#064 降っても晴れても

夜中、降り続いた雨も上がり、森の中は空気が澄んでいて、とても気持ちのいい朝です ──

Moi!フィンランドをもっと好きになる64回目のレポートをお届けします。メニューはこちら。


小説『ルミッキ』から見る北欧ミステリー

今週のトップバッターは岩間さん。サラ・シムッカのミステリー小説『ルミッキ』(古市真由美訳/西村書店)を紹介してくれました。

「ミステリー小説の主人公には、天才的な頭脳の持ち主と、本人は関わりたいとも思っていないのに巻き込まれてしまう型とがあると思うけれど、この小説の主人公である女子高生ルミッキは明らかに後者」「ルミッキがコーヒー中毒であったり、サルミアッキやサウナなどが登場するので、フィンランド好きにはささるのでは」とのこと。

また「冬のフィンランドが物語の舞台なので、雪の白色と夜の黒色の描写が多いけれど、そこに入ってくる鮮やかな赤色が印象的。映像が目に浮かんで、とてもいい」と岩間さん。

ミ:こちらの作品は3部作ですけれど、続きも読みたいと思いましたか?
イ:スーパー高校生の冒険活劇でとても楽しめましたが、そこまでキャラが立っていない印象が。
ミ:第1作目のインパクトが強すぎましたよね。
イ:警察小説のしがない警察官など、北欧ミステリーでパッとしない主人公が多いのは、スター性を求めていないからかも。
ユ:事件が主役って感じですね。


文学サロン『水の継承者ノリア』と日本

次の報告は、ユカさん。フィンランドセンター主催の文学サロンに参加しました。

今回の課題図書は、SF小説『水の継承者ノリア』(末延弘子訳/西村書店)。ユカさんは刊行当初に読んだそうです。文学サロンではほぼ毎回、著者の方が登場されるのですが、今回もエンミ・イタランタさんが朗読をしてくれました。

現在イギリス在住のエンミさんに、ユカさんがこんな質問をしました――「フィンランド語だけでなく英語版でもご本人が書かれていますが、どんな順番で書かれるのですか?」

その答えは、なんと章ごとに交互に書かれているとのこと。フィンランド語で1章書いたら、次は英語で1章。その両方をチェック・整理して、次の章へ。日本語だけでもあたふたしている自分には考えられません、笑。

ミ:この小説はどんな時に読むのがおすすめ?
ユ:社会批判なども含まれている小説なので、そんな気分の時に、笑。

設定では主人公が茶人だという『水の継承者ノリア』ですが、もっと日本と関わりがある一冊といえば、ミア・カンキマキの『清少納言を求めて、フィンランドから京都へ』(末延弘子訳/草思社)。少し前に読了したというユカさんにいま枕草子ブーム(プチ平安ブーム)がやってきているそうです。

高校の古文の授業でしか触れたことがなかった『枕草子』の現代語訳、ミアさんが読んでいただろう英語訳のもの、イザベラ・ディオニシオ著『平安女子は、みんな必死で恋してた~イタリア人がハマった日本の古典』(淡交社)など。

ミ:読んでみてどんな印象を持ちましたか?
ユ:外国人から見た日本の古典や現代の日本を知ることができておもしろいですね。また清少納言を「セイ」とか「清姐さん」と呼ぶフラットな視線とかも。また『清少納言を求めて〜』は、2011年の震災当時のことがわかって興味深いです。日本語によるアナウンスしかほぼなく、フィンランドのニュースで情報を知ったりとか。
ミ:そうでしたね。当時から比べるとだいぶ日本も変わってきましたが。


istutのシナモンロールとmaika/kb’s bake

そして自分の報告です。istutのシナモンロールが土日に販売されるという情報を聞きつけ、国立のmaika/kb’sbakeというお店に初めて行ってきました。ひと月ほど前にオープンしたばかりの新店舗。

以前、三鷹で営業されていたmaikaは、食器や生活雑貨などを取り扱うお店で、kb’sbakeは、焼き菓子などのお店。店内でドリンクと一緒にいただくこともできます。

▶︎ maika / kb’s bake

ご店主Mさんのセレクトだと思うのですが、フィンランドや北欧のアイテムの他にも作家のガラス作品や布ものなど、ひとつひとつ眺めていくのも楽しい時間でした。kb’sbakeのマフィンやスコーン、コーヒーもすごく美味しかったので、ぜひ行ってみてほしいです(もし近所にあったら通いたいところです、笑)。

そしてもうみなさんご存知、istutのシナモンロール。これからも食べられる機会があるそうですので、どうぞお楽しみに!!

▶︎ istut

ハ:優しくてニコニコされていて、とってもいい方たちでした。いい方たちっていうのもおかしな言い方ですが。
ミ:そういうハラダさんの周りのニコニコが伝播していけば、いい世の中になりますね。
ハ:ありがとうございます!


フィンランド語講座説明会とEUフィルムフェスティバル

最後はミホコさんの報告。マトカトリでフィンランド語講座のオンライン説明会を開催しました。「10名ほどが参加してくれて、とにかくフィンランド語に興味を持ってくれるのがうれしい」とミホコさんは言っていました。

▶︎ フィンランド語講座|マトカトリ

そしてEUFILMDAYS2022の話題へ。「東京は6月23日までですが、6月21日からは京都府京都文化博物館で始まりますので、関西地方にお住まいの方はぜひ!」とミホコさん。フィンランドからは『TOVE/トーベ』が参加しています。

ユ:私はスウェーデンとデンマークの作品を観ました。今日はエストニア映画を見る予定です。
ミ:客席の様子はどうですか?
ユ:満席になることもありますね。

そしてミホコさんより、イッタラヴィレッジからのお知らせを。

6月23日午後8時30分にInstagramLiveが配信されます。お時間の合う方はぜひご覧になってみてください。今回もイッタラガラス工場の製作過程を見ることができるそうです。


おまけ:Fazer人気投票と今日の名言

少し時間が残っていたのでFazerのInstagramで開催されていた「チョコレートトーナメント」の投票結果が発表されたことをお伝えしました。

ミ:もう発表されているんですね。1位はなんでしたか?
ハ:なんだったと思いますか?
ミ:えーと、ミルクチョコレートですかね。
ハ:正解です(さすがです!

そして岩間さんからムーミンの物語から「今日の名言」が発表されました。

悩んでいるヘムレンさんにムーミンとスノークのお嬢さんがとったこんな一文。「二人は、おじさんが心の重荷をおろすときまで、尊敬の気持ちをこめて、そっとしておくことにしました」『たのしいムーミン一家』(山室静訳/講談社文庫)より

「悩んでいる人には、つい、励まそうとか、力づけようとかしてしまいがちですが、そっと回復を待ってあげることも一つの方法ですね」と岩間さん。


── 降っても晴れても、聞きにきてくれる方たちがいるおかげで続いているこのclubhosue。聞いて悩みが解決することはないかもしれませんが、ちょっとひと息ついてもらえたらうれしいです。それでは今回はこの辺で、次回もお楽しみに。

text:harada

#64|Come Rain or Come Shine – Bette Midler