joensuun laulujuhlat

このレコードは、いまからちょうど40年前、1983年の夏におこなわれた「ヨエンスー・ソングフェスティバル」の実況盤である。

ヨエンスーはフィンランドの東部、カレリア地方に位置する中心都市で、湖と森に覆われたその土地はしばしばフィンランドの人びとにとっての《原風景》といわれたりもする。土地のもつそうした性格を反映してのことだろう、この「ヨエンスー・ソングフェスティバル」では、ジャンルにこだわらず、フィンランドであったり近隣の国であったりのその土地にねざした作品を積極的にとりあげているようだ。

たとえば、いま手元にあるこのレコードでは、1983年の「ヨエンスー・ソングフェスティバル」からふたつのコンサートのハイライトが収録されている。

片面に収められたのは、いわゆるクラシックの演奏会の模様だ。登場するのは将来の活躍が期待されるフィンランド出身のふたりのオペラ歌手。バスのマルコ・プッコネンはチャイコフスキーの歌曲のほか3つのジプシーの歌を、いっぽうソプラノのマルガレータ・ハヴェリネンはフィンランドの作曲家メリカントの歌曲を披露している。なかでもメリカントによる“すすり泣く笛”のメロディーは、フィンランド好きならきっと一度はどこかで耳にしているのではないか。

そしてレコードのもう片面に収められたのは、フィンランドの民族楽器「カンテレ」によるアンサンブルの演奏だ。カンテレはツィターをより簡素にしたような弦楽器で、そのひなびた音色は鳴るというよりはささやく、あるいは語るといったほうが似つかわしい。ここではいわゆる民謡からモダンな楽曲まで、わずか8曲とはいえカンテレの響きがもつさまざまな表情をあますところなく伝えてくれる。

演奏者のマルッティ・ポケラ、エーヴァ=レーナ・サリオラ、マッティ・コンティオというトリオはカンテレを現代に継承する優れたアンサンブルらしく、調べてみると多くの録音が残されている。音楽配信サービスで聴けるものもずいぶんある。とりわけマルッティ・ポケラの作曲による“白鳥の踊り”が夢のようにうつくしい。とても気に入った。

ジャケットに使われたなんてことのない田舎道の写真もふくめ、この一枚のレコードをとおして飾らないフィンランドの人びとの心のうたに少しだけ触れえたような気がする。フィンランドみやげとしてこのレコードを選んでくださったMaijaさんに感謝。

joensuun laulujuhlat : https://www.instagram.com/p/Cx9k7-ePpgH/
text + photo : Iwama