#051 母なる自然の子どもたち

今日は朝からとても良い天気です。そろそろソメイヨシノの蕾も色づいてきました──

Moi!フィンランドをもっと好きになる51回目のレポートをお届けします。メニューはこちら。

+ カイヤ&ヘイッキシレン
+ カルヤランピーラッカ
+ 北欧から考える未来の暮らし
+ ミンナカンティンカック
+ 日の出/日の入り


カイヤ&ヘイッキシレン

今週はまず岩間さんの報告から。表参道のアルスギャラリーにて本日3月20日まで開催されていた写真展【日本の文化を尊重したフィンランドスタイル〜カイヤ&ヘイッキシレン】で注目した3つのポイントについて。

シレン夫妻の建築でもっともよく知られているのが、エスポーのオタニエミ工科大学(現アアルト大学)のキャンパス内に建てられたオタニエミ礼拝堂。その礼拝堂の映像をギャラリーで観ることができたそうです。

©︎mihoko-san
©︎mihoko-san

床から腰壁までのレンガ、天井の木材、そして大きなガラス窓。その窓の向こうには大きな十字架があり、森へと続いています。レンガの土、頭上の木、そして広がる森。自然の中にいることを改めて感じさせてくれるような建築でいつか実際に訪れてみたいと岩間さん。

2つ目が軽井沢と北海道で建てられたゴルフ場のクラブハウスについて。両方ともすでに閉鎖されているのですが、岩間さんが調べたところによると軽井沢ゴルフクラブは庶民には敷居が高い場所だったとか。

ちなみに北海道の大沼ゴルフクラブの建物自体はまだ残っています。取り壊されてしまう前に見にいってみたいと本展示会のキュレーター、フランスアウティオさんも言っていました。

そして3つ目は、シレン夫妻が軽井沢のレストハウス「ウツヨキ」の設計依頼を受けた際のエピソード。ウツヨキとはフィンランドでもっとも北にある町の名。

この「ウツヨキ」という命名を希望したのはクライアント側で、フィンランドからトナカイを連れてくるという構想もあったそうです。1970年代当時の担当者のフィンランドへの熱量は、ぼくらと同じだねと岩間さん。


カルヤランピーラッカ

次の報告はみほこさん。18日金曜日に配信した「お茶べり会3月の巻」では、JuhlaTokyoのMaijaさんをゲストにとても楽しい話を聞かせていただきました。ゆかさんも、楽しかったです!夜中にお腹が空いて困りましたが、と。

そのMaijaさんの作るメニューの中で、みほこさんがとくにおすすめというカルヤランピーラッカ。現在「カルヤランピーラッカ強化月間」ということで、さらにくわしい情報を教えてくれました。

まずEUでは、各国各地の伝統的な食材や料理についての登録制度を設けています。カルヤランピーラッカについては、そのレシピに関して、ライ麦粉50%以上であること、ミルク粥・じゃがいも・穀物のお粥であることといった基準があります。ちなみに、フィンランドで登録されているのは、カルヤランピーラッカと、クオピオ地方のカラクッコ(kalakukko)、蒸留しない伝統的な製法でつくるサハティ(Sahti)というビールの3つ、とのこと。

カルヤランピーラッカを作ってみたいという方は、みほこさんが信頼するフィンランド版『暮しの手帖』といった趣のKotiliesiのレシピでどうぞ。

▶︎ カルヤランピーラッカのレシピ|Kotiliesi

金曜日の配信の中でMaijaさんより、お店で予定しているサーミブレスレッドのワークショップや、お隣、養源寺でのヨガ教室についてのご案内もありました。ぜひMaijaさんに会いにJuhlaTokyoへお出かけください。

また伝統食登録に関して、みほこさんが補足説明をしてくれました。

EUの伝統食登録には、生産、製造等すべて一定の地域で行わなければいけないという、厳しいカテゴリーもあります。例えば「ラップランドのトナカイ肉」と謳う場合は、ラップランドで育成したトナカイで、ラップランドで解体し、ラップランドで製造までしたものでないと使えないようです。

このカテゴリーに登録されている世界的に有名なものでは、フェタチーズ(ギリシャ)、ゴルゴンゾーラチーズ(イタリア)などが並んでいます。ドイツには、特定の地名がついていて生産地限定されているジンジャークッキーとマジパンがありました(おそらく超有名なのだと思いますが)。びっくりです。


北欧から考える未来の暮らし

そして自分の報告は、昨日(3月19日)聴講した東海大学の公開セミナー『北欧から考える未来の暮らし』について。オンライン配信もあったのですが、うっかり現地参加の申し込みをしてしまい、一路高輪キャンパスまで。

まず最初に基調講演として、駐日ノルウェー大使のインガM.W.ニーハマル氏による「ジェンダー平等と持続「可能性」がありました。

その後、北欧各国から登壇者があり、フィンランドからはビジネスオウル日本担当シニアアドバイザーの内田貴子氏、VRを手掛けるZOANJAPANのポール・ヤン氏の話を聴くことができました。内田さんについては、アンドフィーカのYouTube番組「フィーカの時間」にも登場されていますので、ぜひ。

▶︎ 北欧スペシャルトーク「フィーカの時間」

今回いちばん興味を惹かれたのが、ルイスポールセンジャパンの荒谷真司氏と東海大学名誉教授の織田憲嗣氏による「デザインと暮らし」をテーマにした話。

太陽の高度が低いことで斜めから光が入ってくる北欧の家では、光を反射させるため天井や壁を白くすることが多いそうです。また冬には、日照時間の短さから照明が活躍する時間が長くなります。以前からポール・ヘニングセンはどうしてグレア(まぶしい光:彼のPHランプは、光源が見えないようにデザインされている)をあれほど嫌ったのだろう?室内が暗かったなら、部屋中とにかく明るくすればいいのではないかと考えていました。

ですが今回、自分の認識が間違っていたことに気づかされました。

北欧では、部屋の明かりを分散させることで空間の広がりを感じたり、夏の明るい夜にもキャンドルを灯したりする(ブルーピンクの空にオレンジ色の火がとてもよく映える)そうです。それらはただ明るければ良いというのではなく、北欧で暮らす人たちが光というものに対して、より美しさや心地よさを求めていたからだったのかと。

また北海道からZOOMで参加されていた織田教授には「ODACOLLECTION」なるものがあることを知りました。上川郡東川町のせんとぴゅあという施設では、個人で収集された北欧の家具コレクションが常設展示されています。またサイトにもデジタルアーカイブがあるので、ぜひご覧になってみてください。

ハ:コレクションほんとにたくさんあって、椅子が1,350脚とか…。
ユ:えぇ、そんなに!
イ:織田コレクション有名ですね。北欧に興味を持った最初のきっかけが「椅子」だったので著書も読んだことがあります。
ハ:いつか東川町行ってみないといけませんね。
イ:ついでに、シレンの大沼ゴルフクラブにも行かなくちゃ、笑。


ミンナカンティンカック

いつものように時間配分がうまく行かず困っていたら、ゆかさんが「ミンナカンティンカック|MinnaCanthinkakku」について話してくれました。

ユ:昨日はミンナカントの日でしたが、ミンナカンティンカックって知ってますか?
ミ:ミンナ・カントの日は大切な日ですね。
ハ:ところでどんなケーキですか?
ユ:茶色いケーキ。
ハ:ん、茶色?
ユ:黒糖シロップにジンジャーやオレンジピールの入ったスパイシーなケーキらしいです。
ミ:ミンナカンティンカックという名前は知りませんでしたが、食べたことはありました、笑。

ミンナ・カント(1844-1897)

フィンランドの劇作家、小説家。代表作『労働者の妻』をはじめとした著作などを通して女性の権利を擁護しました。

彼女の誕生日である3月19日は「ミンナカントの日/男女平等の日|Tasa-arvon Päivä」として旗日になっています。

ミンナカンティンカックは、35歳で未亡人となったミンナが7人の子どもたちのために作ったレシピのようです。

我こそはという方は、ゆかさんが見つけてくれたレシピでぜひ作ってみてください。感想もお待ちしています。

▶︎ ミンナカンティンカック|Kotiliesi


日の出/日の入り

最後に明日は春分の日ということで、みほこさんよりフィンランドの日の出日の入りを教えてもらいました。

6:36 18:49 Helsinki
6:18 18:33 Rovaniemi
6:12 18:29 Utsujoki
5:45 17:52 Tokyo

日の入りに関してはすっかり日本よりも伸びているフィンランド。次回の配信(3月27日)は、ちょうど夏時間に切り替わるタイミングとなりますとみほこさん。


── すっかり春らしくなってきましたが、桜が咲くとまた実感がわくものです。昨日は久々に外出したためか、帰り道、土砂降りにあいました。母なる自然は厳しいです。それでは今回はこの辺で、次回もお楽しみに。

text:harada

#051|Mother Nature’s Son – The Beatles