aalto

そういえば、公開中の映画『アアルト』の話をまだ書いていなかった。

この映画について言えば、ふたつの点で印象に残っている。

まず、ひとつはアアルトが手がけた建築作品の数々をさまざまな角度から映像によって見ることのできるすばらしさ。見ることのできる作品はフィンランドにかぎらず、スイスやドイツ、それにアメリカなども含まれる。かんたんに現地まで行けない身にはありがたい。

もうひとつは、アルヴァ・アアルトと彼の妻(たち)との関係について。

この映画の宣材には、《名声の陰には、一人の女性がいた。》というコピーが付されている。

じっさい、この映画の前半を観れば、いかにアイノ・アアルトという女性が才気煥発なアーティストであったかということがよくわかる。アアルトの作風に突如あらわれる《飛躍》の秘密もアイノの存在によってほぼ説明がつく。

それにしても、アルヴァ・アアルトというひとはつくづく才能に恵まれた女性が好きだったのだなあとこの映画を観て思った。アイノがこの世を去った後、再婚相手として選んだエリッサもまたとても優秀なひとだったらしい。

しかも、アルヴァに対して驚くほど献身的という意味でこのふたりはとてもよく似ている。

それだけ、彼女たちもまたアルヴァの傑出した才能を見抜き、心底惚れこんでいたということだろう。そして、その才能を開花させることに格別なよろこびを感じていたにちがいない。

アイノとアルヴァとエリッサとーーーもしこの映画に副題を添えるとしたらこんな感じかもしれない。

アルヴァとアイノ、またアルヴァとエリッサとの関係については、ことあるごとにさまざまな憶測をもとに語られることが多かった。だが、この映画を観たことで、そこには互いに強い信頼と尊敬の念がはたらいていたことを理解できた気がする。

夫婦の関係については、だから、傍からどんなふうに見えようとも外野がうかつに口にすべきではない。彼女たちのサポートも含めての“アアルト”なのだから。

aalto : https://www.instagram.com/p/CzDbBJAP5tO/
text + photo : iwama