いていました。お面も節分豆もないけれど、お祝いする気持ちだけは一緒に「福は内」。どうかみんなの元へも福がやってきますように。それでは今回はこの辺で、次回もお楽しみに。

text : harada

#149|Love The One You’re With – Stephen Stills