#005 走る 走る 走る

このひと月めずらしく天気に恵まれているため、いつも自分は近所にある森から参加しています。森?と疑問に思われる方もいらっしゃると思いますが、入り口の看板に「森」と書いてあるので ──

Moi!フィンランドをもっと好きになる5回目のレポートをお届けします。メニューはこちら。

シマ
ティッパレイパ
やかんコーヒー
ルバーブ


シマ

さて今回のテーマは、前回に引き続きフィンランドでメーデー(Vappu)の頃に飲まれる「シマ」と森の中など屋外でも楽しまれている「やかんコーヒー」についてです。

そもそもメーデー(労働者の日)という行事がよくわかっていないのですが、フィンランドでは若者たちが白い制帽をかぶって街へ繰り出し、公園や広場でお酒や飲んだりお菓子を食べたり、ピクニックを楽しんだりするそうです。

おじさんもかぶっていますね(ヘルシンキ、2006年:Wikipediaより)

というわけで先週Mさんに教えてもらったレシピを参考にシマを作ってみました。みなさんの作ったものと比べるとずいぶん色が薄かったのですが、黒糖やブラウンシュガーの代わりに三温糖を使ったためのようです。

爽やかなレモンとチリチリとした微炭酸のような飲み口でさっぱりしていて美味しかったです。しかし初めて飲んだので正解かどうかわかりませんでした、と感想をいうと、Mさんから名言をいただきました。

── 色でも味でもなく自分で作ったもの、それが『シマ』です!

シマで気をつけるのは作り方よりも飲み方だそうです。イーストを使用するため、あまり飲み過ぎるとお腹の中で一日中、運動会が開催される(お腹の中でもぽこぽこと発酵が続く?)ことになったりするので注意。

Mさんの知り合いのフィンランドの方がシマを作って置いておいたところ、ぶわーっと吹き出してしまったそうです。イーストおそるべし。

Yさんは、以前にもシマを作ったことがあるそうで、今年はフィンランド語クラスのレシピと「北欧のおやつとごはん」というウェブサイトのレシピ、Mさんのレシピを参考にしたとのこと。

そして砂糖にはフィンランドのファリーニソケリ(Fariinisokeri)というブラウンシュガーを使ったそうです。本格派です。おとなりのお手製ムンッキ(Munkki:パン生地を揚げたフィンランドのドーナツ)も美味しそうです。

かつてカフェモイが荻窪にあった頃、フィンランド語教室に通っていた生徒さんが近くの古いパン屋さんで素朴な揚げパンを見つけたそうです。それがとてもムンッキに近い仕上がりで、なんとかしてその生地の中にカルダモンを入れられないかと思案したというIさんのエピソードも。


ティッパレイパ

またメーデーに食べるお菓子に、ティッパレイパ(Tippaleipä)というものがあることを教えてもらいました。穴あきオタマや絞り器などで生地を油に流して(落として=ティッパ)揚げるそうです。

IさんやYさんが言葉を濁しつつ「脳みそみたいな」と言っていたので、かき揚げみたいな感じかなと想像していたのですが、カリントウみたいで(Mさん)、割って食べたりする(Yさん)というので、もしかしたらチュロスみたいな感じかなあと考えていました。

当たらずも遠からず?(ティッパレイパ:Wikipediaより)

揚げるのに手間がかかるのと、意外と歯応えがあって食べるのもたいへんなためか、Vappuの時以外にはほとんど食べられないそうです。


やかんコーヒー

そして話題は、やかんコーヒーへ。

Mさんが講師しているフィンランド語講座「フィンランドのユーモア小説を読む」の課題図書である『おとぼけ爺さん ぼやき三昧(仮邦題)』の中にこのやかんコーヒーが登場し、生徒の方にやかんコーヒーについて説明するという出来事があったそうです。

フィンランドのスーパーなどでは、通常のドリップ用とは別にやかんコーヒー用の豆というのが販売されています。パッケージにその表記があるものの味にはほとんど変わりなく、やかんコーヒーの方が若干粗挽きであるくらいの差だそうです。

Iさんによると、かつてコーヒーを淹れるのに多くの人がパーコレーター(コーヒーを抽出し、粉を濾すための器具)を使っていたそうです。フィンランドデザインの中でも人気のあるアンッティ・ヌルメスニエミのポットにもこのパーコレーターとしての機能があるように、多くのフィンランドの人たちにずっと親しまれてきたため、現在でもこうしてコーヒーをやかんで淹れる文化が生き永らえているのではないか、とおっしゃっていました。

アンッティのポットには2種類あり、小さい方にパーコレーターの器具が入っているそうです(写真はWikipediaより)

ちなみにやかんコーヒー用のパッケージに描かれている「やかん」そっくりのやかんを(ややこしくてすみません、笑)お持ちのMさんが写真に撮ってくれました。

©︎mihoko-san
味わいがあってかっこいい

ルバーブ

ここでIさんが Instagramで見かけて気になっていたというルバーブのシマを作られていたCさんに途中参加していただきました。

ルバーブは蕗のような植物で、ジャムやお菓子、ジュースなどに使われる酸味に特徴のある野菜です。葉には毒性があるため、その紅い軸の部分を食用にします。加熱すると簡単に溶けてしまうらしいです。

以前カフェモイでお手伝いしていた時「りんごとルバーブのパウンドケーキ」というメニューがあり、ルバーブってなんですか?と尋ねられ、実物を見たことがなかったので説明に困ったことが何度かありました。

Cさんがルバーブのシマを作るのに参考にされたのが『ムーミンママのお料理の本』のレシピ。ルバーブによる薄ピンクの色がきれいで、生姜を加えたので、ジンジャーエールのような味わいだったそうです。こちらも作ってみたいです。

またIKEAのキャロットケーキが意外と美味しい(ブラウンシュガーが肝だそう)、やかんコーヒーの話題からラップランドの煮出しコーヒー「レンメルコーヒー」の情報をいただきました。

最後にIさんから、映画「かもめ食堂」のアソシエイトプロデューサー森下圭子さんのお話がありました。フィンランドの人たちが森をたいせつに思っていることがよくわかる、とても素敵な、そして個人的にも好きな話です。

うまく話せないので機会がありましたら、直接Iさんに聞いてみて下さい、笑。3本の木があるだけで、そこは森にもなる。新しいMoiのロゴにはそんなおもいも込められています。


── すこしあたたかくなってきて早起きの人が増えてきたのか、ときどきジョギングの人たちが走って追い抜いて行ったりします。配信開始までベンチに座って待っているときにも、気持ちよさそうに大声で歌いながら走ってくる人がいました。振り向くと目が合ってしまい、恥ずかしそうに走り去って行きました。それでは今回はこの辺で、次回もお楽しみに。

text : harada

#005|Run Run Run – The Velvet Underground & Nico