中世主義というキーワードから、大正時代の建築を読み解いた刺激的な論考。というのでは、この長谷川尭による『都市廻廊あるいは建築の中世主義』という本をまったく説明できていない。建築史というのは表向きの顔、じっさいには明治と昭和のはざまに花ひらいた大正という時代を、ある一面から徹底的に抉ったギラギラとした思想書なのである。そしてまずはともかく、この詩的な目次を見よ!
目次
第一章
「所謂今度の事」をめぐって
叛 逆 者
大正元年のCOCA COLA
三田の丘の上
小さいものから
高松政雄のラスキン
新しい心斎橋と日本橋
りうりうと仕上がったのでお芽出度い
河のなかの「江戸の唄」
妻木頼黄という建築家
「陸の東京」への咆哮
水上のシャンゼリゼ
荷風の中世主義
日和下駄に蝙蝠傘
裏町と横道を行こう
軽蔑なしに羨ましい
細長い〈囲い地〉
コバルトの空の下の虞美人草
水上都市の構想
「メイゾン鴻の巣」
芝の上に居る
復元街区
小屋談義
「物いひ」
四十二年組
山崎静太郎の構造の主体性の主張
反 論
レアリテとヴェリテ
第二章
〈囲い地〉について
囲壁の内側
都市改造の根本義
バ ラ ッ ク
相 互 扶 助
復興都市の建築美
賀川豊彦の学会での講演
ギルドとサンジカ
〈都市〉としての」ハワードの発明
『ガーデン・シチーに就て』
樹木をよける道
コテージ
内部のふくらみ
日本のカントリーハウス
ヴォーリズと近江八幡
モリスと云ふ先生
ある提案
第三章
『様式の上にあれ』
考え方の変化
未来への遁走
現 在
神の臨在
量塊・表面・平面
陰 影
北への視界
ストックホルムの石
バルセロナで
雪の中に立つ
部分から全体へ
手と機械
私のロマネスク
あとがき