初めてのフィンランド料理:サーモンスープ編

みなさん、こんにちは。朝晩はすっかり冷え込んできましたね。こんな季節には温かいスープがいちばん、というわけで「11月の深堀りフィンランド」番外編として、フィンランド料理を作ってみよう!というコーナーが始まりました。シリーズ化されるかどうかはもちろん今回の料理の出来次第?です。

みなさんの中にもフィンランド料理を作ったり、習われたりされている方がいらっしゃると思うのですが、そのお話を聞くたびに食べてみたいなあ、もしくは作ってみたいなあという気持ちが湧いてきていました。なかなか外食する機会も少ないのでこの際自分で作ってしまおうということに。

記念すべき第1回目のメニューは、Lohikeitto(サーモンスープ)です。

ちなみに普段から料理をつくる方なのでそれほどおかしなことにはならないはず。ですが、サーモンスープというものを食べたことがありません。そこで料理が出来上がったところで岩間さんに試食してもらい、その出来栄えを判定してもらおうという企画です。

判定方法は星の数で、☆もうすこし/☆☆普通/☆☆☆おいしい。

料理のレシピは、基本的にフィンランド語で書かれたものをなんとか訳して(危険な香りがしてきます、笑)作りたいと思います。近くのお店で手に入れづらい材料に関しては代わりのものを使用します。

今回のLohikeittoは写真の見た目が美味しそうだった、フィンランドの乳製品メーカー「Valio」のレシピで作ります。

▶︎ Lohikeitto|Valio

それではさっそくレシピの確認(意訳)をしていきましょう。


Lohikeitto

フィンランドのサーモンスープは手軽な家庭料理であり、おもてなしの料理としても人気があります。クリームチーズを加えるととても濃厚なスープになります。本場のライ麦パンと一緒にお召し上がりください。少し手を加えるだけで、魚の背骨スープ(kalaseljanka)にもなります。その場合、生クリームの代わりにディル風味のクリームチーズを使って酸味を加えましょう。

Valmistusaika 調理時間:合計25分
Vaikeustaso 難易度:料理愛好家クラス

Ainekset (4annosta) 材料(4人分)

ジャガイモ         2~3個(250g)
細切り野菜(玉ねぎ・人参) 1袋(250g)
水             600ml
ローリエ          1,2枚
オールスパイス       4粒
鮭の切り身         500g
Valio3種のチーズクリーム   1パック(250ml)
塩             小さじ1/2
ディル           1/2dl(適量)

kasvissuikaleitaは短冊切りされた野菜パックのようです。検索した画像を見た感じ、玉ねぎ、人参、ズッキーニ、パプリカなどだと思われます。ご存じの方いらっしゃいますか?実は、岩間さんからも秘伝のサーモンスープレシピをいただいているのですが、そちらを参考に玉ねぎと人参を使うことにします。

ディルの「1/2dl」というのがよくわかりません。記号「dl」はデシリットルなのですが、ディルが1/2デシリットル?もしかしたら半束ということ?とりあえず適量でいきます。

材料で最後に重要なのが、Valio3種のチーズクリーム。おそらく近所のお店にはなさそうです。いろいろ他のレシピを見てみたところ牛乳や生クリームを使ったりしています。ここで再び岩間さんのレシピを確認してみると乳製品を使用していません。そこで今回は手に入れやすい牛乳を代わりに使いたいと思います。

OHJE調理方法

① ジャガイモの皮を剥き、サイコロ状にします。ローリエとオールスパイスを加えて水で野菜を茹でます。
② 骨を取り除いた魚の切り身を四角く切ります。
③ 沸騰してから5分待ちます。
④ クリーム(牛乳)と塩を加えて、沸騰させます。刻んだディルを加え、味を確認します。
⑤ ライ麦パンと一緒にどうぞ。

LOHISELJANKA(ロヒセルヤンカ)は、Valioフレーバークリームチーズの代わりに、Valioヴィオラクリームチーズ1箱(200g)を使用する。クリームチーズはスープに酸味を加えます。完成したスープに加え、混ぜながら煮込みます。

こちらも、最初の説明に出てきた「kalaseljanka」もきっとサーモンスープのヴァリエーションなのでしょう。


Lohikeittoとは?

みなさん、こんにちは。美味しい料理を作るためにはその料理のことを知らなくては。そこで今回は「はじめてのフィンランド料理:サーモンスープ編」その2として、そもそもLohikeittoってどんなスープ?というところを調べてみることにしました。さっそくネットで検索してみると、ずらりと並ぶのはサーモンスープのレシピ。レシピはもうすでに決まっているので、Lohikeittoの情報を探します。

Taste Atlas

そこでまず最初に見つけたのが、Taste Atlasという料理サイト。

Lohikeittoは、クリーミーなフィンランドのサーモンスープです。スウェーデンではLaxsoppaと呼ばれています。サーモンの切り身のほか賽の目に切ったジャガイモと人参を、魚の出汁とクリームを加えたバター風味のスープで煮込むのが伝統的です。ディルでたっぷり風味づけし、レモンをひと切れ添えて、バターを塗ったライ麦パンと一緒に。冬にぴったりの料理です。

▶︎ Lohikeitto|Taste Atlas

ふむふむ、魚の出汁。前回紹介したレシピでは、ハーブのみでダシになるようなものがありません。こっそり別のレシピなどを調べてみるとコンソメを入れていたりするものもあり……いや、ここは鮭からダシが出るのを信じるしかないのでは?!というわけで、レシピの手順1と2を入れ替えます。まず鮭を煮てから、その煮汁で野菜を茹でることにします。

ちなみにこのサイトには「世界一のサーモンスープ|The best Lohikeitto in the world」という項目があり、ヘルシンキのウッランリンナ地区にある老舗レストラン・シーホースのサーモンスープが選ばれていました。こちらシーホースは、7月の深堀りフィンランド「フィンランド遠足」でetsuroさんに紹介していただいたことがありました。

Wikipedia

次はやはりウィキペディアを調べてみましょう。

あれ?とても短い。そしてフィンランド語のページがありません。サーモンスープってフィンランドでは誰もが作る家庭料理だったのでは???まずは訳してみましょう。

クリーミーなサーモンスープは、フィンランドや北欧諸国の一般的な料理です。鮭の切り身や茹でたジャガイモ、長ネギが入っています。熱々のスープにはディルを加えます。この料理には牛乳を使うかどうかについての議論があります。生クリームの代わりに牛乳を使ってもよいが全乳でなければなりません。

▶︎ https://en.wikipedia.org/wiki/Lohikeitto

長ネギ……、牛乳を使うべきか使わざるべきか……。新たな謎が浮かび上がりました。レシピを再度変更して、牛乳ではなく生クリームを使うことにします。

それにしてもLohikeittoの項目。しばらく悩んでいると前回の記事の”kalaseljanka”を思い出しました。もしかしたらkala(魚)をつけて”kalakeitto”ってあるんじゃない・・・?あ、ありましたカラケイット(魚スープ)!

Kalakeittoは、魚とジャガイモ、そのほか野菜などの材料を使ったスープです。Kalakeittoによく使われるのは、パーチ(スズキ)、サーモン、セイス(シロイトダラ)など、またカワメンタイも好まれます。フィンランドでは毎年2月の第2火曜日を「Kansallinenkalakeittopäivä(国民的魚スープの日)」としてお祝いしています。

▶︎ https://fi.wikipedia.org/wiki/Kalakeitto

この日がお祝いされるようになったのは2018年からということでフィンランドで浸透しているかどうかは謎です。

Suomi Syö ja Juo

そしてカラケイットの歴史についてのページを見つけました。

Kalakeittoのルーツを探るのはとても大変なことです。18万以上の湖のあるフィンランドでは、最初にやってきた人々の鍋には当然魚が入っていた違いありません。また昔の料理本には、レシピに魚の名前が載っていませんでした。冬にはカワメンタイ、春にはパーチ(スズキ)、秋にはニシンというように季節ごとにとれる魚が違っていたからです。Kalakeittoは最高の季節料理なのです。

ということなので、Lohikeittoも季節のKalakeittoとして作られてきたのでしょう。やはり旬にいただくのがいちばんの贅沢なのかもしれません。鮭の旬は9月から11月。サーモンスープを作るなら今です!


本場のライ麦パン

前回のレシピを訳しているとき、気になる一節がありました。

「本場のライ麦パンと一緒にお召し上がりください」・・・本場のライ麦パン。とすると、

行ってきました、ライ麦ハウスベーカリー。鎌倉です。

「今度Lohikeittoを作るのですが、おすすめのパンはありますか?」とお聞きして教えていただいたのが、こちら。

溶岩直焼きレイカレイパ(右)/ライ麦パン型焼きプレーン(左)

溶岩直焼きレイカレイパは、サワー種を使用したライ麦100%のパン。丸い形は保存食として吊るされていた名残りだそうです。しっかりとした焼き上がりなので、ロヒケイットにつけて食べたりするといいですよとアドバイスをもらいました。

ライ麦パン型焼きプレーンは、レイカレイパに比べるとソフトな焼き上がり。バターにチーズ、キュウリをのせてオープンサンドイッチにどうぞとおっしゃっていました。こちらもライ麦100%でサワー種を使用。

これでLohikeittoを作る準備はばっちりです。実際の料理は11月27日(土)に行う予定です。その模様は次回お伝えしますので、お楽しみに。


Lohikeittoを食べたくなったら

ここで、Lohikeittoを食べられるお店をご紹介します(アイウエオ順、2021年11月現在)。

  • イッタラカフェ (表参道)
  • Cafe Aalto Kyoto (京都)
  • Cafe Sucre (佐倉)
  • kielotie (荻窪)
  • Keitto Ruokala (四條畷)
  • kokoticafe (名古屋)
  • SaunaLab (神田)
  • 那須フィンランドの森 (那須)
  • poro珈琲 (横浜)
  • Mikon Finland Shop & Cafe (江戸川)
  • ムーミンカフェ
  • ロバーツコーヒー

このお店のLohikeittoが美味しかった、こんなお店でも出しているよ、など情報をお持ちの方がいらっしゃいましたら、ぜひ教えてください!


Lohikeittoをつくろう

みなさん、こんにちは。今回は「はじめてのフィンランド料理:サーモンスープ編」その3。ようやくLohikeittoを作ります!

土曜日、aamukahviが終わってすぐサーモンを調達するため、近所の魚市場(倉庫を店舗にした大きな魚専門店)へ向かいました。ちょうどノルウェー産のサーモンがあったのでとても幸先の良いスタートです。他の材料は前日までに準備していました。

ここで再び材料のおさらい。実際のレシピとはすこし変わっています。

サーモンスープ

ジャガイモ   3個
玉ねぎ     1個
人参      1本
水       1000ml
昆布だし    1本(粉末)
ローリエ    2枚
オールスパイス 適量
鮭の切り身   500g
生クリーム   1パック(200ml)
塩       適量
ディル     適量

オープンサンドイッチ

ライ麦パン   1個
チーズ     1個
きゅうり    1/3本
バター     適量
マーマレード  適量
ディル     適量


Moiオフィス(岩間さんのお宅)にお邪魔して、さっそく調理開始。まずは野菜の皮むきを岩間さんに手伝ってもらい、適当な大きさに切ります。うちで使っている包丁と違い、とてもスイスイ切れるので料理が上手くなったような気分がします。

自信がなさげに「大きさはどれくらいですかね?」と聞いてみるものの「シェフの好きなように、笑」と岩間さん。じゃがいもは16等分、人参は乱切り。玉ねぎはくし切りにすればよかったなあと思いつつ…。

元のレシピを確認するとじゃがいもはサイコロ状でした

岩間さんの助言により、サーモンは水洗いしてキッチンペーパーで水気を取ります。ここでサーモンの皮はどうしようかと悩むシェフ。無理に取ると実がほぐれてしまいそうなので茹でてから取ることにしました。鍋を用意してくれた岩間さんが「水はどのくらい」というので「えっと、500mlお願いします!」(レシピでは600ml。うろ覚えなのがバレバレです)

余分な脂を落として生臭くならないように

あれ? 見たかんじ少なそう・・・というわけで急遽1,000mlにしました。さらにmumskakaさんのアイデアを参考に昆布だし(きちんと昆布でとらず、すみません)で食べやすい大きさに切ったサーモンを茹でます。ここですかさずアクを取ってくれる岩間さん。シェフ、しっかり!!

グツグツ煮ること、20分くらい

火の通ったサーモンを一度取り出し、その煮汁で野菜を茹でます。ここですかさずローリエと塩を投入。たまたま家にあったオールスパイスは粉末だったので、すこしあとで入れることにします。またここでもアクを取ってくれる岩間さん、素晴らしいアシスタント!

茹でているあいだにサーモンの皮とすこし残っていた骨を取ります。慎重に慎重にと、なかなか地味な作業。

注ぎながら写真を撮るのはなかなか難しいです

野菜に火が通ったところで鍋にサーモンを戻します。味見してみると薄く感じたので塩を少々。生クリームを1パック入れて、美味しくなることを祈ります。ひと煮立ちさせている間に、パンの用意を。

チーズの厚みにムラがあります。ご愛嬌ということで

レイカレイパ(上)はすこし硬めなのでLohikeittoにつけて食べます。プレーンのライ麦パン(下)は、ライ麦ハウスベーカリーで教えてもらった通り、たっぷりとバターを塗った上にチーズと輪切りのキュウリをのせて。「すこしディルをのせてみたら?」という岩間さんのアイデアをすかさず採用します。

写真を撮り忘れてすこし冷めていますが、混ぜると白いです

刻んだディルを加えて、最後に塩とオールスパイスで味を整えます。Lohikeitto完成です!!


冷めないうちに岩間さんに試食してもらいました。とてもにこやかな感じですが、スプーンでひと口、岩間さん・・・「ん?」

なんとサーモンに大きな骨が、本当にすみません!

「本物のLohikeittoと比べて味はどうですか?」とつめよるシェフに「なかなか美味しいです」と優しい岩間さん。胸をなでおろしながらも、分量などを守らずかなり適当な作り方だったので、もう一度同じように作りなさいと言われても、きっとできないだろうなぁとシェフ。

キュウリの代わりにマーマレードジャムも美味しい

というわけで「はじめてのフィンランド料理〜サーモンスープ編〜」いかがでしたでしょうか?反省点としては具がすこし大きすぎたこと、そしてディルをもうすこし多めにすればよかったかなということです。それでもなかなか美味しくできたと思うので、またつくってみようと思いました。

みなさんも今日の夕ごはんにLohikeittoはいかがでしょうか。ぜひお試しください!

text + photo: harada