Aakkosetとは、フィンランド語でアルファベットのこと ──。
Moiのスタッフがそれぞれ思いつくまま自由に選んだフィンランドのことばから、ささやかな日常の風景をお届けします。
今回のアルファベットは【L】です。
大仕事
フィンランドを旅するとき、もっともお世話になるお店のひとつにレイポモ、パン屋があります。
とりわけ貧乏旅行では、そうそう外食に頼る(フィンランドでは外食はファストフードですら高価)わけにもいかず、夕食はホテルの部屋でパンとちょっとした惣菜をといったスタイルになりがち。そんなとき、街のそこかしこにあり、しかも品数も豊富なレイポモは強い味方です。
ライ麦を使った食事系の黒パンをはじめ、おなじみのシナモンロールや頭に澄ましバターと砂糖を浮かべた丸いバター目玉パン。ほかにもクリームチーズのようなRahkaをのせて焼成したプッラなど、考えただけでもよだれが出そうです。ちなみにプッラとは、フィンランド語で言うところの菓子パンのこと。
菓子パンといっても、フィンランドのそれは日本よりもずっと甘さは控えめです。あんぱんやクリームパンのように中身がみっちり詰まっていたり、アイシングで覆われているようなものはあまり多くありません。そんなこともあって、うっかり食事にも甘いパンを口にしてしまうのがじつはけっこう「罠」なのですが。
そしてもうひとつ、レイポモは現地の人を気取って買い物を楽しむのに格好の場所といえます。フィンランド語でパンの名前と数だけ言うことさえできれば、スマートに買い物を済ますことができるのがレイポモです。
──── ヘイ!コルヴァプースティひとつとペルナリンップひとつ下さい。
といった具合。大きなパン屋では、番号札をとって待っている間にできるだけ流暢に、いかにも「土地の人間」のようにさりげなくセリフが言えるよう頭の中で繰り返し練習して順番を待ちます。帰り際には、わざとらしくない微笑みを浮かべて「キートス(ありがとう)」と言うのもお忘れなく。
ホテルの部屋に帰りつき、パン屋での「大仕事」の心地よい疲れに酔いしれながら、さっそく包みから取り出したパンをひとかじり。そんなふうにしてひと息つくのが、ちょっと風変わりなぼくのフィンランドの旅の楽しみ方になっています。
Leipomo = パン屋
text : iwama
おじいさんに相談しよう
「休息」。息をするのを休んだら苦しいだろうなあと考えてしまうのは疲れているせいでしょうか。そんなときには休んでひと息入れましょう。
熱中するとまわりの声がまったく聞こえなくなる性格なので、本を読んでいたりヒンメリを作っていたり(最近ハマっているのです)すると、たいていのことは後まわしになります。もちろんそれは「休息」といえども。ブレーキの壊れた自転車です。近寄ると危険ですので、できればそっとしておいてください。
とはいえ、「休息」のことを書いているのですから「休息」を後まわしにしてはいけません。そう、フィンランドならカハヴィタウコ、スウェーデンならフィーカ、とにかくコーヒーでも一杯 ──、
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コーヒーを飲んでから30分が経過しました。その間ずっと、このあと何を書いたらいいのか考えていたので、はたして「休息」をとったといえるのかどうかわからなくなってきました。そもそも「休息」をうまくとれないことが悩みだったりすることもありますよね。まわりに気をつかって休めなかったり、なにか忙しくしていないと不安になってしまったり。
とりあえずここで理想の「休息」というものを考えてみることにしましょう。たとえば、
陽の当たる縁側に腰かけて、庭にやってくるメジロみたいな小鳥の声を聴きながら、ぼーっと雲が流れていくのを眺めたり、目を閉じてまぶたの裏の光を感じたり ──、ああぁ、これではおじいさんではないか。と思うけれど、幼い頃から縁側という場所がいちばん好きだったのです。三つ子の魂百まで。いや待て、ということは幼い頃からもうすでにおじいさんだったということだろうか ──。
「休息」からもフィンランドからもずいぶん遠く離れてしまいましたね。ここら辺で休息を。
Lepo = 休息
text : harada