金曜日、月食をみました。その前日の木曜日の夜、街角で出会ったおばあさんに「月がきれいだよ」と教えてもらうという出来事がありました。あのおばあさんは今夜も月を見ているかなあと想像しながら ──
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Moi!フィンランドをもっと好きになる34回目のレポートをお届けします。メニューはこちら。
+ フィンランド映画祭2021
+ キルシ・クンナス
+ 清少納言を求めて、フィンランドから京都へ
+ Aamukahvi
フィンランド映画祭2021
先週の土曜日から1週間にわたり渋谷のユーロスペースにて「フィンランド映画祭2021」が開催されていました。上映作品は、以下の5作品+1。
* ミスタイム|Neiti Aika(2019)
* 初雪|Ensilumi(2020)
* フォレスト・ジャイアント|Metsäjätti(2020)
* 笑いごと|Naurun varjolla(2020)
* エデン|Eden(2020)
+ マザー・アンド・ミルク|Äiti ja maito(2019 短編アニメーション)
今回は、すべての作品を観た!というゆかさんの報告から始まりました。
まず、ゆかさんがいちばん印象に残ったという「初雪」について。この作品はフィンランドの難民センターで暮らすイランから来た家族の物語。亡命申請を拒否されながらも毎日の生活を送る様子が描かれています。とてもやるせなかったとゆかさん。
そしてミーカ・ノウシアイネンの小説を映画化した「フォレスト・ジャイアント」。こちらは林業を営む会社の事業開発マネージャーである主人公が、リストラを行うため故郷にある工場へとやってくる話です。
みほこさんによると原作者のミーカ・ノウシアイネン(Miika Nousiainen)は、アナウンサーをしていたそうです。
最新作『Pintaremontti(内装工事)』は、実際の工事という意味だけでなく家族関係を見つめ直す人間ドラマになっているとのこと。まだ邦訳された書籍はないそうなので、いつか読めるようになることを期待しています。
この『Pintaremontti』については、北欧語書籍翻訳者の会のnoteでも紹介されていますので、ぜひご覧ください。マウリ・クンナスの絵本については先頃日本版も出版されましたね。
▶︎ 2020年刊行 フィンランドで人々の琴線に触れた作品から
そして、今後各地の映画館で上映されそうな作品はありましたか?とみほこさんから質問がありました。フィンランド映画祭は上映作品のプロモーションも兼ねているそうです。
とすると「ミスタイム」でしょうかと、ゆかさん。この作品は家財道具一式が残されたアパートに引越してきた監督のエリナ・タルベンサーリ(Elina Talvensaari)が、以前そこで暮らしていたおばあさんの人生をつきとめていくドキュメンタリー作品で、2021年のユッシ賞(ベストドキュメンタリー賞)を受賞しています。
田舎の建物を買うと以前の住人の荷物が残っていたりするそうです。みほこさんの友人も経験されたことがあるとか。ヘルシンキ大学で人類学や社会学を学んでいたという監督はこの映画を撮り終わった後、別の引越先にもおばあさんの荷物を持っていかれたそうです。
実は「フォレスト・ジャイアント」の上映後ロビーでゆかさんと初めて直接お会いしました。この配信だけでもすでに7ヶ月も続けているというのに、笑。岩間さんは「ミスタイム」を観てみたいと言っていました。今回の作品を観られる機会がありましたら、みなさんもぜひ。
キルシ・クンナス
そしてみほこさんの報告。今月8日、フィンランドの詩人・小説家・絵本作家のキルシ・クンナス(Kirsi Kunnas)が、96歳で亡くなられました。戦前生まれのキルシ・クンナスは戦後、子どものための詩集(ティーティアイネンの童謡集など)をはじめ様々な作品を書きました。また同時にマザーグースやルイス・キャロルなどの翻訳もされています。
言葉遊びなどが多い彼女の詩はフィンランド語が分からないと理解しにくいところもあるけれど、音韻やリズムで十分楽しめるとみほこさん。現在でもフィンランドの子どもたちに親しまれているはずと言っていました。
「言葉って大事、読むって大事、本って大事」といっていたというキルシさん。日本の佐藤さとるさんや松谷みよこさん、石井桃子さんらが考えていらしたことと通じるところがあると伝えればよかったと、配信後にみほこさんがいっていました。自分もみほこさんの話を聞きながら、石井桃子さんの岩波少年文庫をはじめとする海外の児童文学の翻訳やかつら文庫の運営などのことを思い出していました。
またキルシ・クンナスは『Moomin Voices』のフィンランド語詩もVexi Salmiと一緒に担当されているようです(スウェーデン語版からの翻訳)。
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フィンランド語といえば、みほこさんのフィンランド語講座。1月以降のスケジュールが発表になりました。マトカトリはオンライン、朝日カルチャーセンターはハイブリッドでの講座です。内容やご都合にあわせて、ぜひ!
▶︎ フィンランド語講座|マトカトリ
▶︎ フィンランドのユーモア小説を読む|朝日カルチャーセンター
清少納言を求めて、フィンランドから京都へ
みなさんから1ヶ月ほど遅れて、ミア・カンキマキ『清少納言を求めて、フィンランドから京都へ』を読みました。
著者が枕草子の一節をフィンランド語に訳したもの(おそらく英語版から)をさらに日本語に訳しているところがおもしろいと思いました。清少納言に共感して自身と重ねる著者の心境が表れているように感じたからです。
みほこさんから『枕草子』を読んでみようと思いましたかと質問があったのですが、岩間さんは「うーん…」、自分は「…現代語訳なら」。現代語訳ならたくさんありますよと、みほこさん。「がんばって読みます!」とつい言ってしまったので、いつか、そのうち、なんとか!
Aamukahvi
最後は、地下鉄でマリメッコのバッグを持っていた人を見かけたという岩間さん。このみほこさん発案のフィンランド浸透調査、みなさんされているでしょうか? いつか報告会などをしてみたいものです。
▶︎ nuotio|takibi〜フィンランドをもっと好きになる
そんな岩間さんからお知らせです。Moiのサークル「nuotio|takibi」では、来週27日(土) 朝9時からオンラインイベントを開催します。イベントといっても大げさなものではなく、あいさつを交わしたり、ちょっとおしゃべりしたり。タイトルはゆかさん考案の『Aamukahvi』。ご一緒に朝のコーヒーを一杯といった感じで集まっていただければと思います。もちろんみほこさんとゆかさんにも参加していただきます。できれば月1回くらいと岩間さんが言われたので、もしかすると続くのかも、笑。
もうひとつ、深堀りフィンランド番外編「はじめてのフィンランド料理」と題して、Lohikeitto(サーモンスープ)を自分が作ります。まだ一度もサーモンスープを食べたことがないのですが、岩間さんに毒味、じゃなくて、その出来を判定してもらいます。料理にあたって自分がフィンランド語を訳したレシピと岩間さん秘伝のレシピを参考にします。その様子をサークル内の記事として書きますので、お試しにでもご参加いただければと思います。
── 赤い月が、雲に隠れたりしながら満月へと戻っていきました。それはまるで夜空のスクリーンに映るとてもとても静かな映画みたいだなと思いながら眺めていました。おばあさんもきっと同じあの街角で。それでは今回はこの辺で、次回もお楽しみに。
text : harada
#034|Silent Movies – Hirth Martinez