Aakkosetとは、フィンランド語でアルファベットのこと ──。
Moiのスタッフがそれぞれ思いつくまま自由に選んだフィンランドのことばから、ささやかな日常の風景をお届けします。
今回のアルファベットは【K】です。
魔法の言葉
オートミールにハマっていると言うと、なんとなく健康に気を配っている人のように聞こえるだろうか。でも、じつは特にそういうわけではなく、たまたまある方からオートミールを頂いたのがきっかけである。しかも、フィンランドさんのオーツ麦(Kaura)を原料としたオートミール。
オートミールについていえば、お菓子に使われているようなものを除いて、いままでほとんど口にしたことはない。フィンランドでも食べた覚えはないし、正直なところ、食べようと思ったこともない。なんか鳥のエサっぽいよねとさえ思っていた。
しかし、「フィンランド産」と聞けばこれはやはり食べねばという気持ちになる。しかも、ご丁寧なことにパッケージにはフィンランドの国旗まで刷られている。だいたいフィンランドの澄んだ空気と明るい太陽に育まれたオーツ麦が原料なのだ。おいしくないはずがない。そうですよね。これはもうアイダホポテトとか、関サバみたいな話である。
そこで、恐る恐るオートミールを試してみたところ、いろいろアレンジをしたくなるような楽しさがあることに気づいた。はじめはシンプルに、「kaurapuuro|カウラプーロ」というミルク粥にしてシナモンシュガーをふりかけて食べていたのだが、コーヒーでオートミールを煮出してみたところ、これがカフェオレ仕立てになってなかなか美味しい。きょうは野菜スープにオートミールを入れ、カレー粉を足してリゾット風にしてランチにした。
オートミールに限らずだが、ひとこと「フィンランド」と付いているだけでそこまで疎遠だったものにもシンパシーが湧き、楽しめてしまうのは何てすごいことなのだろう。
きっと、ひとはそれを「恋」と呼ぶ。
Kaura = オーツ麦
text : iwama
熊が2番
好きな動物はなんですか? と聞かれたら、まずはオオカミ、2番目はクマ、と答える。
山道を歩いていて「熊出没注意!」の看板を見かけると、怖いなあと感じながらも会えたらいいなと、いつも思う。それでもやっぱり鉢合わせは困るから、ハナウタを歌ってみたり、音を立てて歩いてみたり。もちろん熊鈴は欠かせない。木陰でガサリっと物音がしたら、ビクッと身構える。日本では絶滅したはずのオオカミが今にも飛び出してきそうだから。
そもそもクマやオオカミのどんなところが好きかというと、どちらも神秘的な存在だし、人間なんてちっとも恐れていないようにみえるから。世界はヒトだけのものじゃないって、彼らの存在が教えてくれる。「街にクマが出た」。そんなニュースがあるけれど、森ではきっとクマたちがこう噂しているはず。「ヒトが森に入ってきた」。街がヒトのものだというのなら、森は当然クマのもの。
フィンランドからユーラシア、それから日本の北海道にかけて動物の分布に共通点があることを知っているだろうか。そう、たとえばヒグマとか。アイヌやサーミの方々をはじめ、クマと共存してきた人たちは、彼らをまるで神様の化身のように大切にする。畏怖の念や畏敬の念。これまでの慣わしや生活の知恵。自然という世界のルール。
一度だって野生のクマを目撃したことなんてないけれど、すぐそばの山の中に生きている、そんな事実があるだけでとても豊かな気持ちになる。
ところでどうしてクマが2番かというと、貯金箱にぬいぐるみ、絵本や物語の主役たち。クマはちょっと「人気」がありすぎるから。ヒトのいない場所がほら、1番落ち着くからね。
Karhu = 熊
text : harada