#146 大きな絵を描く

お正月から毎日お餅を食べ続けています。世界でいちばん好きな食べ物かもしれません ──

Moi!フィンランドをもっと好きになる146回目のレポートをお届けします。メニューはこちら。


東京の街に雪が降る日

土曜日、東京に初雪が降りました。今回はまず、帰り道がまるで吹雪のようだったという岩間さんからの報告です。夏の暑さにはめっぽう弱いけれど、冬の寒さはなぜだか平気だそうです。

「寒いのも気持ちいいですよね。4月上旬のフィンランドへ行ったことがありますが、どのくらい寒いんだろうって思っていました。そのころは小雪がちらついたり湖がまだ凍っていたりしますけれど、ちょうど東京のすごく寒い時と同じくらいだなと。だから(東京の冬は)フィンランドの4月の気候だと思うと大丈夫。比較の問題ですね」

今年のフィンランドの冬はとても寒いようで、天気予報などでマイナス20℃〜30℃という数値を見ることがありましたが、それがどのようなものなのかまったく想像できません。


国立西洋美術館の北欧コレクション

そして、国立西洋美術館で開催中の展覧会【キュビスム展 ─ 美の革命】を観に行ったという岩間さん。常設展に並ぶ北欧絵画を紹介してくれました。岩間さんのコメントと一緒にどうぞ。

アクセリ・ガッレン=カッレラ『ケイテレ湖』1906年制作

「2021年に収蔵された『ケイテレ湖』ですが、もう4, 5回は観ています。夏のフィンランドの風景を描いたものです。以前は絵の前にソファがあってゆっくり観れました」

アウグスト・ストリンドベリ『インフェルノ|地獄』1901年制作

「スウェーデンのストリンドベリは劇作家、小説家として有名ですね。常設展では今回初めて公開されているようです。抽象画のようにいろいろな見方ができそうで気に入りました」

エドヴァルド・ムンク『雪の中の労働者たち』1910年制作

「ムンクの大きな作品(223.5cm × 162cm)もありました。北欧三ヵ国の絵画を同時に観れる常設展ってお得だと思いますよ。北欧の空気も感じられます」

ミ:ムンクでいうと赤いラインで描いた「病める少女」が気に入っています。
イ:キュビスム展では、新年早々ピカソが何故すごいのかがわかりました。とても酷い人ともいえますが、彼がいなかったら美術史が変わっていたでしょうね。
ミ:キュビスムというのはどういうものですか?
イ:なにもかもカクカクした感じ?笑
ミ:みなさんも調べてみてください。


アイノとアルヴァの手紙〜本と映画と展覧会

次は自分の報告です。昨年10月に発刊されて以来、すこしずつ読み続けていた『アイノとアルヴァ ─ アアルト書簡集』(ヘイッキ・アアルト=アラネン著/上山美保子訳/草思社)を読み終えました。印象に残ったエピソードなどたくさんあるのですが配信中に思い出したのは、アルヴァ・アールトとエリエル・サーリネンとの関係について。

サーリネンはひとつ上の世代(アルヴァは、サーリネンと同僚のアルマス・リンドグレンに学んでいる)であまり交流がなかったように思い込んでいましたが、アメリカに移住したサーリネンの家を何度か訪ねて、クリスマスなども一緒に過ごしていることを知りました。フィンランド国内の建築家よりも海外の建築家たち(フランク・ロイド・ライトをとても尊敬していたことがわかる)との交流が多く手紙の中に書かれていたことからも、フィンランドという小さな国からアメリカに渡ったサーリネンにシンパシーのようなものを感じていたのかもしれないと思いました。

また後年アルテックの舵取り役を引き受けたり、病気に見舞われるアイノへの手紙が、初めの頃の手紙と比べて、とても気遣ったものになっているような印象がしました。映画『AALTO』でのふたりの手紙は、ある意味ロマンティックなもののように紹介されていたと思うのですが、飛行機も電話もまだ一般的でない当時の社会状況にあって、ただのラブレター以上のもの、多忙なふたりを繋ぐ上で手紙がとても重要なものであったことがよくわかりました。

▶︎ アイノとアルヴァ アアルト書簡集|草思社

ミ:ロマンティックな手紙だと思いながら翻訳していましたね。
ハ:ロマンティックではあるんですが、ふたりのゲームになっていたような感じを受けました。
ミ:翻訳でその感じが伝わったことはうれしいです。他には?
ハ:読んだ先からすぐに忘れてしまうので、笑。今度は手元にある展覧会図録『アイノとアルヴァ 二人のアアルト』(図書刊行会)で建築写真とを見比べながら読んでみたいと思っています。


フィンランド語講座と新年の誓い

最後の報告はミホコさん。新年最初のフィンランド語講座がありました。オンライン授業でとりあげたのが4桁の数字をどのように表現するか、単位のつけ方です。パパッと言えるか、聞き取れるかを考慮して試したところ「すごく脳味噌をつかった」という感想があったそうです(焦るといつも以上に言葉が出てこない自分としてはすごく難しそう)。

またフィンランド語で書かれたミステリーを読む授業では、ストーリーが進展してとても楽しくなってきたところだそうです。舞台として出てくるヘルシンキの通りの名前をGoogleマップで調べたり、加害者の量刑の軽さがフィンランドと日本の感覚ではだいぶ違うといったことを話し合ったり。

そしてもうひとつ。同僚のフィンランドの方々とのランチの場で「新年の誓い」はもう立てた?という話題になったミホコさん。初詣でお祈りやお願いするのとはちょっと違うようです。フィンランドでは「週に1度はプールで泳ぐ」といったように今年の目標を宣言するとか。

フィンランド流に新年の誓いをしてみてはいかがでしょう。自分の目標は希望をかたちにすること、抽象的すぎてわかりにくいかもしれませんけれど。

イ:フィンランドと日本の事情の違いがみえておもしろいですね。
ミ:今年の目標とか立てたことありますか? 子どもの頃とかでも。
ハ:今年の目標はなんですかと聞かれて言うことはありますけど。
イ:ないですねぇ。クリスマスではなく新年なんですね。
ミ:新しい年になったらみたいですよ。家族で報告しあうこともあるみたいです。


シベリウス 幸せな音楽家

おわりにミホコさんからお知らせがありました。ヴァイオリニスト佐藤まどかさんによるピアノとのデュオコンサートが上野の東京文化会館で2月に行われるそうです。

「佐藤さんの演奏は繊細でいて力強いです。オーケストラとちがったシベリウスが聴けると思います。みなさんもご一緒にいかがですか」とミホコさん。佐藤さんは、シベリウスの曲の研究もされているそうで、今回の演奏曲には《幸せな音楽家》と《4つの小品 op.115》が予定されています。

日 時:2024年2月29日 19:00開演(18:30開場)
会 場:東京文化会館 小ホール
所在地:台東区上野公園5-45

▶︎ 佐藤まどか&安田正昭デュオ・リサイタル|東京文化会館


── 大きな絵を描くことはどうして難しく感じるのでしょうか。どこから描いてもいいのに、何を描いてもいいのに。白いキャンバスの上に絵筆をおろすことからしか始まらないことは誰もが知っているはず。それでは今回はこの辺で、次回もお楽しみに。

text : harada

#146|Big Painting – The Times