すっかりご無沙汰しております。ご心配くださったみなさま、ありがとうございます。ひとまず元気です。リハビリ(?)に短い文章でもひとつ。
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このあいだの休日、思い立ってふらりと横浜に行ってきた。なんとなく東京にいるのが息苦しくなって逃げ出したいような気分のとき、横浜に行ってぼんやり数時間を過ごして帰ってくるということをときどき、する。そこでは、とてもリラックスできることがわかったからだ。
横浜は、子供のころからときどき足を運んでいたのでまったく見知らぬ土地というわけではない。いっとき、縁があって月に数度のわりあいで出かけていたこともある。なので地理もだいたいはわかっているし、たしかに旅のような非日常感はまるでない。だが、むしろその加減が、ぼくと横浜とのあいだの近すぎず、かといって遠すぎもしない「距離感」こそが絶妙で心地よいのである。つまり、ぼくにとって横浜という土地は「日常」のなかにポッカリと浮かんだ「非日常」、いってみれば「飛び地」のような存在なのだと思う。
そしてまた、そんなふうにほどよく「遠い」からこそ、ぼくのなかの横浜にはほのかな「幸福な記憶」しかない。それもきっとよいのだろう。その点、東京には、長く暮らしていればこその楽しい思い出もあれば悲しい思い出もある。東京にいるかぎり、そこが生活の中心であるかぎり、そうした無数の思い出たちはぼくを放してはくれない。でも、それは仕方のないことだ。そのかわり、日常のかたわらにこういう「ぬるま湯」のような場所をもつことは、好むと好まざるとひとつの土地に根を生やしてしまった人間にとっては案外だいじかもしれない。
バスを待ちながら、ぼんやり空を見上げていた。ひさしぶりに青い空。光の波長がとかなんとか、でも、心情的にはあいもかわらず「空気は透明なのになんで空は青いの?」という小学校低学年のマインドに近しさをおぼえる。
ところで、「空は、」(「空が、」でもかまわないけれど)の後にどんなことばを思いつくかで、じつはそのときの気分を知ることができるのではないか。
たとえば、「空は、青い」といえば「あたりまえじゃん!」と返されそうだが、そんな当然のことにも驚いてしまうくらいなにかに忙殺されていたんだなぁと気づかされたり、気持ちが沈んでいるときには、おなじ「青」でもそこに「憎らしいほど青い」という感情が上書きされていることだってあるだろう。大きく伸びをしながら「空は、広い」と言うひとは、めいっぱいの開放感を味わっていることが伝わってくるし、イケイケの「無敵」なひとだったら、空の大きさに自分の無限大の可能性を重ね合わせたりしているかもしれない。
そのときそのとき、じぶんの感情を鏡に映すみたいに空を見上げてどんなことばが連想されるか、たまにためしてみるのもちょっとした「心理テスト」のようで面白いかもしれない。
ところで、きのうは定休日だったのだけれど、図書館を3軒ハシゴして気づいたらすっかり日も傾き、お休みも終わっていた。あたりをつけた資料をいろいろつぶせたのはよかったが、けっきょく思っていたような情報にはたどり着けず。それでも、消去法的にかんがえれば一歩「真相」には近づいたということか。刑事(デカ)かよ。
11月17日[土]夜、ミステリ愛好家のアアルトコーヒー庄野さんとイベントをやります。
今回は、初の「読書会」スタイルでの開催! といっても、あまり難しくかんがえないで下さい。庄野さんが淹れたコーヒーとシナモンロールを召し上がったいただきつつ、一冊の本を「肴」にみんなでおしゃべりを楽しみましょうという気楽な会です。ミステリ好きはもちろん、ふだんめったに読まないというひとでもOKです。むしろ、いろいろなひとがいたほうが楽しくなると思います。
そして、今回の「テーマ」は
── いまさら、次郎
「三毛猫ホームズ」シリーズなど、だれもが名前を知っている人気作家でありながら、じつは意外とみんな読んでいない(前回のイベントに参加してくださったミステリ好きのみなさんも誰ひとり読んでいなかった。笑)、赤川次郎の作品をあらためて読んでみようという企画です。
今回取り上げる「課題図書」は、赤川次郎の処女長編作で、庄野さんいわく「フレンチミステリ風味の佳作」
── 『マリオネットの罠』(文春文庫)
です! う〜ん、たしかにフレンチミステリ風味かも。「三毛猫ホームズ」とはまたちがいますね。いろいろなひとの視点を知ることで、おなじ本が5倍、10倍も深くなる読書体験の醍醐味をいっしょに味わいましょう!
◎ ミステリとアアルトコーヒー
日 時:11月17日[土]18時30分(18時15分開場)
場 所:カフェモイ(吉祥寺)
案内人:庄野雄治(アアルトコーヒー)
参加費:2,000円(庄野さんの淹れるコーヒー&シナモンロールつき)
備 考:読書会スタイルでの開催となりますので、極力「課題図書」を御一読の上、ご参加ください。