Aakkosetとは、フィンランド語でアルファベットのこと ──。
Moiのスタッフがそれぞれ思いつくまま自由に選んだフィンランドのことばから、ささやかな日常の風景をお届けします。
今回のアルファベットは【A】です。
ひとも、パンダも考える
意味はおなじでも、ことばはその国によって異なります。「考え」は、フィンランド語で「Ajatus」といいます。
一方、ことばと違って、なにかを考えるときにひとがとるポーズは、だれに教えられたわけでもないのにたいがいどこの国でも共通です。腕を組む。こめかみに人差し指をあてる。なかには、両手を頭に置きくるくる弧を描く(一休さん)など。
なかでも、顎を手にのせるポーズは、なにかを考えるとき誰もが無意識のうちにやっているしぐさでしょう。ロダンの彫刻「考えるひと」でもおなじみですね。
昨年(2020年)創業200周年を迎えたフィンランドのテキスタイルブランド「Finlayson(フィンレイソン)」には、手に顎をのせなにごとかを思案するパンダの姿をあしらった、その名も「Ajatus(アヤトス)」というパターンがあります。ポーズひとつで、愛くるしいパンダがどこか思慮深いタオの哲学者のように見えてくるのがふしぎです。
タオ(道)を説いた老子は、自然の理(ことわり)に身をまかせ、あるがままの姿で生きるありようを人間の理想的な生き方とし、それを「無為自然」と称しました。最近なにかと話題の「幸福度」にもリンクするようなことばですが、凡人がそんなふうに生きるのはそうたやすいことではありません。さて、どうしたものか。
気がつけば手に顎をのせ、深いため息をひとつ。思案はつづきます。
Ajatus = 考える
text : iwama
アタリとハズレ
Asun Tokiossa.
東京の外れに住んでいます。外れというだけあって、住んでいる町には駅がありません。最寄りといえる駅は3つありますが、いずれも30~40分ほどかかってしまいます。ということは、目的地へ向かうために往復1時間以上、余分にかかることになります。
これは困りました。
そこで普段は自転車を利用することにしています。半径30km圏内、都内ならばほぼ自転車で行きます、というといつも驚かれます。そのうち、東京のこの辺りにはなにがある、あの辺りまではこれくらいかかる、など自然とわかるようになりました。
それは住んでいる町が広がっていくことと同じような気がします。東京中が自分の町になるような。お住まいはどちらですか?と聞かれたら、こう答えようかと。
── 東京の辺りです。
Asua = 住む
text : harada