秋の長雨とはいうけれど、これほど雨が続く経験もはじめてのことでした。各地で被害も出ているということで、おだやかな日々がすこしでも早く戻ることを願っています。
なかなか出かけられない日々が続き、前回のレポートからふたたび3ヶ月が経ってしまいました。その間に気になったフィンランドにまつわるあれこれをご紹介したいとおもいます──
マリメッコの世界
7月に京都文化博物館からはじまった【マリメッコ展 模様のちから】。その巡回展が、東京都庭園美術館にて開催中です(10月3日〜12月20日)。それに合わせていくつかの雑誌でマリメッコの特集が掲載されていたので読んでみました。
そのなかでも別冊太陽『マリメッコの世界』は、数多くのテキスタイルデザインとともに、マリメッコ社の歴史や創業者アルミ・ラティアの言葉、マイヤ・イソラ、ヴオッコ・ヌルメスニエミといったデザイナーなどについて紹介されていて、とても充実した内容でした。
それらの特集を読みながら、なぜマリメッコは日本でこれほど人気があるのだろうと考えていました。その疑問を解く鍵は、かつて脇阪克二さんや石本藤雄さんがマリメッコのデザイナーとして活躍されていたことにもあるのではないでしょうか。もしかしたらフィンランドで暮らす人と日本で暮らす人にはどこか共通する感性があるのかもしれません。アルミ・ラティアが彼らのデザインをおもしろいと感じたのとは逆に、マリメッコのデザインをおもしろいと感じる素地が日本側にもあったのではないかと想像します。

そんなマリメッコの現役デザイナーのなかで気になったのは、デザインに切り絵を用いるというアンッティ・ケッキさん。グラフィックの出身のアンッティさんは、コンピューターを使わず、ほぼ全ての工程を手作業で行うといいます。時代を超えるデザインを目指して、そのプリントが新作なのか、アーカイヴから再発見されたのか見分けがつかなければ成功、という姿勢もいいなと思いました。
2026年8月2日 日曜日
夏の恒例イベントとなっているistutポップアップカフェ「生のワッサーをかじろう!」へ。会場は国立駅から坂を登ってすぐのところにある日用雑貨と焼き菓子のお店maika/kb’s bake。ワッサーだけでなく、長野にあるistutの工房で作られたジャムや焼き菓子などが並びました。ちなみにワッサーとは、桃とネクタリンの交配種(長野産)のこと。
自分が訪れたのは午後4時ごろと遅めだったので、ワッサーもルバーブジャムもカルダモンサブレもすでに完売でした。そこでkb’s bake特製のワッサーのタルトをいただきました。kb’s bakeの焼き菓子はどれもおいしく選ぶのにいつも迷ってしまうのですが、このタルトもサクッとした食感が残っていて美味でした。

現在maikaでは10月18日まで【maikaの暮らし展 -RUSKAの器-】を開催中。アラビア製陶所でつくられたRUSKAシリーズのヴィンテージアイテムを販売しています。またistutも長野市の雑貨店RISETTEにて、ポップアップカフェを10月10日〜12日に開催する予定です。
2026年8月23日 日曜日
6月末に予定していたイベント【はじめてのフィンランド旅】が台風の影響で中止となり、改めて8月23日にイベントが行われました。このイベントは、nuotio|takibi サークルの仲間でもある藤木さんに、フィンランドのアールト建築を巡ったときのことを現地で撮ったたくさんの写真と一緒に紹介してもらうというものでした。
旅から戻ったときにいつか発表会をしてもらいたいですとお願いしていたのですが、ようやく実現しました。じつは東海大学前のカフェginger & picklesで藤木さんとニアミスしたときも、お店の方から藤木さんのトーク企画を東海大学などでやってほしいという話を聞いていました。そちらもいつか実現するといいなとおもっています。

取材に行く先々でかならず会えるほど、フィンランド愛に溢れている藤木さん。当日もイラストレーターtipuさんのフィンランドTシャツを着て、たくさんの資料を持ってきてくれました。今回のイベントの発案はMaijaさん。そのMaijaさんの作るシナモンロールと岩間さんのコーヒー、そして藤木さんのトーク。さらにスペシャルなゲストも参加してくださいました。
今年7月、世界遺産に登録された13のアールト建築群のうち、11の建物を見ることができたという藤木さん。ひとつひとつの建築について、外観やディテールを含めてくわしく解説してくれました。美術館や本で学ぶのとは熱量がちがって、旅を追体験しているような気分になりました。岩間さんも、「カフェをしていたとき、初めてフィンランドを旅したひとの話を聞くのが好きでした」と言っていました。

そして最後にスペシャルゲスト、リオタデザインの関本竜太さんからもひと言いただきました。関本さんはカフェmoiの設計を担当された建築家で、SADI(北欧建築・デザイン協会)の現会長。今回の藤木さんの旅でも同行されていました。藤木さんはさぞかしドキドキしながらお話しされていたのではないかとおもいます。
とても充実した内容で想定していた時間だけでは紹介しきれず、ヘルシンキ篇は持ち越しということになりました。次回も期待しています。Maijaさんのシナモンロールもおいしかったです、ごちそうさまでした!

2026年9月3日 木曜日
アールトベース90周年を記念したイベント【IITTALA AALTO90 POP-UP】が伊勢丹新宿店 5階センターパーク/ザ・ステージ#5で開催されました(8月26日〜9月3日)。伊勢丹新宿店はエクベリが開店したばかりで、イッタラはもちろんマリメッコもテナントに入っているので、なかなかのフィンランドスポットです。

今回のポップアップでは、大小さまざまなアールトベースが大集合。世界6都市をテーマにしたAalto City Vaseや河江裕樹氏によるハンドペイントされたベース、枯山水のインスタレーションなどが展示されていました。
アールトベースのデザイン元については諸説ありますが、水を入れる花瓶として考えた場合、やはり湖のイメージが浮かぶので木型をつかったマウスブローの製品が個人的には好みです。光を通したときにできる抽象的な影やそのゆらめきがより感じられるから。

2026年9月7日 月曜日
9月7日はイルマリ・タピオヴァーラの誕生日(1914年)。彼のことを調べてみようと思い立ち、図書館で借りてきた織田憲嗣さんの『イラストレーテッド 名作椅子大全』を読みました。総ページ数736ページととても分厚い本のなかで、54名のデザイナーが紹介されています。
ハンス・J・ウェグナー、フィン・ユール、アルネ・ヤコブセンらを抑えて、もっとも多くのページが割かれているのがフランク・ロイド・ライト(17章)。そして次点がイルマリ・タピオヴァーラ(13章)です。アールトがたった3章であることを考えると、織田さんのタピオヴァーラへの注目度合いがよくわかります。
来年の東京ステーションギャラリーの展覧会スケジュールで、フィンランドの画家、エレン・テスレフの展覧会が発表されましたが、イルマリ・タピオヴァーラの展覧会もいつか開催されるといいなとおもっています。

2026年9月20日 日曜日
アキ・カウリスマキ監督の長編作品をひとつずつ観ていく連載【ライカ、おすわり! 映画がはじまるよ】を1年ぶりに更新しました。今回お届けした作品は2023年に劇場公開された『枯れ葉』。個人的には映画館で初めてリアルタイムで観ることのできたカウリスマキ作品です。これで現時点までの長編映画作品について、すべて書くことができました。以下のリンクよりお読みいただけます。
2026年9月22日 火曜日
降り続く雨と台風の影響で、鶴岡八幡宮の参道が冠水したニュースを目にした翌日、大丈夫かなとおもいつつ鎌倉へ行きました。ひさしぶりの晴れの日ということで鎌倉の街はとてもにぎわいを見せていました。
鎌倉へ来たらかならず寄るのが、ライ麦ハウスベーカリー。シナモンロールやカルヤランピーラッカ、ライ麦パンなどフィンランド出身のご主人が焼く町のパン屋さんです。この日はサーモンとほうれん草、クリームチーズの入った、さんかくサーモンパイをいただきました。
次に向かったのが、長谷寺の近くにあるカフェ vuori。元々は海苔問屋の倉庫だった建物を改装していて、とても趣のあるカフェです。フィンランド語で「山」を意味する「vuori」。2階には、くらしの道具や「山」にまつわる本がたくさん並んでいます。画家の大平高之さんの個展で訪れて以来、お気に入りの場所です(Moiのロゴは大平さん作)。

北欧ブックフェスタ
2回目の開催となる【北欧ブックフェスタ】が10月31日、11月1日に、東京・梅屋敷の仙六屋カフェで今年も開催されます。北欧語書籍翻訳者の会に所属されている翻訳者の方々をはじめ、出版社や作家の方々がブースで書籍を直販されたり、さまざまなテーマでトークを楽しめるイベントです。
会場では、みずいろブックスの新刊『ラジオ・ポポフ』(アンヤ・ポルティン著/梶田寛乃訳、11月初旬発売)が初お披露目されるそうです。どこかで聞いた覚えがある書名だなと思っていたら、以前レポート #046 でほんのすこしご紹介したことがありました。カバーを担当しているミーラ・ヴェスティンさんの個展(2022年)を観にいったときの話です。
そして、セルボ貴子さんの翻訳されたミステリ『クイーンの悪手』(マックス・セーク著/講談社)も並ぶ予定とのこと。NetGalleyで読ませてもらい、感想も書いたのでそちらもご覧ください。読みはじめて、おっと最初にひっかかったのが、若い被害者の部屋にエドウィン・コリンズのポスターが貼ってあったというところ。そのあともコールドプレイやレディオヘッド、ウィーザーといったバンド名がでてくるので、著者は音楽好きなのかもしれません。


──ゆっくりペースですが、これまたひさしぶりに【たき火ピクニック】をやります。コーヒーを片手にたき火をたのしむだけの会です。もしも気になる方がいらっしゃいましたら、お気軽にご参加ください。詳細は Instagram をご覧ください。
text + photo : harada
♩If You Could Love Me – Edwyn Collins


