Fazer|Fossiili

Aakkosetとは、フィンランド語でアルファベットのこと ──。


Moiのスタッフがそれぞれ思いつくまま自由に選んだフィンランドのことばから、ささやかな日常の風景をお届けします。

今回のアルファベットは【F】です。


いけず

はじめて「ファッツェル」という名前を目にしたのは、とあるフィンランド語のテキストの例文でのこと。いまから20年以上も前の話になりますが。

映画をみにいく約束をした美晴とタピオが、待ち合わせ場所として選ぶのが「ファッツェル」。

Kello kuusi, Fazerilla. ─ 6時にファッツェルで

もちろん、そのときはまだ「Fazer」のなんたるかを知りません。欄外に「Fazerは喫茶店の名」と書かれているのを見て、「フィンランドのナウなヤングはFazerという喫茶店で待ち合わせるのか~」と思ったくらいでした。

その後、はじめて訪れたフィンランドで宿泊したホテルは、まさにその「ファッツェル」のちょうど目の前。さっそく入ってみましたが、「ナウなヤング」というよりは、そこは「かつてナウでヤングであった人びと」で賑わうヨーロピアンなカフェという印象でした。

さらにスーパーのお菓子コーナーに並んだ色とりどりのパッケージを見て、「ファッツェル」がじつはフィンランド最大手の製菓メーカーであることを知ります。どのくらい大手かというと、スーパーの陳列棚では、森永と明治、それにグリコを足したくらいのスペースを「ファッツェル」ブランドのお菓子が占めている。フィンランドの子どもたちのカラダの1/3は、もしかしたらファッツェルでできているかもしれません。※個人の感想です

そして、あの悪名高いサルミアッキもまた「ファッツェル」の看板商品のひとつ。パッケージに騙されてうっかり口にした結果、「世界一まずい飴」ともいわれるサルミアッキの洗礼を受けたひともすくなくないはず。どくろマークをつけろとまでは言いませんが、よりによってあんなにかわいいパッケージにしなくても…… フィンランド人いけずやわ~。

Fazer = ファッツェル
text : iwama


静かに語る

── 化石はなにも語らない。

もちろんどんな生き物でいつの時代のものか調べればわかるかもしれない、あくまで推測として。でも、ただそこにあるだけでとても想像力がかきたてられることは確かだ。

── たとえばここに一枚の葉っぱの化石がある。

フィンランド湖水地方のとある村。強い風に吹き飛ばされた白樺の一葉がそばを流れる川へふわりと舞い降りてきました。その流れにのって大きな湖へと辿り着きます。静かな湖面を漂っていた葉はゆっくりと湖の底へと沈んでいきました。それから何千年、何万年、どのくらいの歳月が経ったでしょうか。いつしか湖は干からびて湖底だった岩盤には葉っぱの形がくっきりと残っていました。── しかしそれは葉っぱの化石ではなく、絶滅したある動物の足跡の化石だったことは、誰にも知られていません。

化石の写真から想像しただけの話だけど、見えているものだけが真実かどうかなんてわからないし、真実だけに意味があるわけでもない。だとしたら、語られるべき物語って一体どこにあるんだろう。

どこかすべてに対して語ろうとしてはいないかな。語りえないものがあって、沈黙によって語られることだってあるのに。まずは、なんのために語るのか自分に問いただしてみないと。

本当に伝えたいことを、ゆっくりと、静かに、届いてほしいひとへ。いまはそうありたいとおもう。

── ああ、語りすぎていますね、笑。

Fossiili = 化石
text : harada