#138 別の言葉で

言葉の裏にはなにがあるのだろう。きっとそこにはなにもない ──

Moi!フィンランドをもっと好きになる138回目のレポートをお届けします。メニューはこちら。


北欧学? 日本における北欧の受容とその変化

もしいま東海大学北欧学科に入ったら ── と岩間さん

ふと、岩間さんがそう思ったきっかけは、以前紹介したコミック『ホテルメッツァぺウラへようこそ』のつづき、三、四巻を読んだこと。ラップランドのあるホテルを舞台に繰り広げられる物語で、フィンランド好きが読んだらニヤニヤしてしまうような描写がたくさん。登場人物たちの過去の傷やわだかまりがほどけていくといったコミックだそうです。

そこで岩間さんは、そういった「癒し」や「解放」といった北欧感はいつからどうやって生まれてきたのだろうかと考えました。北欧学科に入り、その疑問を研究・解明してみたいと岩間さん。映画『かもめ食堂』以前、たとえば五木寛之『白夜物語』では(ムンクやヴァイキングなどを題材として)北の果ての空気感やエキゾティックな雰囲気が描かれ、結構ドロドロとしているそう。いまの北欧の受容のされ方はどこから起こったのか?

ハ:かもめ食堂もそうですけど、カフェ moi もそうした変化に影響を与えたんじゃないですか?
イ:そういう面もあるかもしれませんね。
ミ:話を聞いていて、ツッコもうと思っていたんですけれど……(ちょっと手が離せなくて)
イ:どんどんツッコんでください、笑


ジャパンラリー2023 in 愛知

スポーツニュースでも話題に取り上げられてますね ── とミホコさん

そのニュースとは愛知で開催されているジャパンラリー2023。ミホコさんの注目は、トヨタ・チームに所属するフィンランド出身のドライバー、カッレ・ロヴァンペラ(Kalle ROVANPERÄ)選手とヨンネ・ハルットゥネン(Jonne HALTTUNEN)選手。またヒュンダイ・チームにもフィンランド出身の選手が所属しているそうです。

ミホコさんがラリー観戦でいつも気になるというのが、走行中に地図を見たり、ナビゲートしている助手がよく車酔いしないなあということ。

ハ:モータースポーツでは、フィンランドの選手がよく活躍していますよね。
ミ:そうですね。伝統的に多いかもしれません。
ハ:大会はいつ開催されるんですか?
ミ:開催中です、今日19日まで。(カッレ=ヨンネ・チームは第3位の結果)

toyotatimes.jp/rallyjapan2023

ムーミンの絆創膏

本番のことを考えると緊張してきます ── と次もミホコさん

今月21日から始まる「ヨーロッパ文芸フェスティバル」。ミホコさんは23日と25日に登壇します。現在その準備の真っ最中というミホコさんですが、先日辞書で指を切ってしまったそうです。

そこに登場したのが、リトルミィとニョロニョロの描かれた絆創膏。とても目立つので「あ!ムーミン」とよく気づかれるとか。このムーミンの絆創膏は、岩間さんも moi に常備していたそうです。

©︎mihoko-san
©︎mihoko-san

ハ:ケガは大丈夫ですか?
ミ:はい。だいぶ良くなってもう外しました。辞書を指の上に落としてしまいまして‥‥
イ:えっ! 辞書の紙で切ったものかと思いました、笑。
ミ:辞書の角は落とすと危険ですよ。


UsvaとVuoriと芸術の秋

岩間さん、『靄を漕ぐ』というグループはご存知ですよね ── と自分

「『靄を漕ぐ』は、ギタリストの坂ノ下典正さんと、古くからの友人である Sleeping Beauty という音楽ユニット、そして青梅にある MANSIKKA antiques 店主 濱田敦司さんによるグループです」と岩間さん。以前、堀切で開催された演奏会へ岩間さんと行ったことがあります。

その「靄を漕ぐ」というグループの名称が12月からフィンランド語のある単語に変わります。その単語とは USVA = 靄。その名の通り靄の向こうから聴こえてくるような静かな音楽。昨年2月に発売した限定CDもとても凝った意匠でおすすめです(配信後に確認したところ、そのCDを制作したディレクターの田仲昌之さんと写真を担当した山口明宏さんも正式メンバーとなり、USVAとして新たにスタートするそうです)。

▶︎ USVA公式ウェブサイト

ミ:Sleeping Beauty は、どんな音楽ですか?
イ:穏やかなインストゥルメンタルや声を楽器のように使うヴォカリーズのような、ジャンルでいうとポスト・クラシカルといった感じですね。
ミ:音源はありますか?
イ:はい、あります。

madeleinerecords.com

そしてもうひとつフィンランド語。「vuoriってわかりますか?」と聞いたところ、滑舌が悪かったらしく岩間さんにもミホコさんにも通じません。ということですぐに正解を言いました。「vuori = 山ですね、笑」

鎌倉にあるカフェ vuori で画家 大平高之さんの個展【閑かな日】が開催中です(11月30日まで)。大平さんは Moi のロゴを描いてくれた方。vuori については、以前からなぜフィンランド語名なのか気になっていたので機会があったらうかがってみたいです。

イ:フィンランド語がいろいろな場面で使われるようになりましたけど、フィンランド浸透度調査しているミホコさんから見て、どんな感じですか?
ミ:私は普通のカタカナの言葉でもフィンランド語に見えてきてしまうほど(フィンランド語から離れ難い)なので、ダメですね、笑


Kalevalaワークショップ〜金細工師たちの魔法

カレワラのワークショップ、すごくおもしろいですよ ── と自分

表参道 Hyvää Matkaa! で開催中のフィンランドのジュエリーブランド Kalevala のポップアップとワークショップへ行ってきました。ワークショップを担当してくれたのは、クリエイティブ・ディレクターのアイノさんと通訳のノーラさん。

英語とフィンランド語とどちらにしますか? とノーラさんがアイノさんに聞き、フィンランド語でワークショップを行うことになりました。アイノさんの話に、知っている単語はないかと耳をそばだてました。ユーモアや歓迎の気持ちをもって接してくれるアイノさん。思えばそれは、時々お会いするフィンランドの方々みなさんに感じられることです。

ワークショップでは、まずKalevalaの成り立ちから、サステナビリティ、社会貢献、そしてジュエリーのデザインや制作工程まで、いろいろな話を聞かせてもらいました。アイノさんの話を聞いているとどんどんKalevalaに興味をもってきます。

ジュエリー制作の工程体験は、チェーンをつなぐ(Paratiisi)、切り取り削る(Midsummer Night Rose)、リングの形をととのえる(Tundra)の3つ。実際に使われている様々な工具を用いて行いました。ほんの少しの体験ですが、こうして作られるのかとやはり親近感が湧いてきます。

そしてポップアップは、Hyvää Matkaa! がまるごと Kalevala のお店になったかのようでした。定番のジュエリーはもちろん、新作や限定品などもありました。クリスマスのオーナメントも(昨年はクマで、今年はヘラジカ)。

▶︎ Hyvää Matkaa! POP UP|Kalevala JPN

イ:カレワラの話を聞いていて思い出したことがあって、先日中古レコード店で舘野泉さんが30代頃にリリースしたレコードを見かけて。ジェケットのポートレートがハイネックにカレワラをつけていました。
ミ:ブローチとかですか?
イ:いえ、ネックレスです。
ミ:それは、さすがですね!
イ:カレワラはフィンランドでは当時からずっとね。
ハ:アイノさんとノーラさんおふたりとも学校を卒業する時にカレワラをプレゼントされると言っていました。


ARTEK TOKYO STORE クリスマスディスプレイ

卵はスウェーデン語でなんていうんでしょう ── と岩間さん

最後にもう一つ自分から。ARTEK TOKYO STORE で設計事務所 ima によるクリスマスディスプレイを見ることができます。お店の入り口にはスツール60を使ったツリー、地下への階段を降りると正面にもツリーが。アールトのパーテーション(100 Screen)を模したダンボールとガムテープの間仕切りも、おぉ、なるほどといった感じで、クリスマスらしいあたたかい雰囲気に包まれていました。

そして新しい照明「コリ」の発売を記念したオンライントークを試聴しました。前半は ima によるクリスマスディスプレイを紹介、そして後半は「コリ」をデザインしたスウェーデンのTAFからスタジオの様子と製品についての紹介がありました。

白色と黄色の二色展開である「コリ」。その理由はなんと卵の白身と黄身。塗装がマットなのも卵の殻をイメージしたからだそうです。傘を変えたりすることでいろいろな場面で使用できるようにしているそうです。ちなみに卵はスウェーデン語で「ägg」。

ハ:コリは籠ですね。
ミ:そうですね。
イ:スウェーデン語ではなんていうんでしょう?
ハ:korg、同じくコリみたいです。
ミ:コリ、コリゥ、コル、コウ‥‥
ハ:笑(突然、スウェーデン語の発音教室のように‥‥)


── どんな言葉でもそれをどう感じるかは自分次第。相手をどれだけ信じられるかということなのかもしれない。言葉の裏にあるのは自分の心だけだよ。それでは今回はこの辺で、次回もお楽しみに。

text + photo : harada

#138|Fly Me To The Moon (In Other Words) – Diana Panton