エスフィーファのメニューから「肉パン」が消えてしまったという《衝撃的なニュース》を知ったのはきょうのこと、京都に帰省していたNさんから教えられたのだった。
と、こんなふうに書いたところで、いったい何のことを言っているのかわからないという人もいるだろう。そこでちょっと説明をしておくと、「エスフィーファ」というのは京都にあるちいさな喫茶店のことで、くだんの「肉パン」というのはその店のいわば看板的存在のメニューである。この「肉パン」、イメージとしては揚げてないピロシキといった感じのもので、ブラジルでよくたべられているものらしい。そもそも「エスフィーファ(esfiha)」という店名からして、すでにこの「肉パン」のことなのだ。
ぼくがmoiをつくるとき、「こんな店をつくりたい」と心のなかで思い描いた《理想の店》がじつはこの「エスフィーファ」である。「ちいさな空間でひとりで切り盛りしている」とか、「大通りからすこし入った路地にたたずんでいる」とか、「いろいろなお客さんがやってくる」とか、「店内にちっちゃな電球がたくさん灯っている」とか、ちょっとした部分で共通するところもおおい。そんなわけで、「エスフィーファ」は「moi」にとって「心の師」、あるいは「頼れる兄貴」的存在のお店といえる。
そうして、その「エスフィーファ」にならってこしらえたメニュ-がmoiにはある。プッラ(フィンランド風シナモンロール)である。コーヒーのアテとして提供しているこの「moiのプッラ」は、じつはなにをかくそう「エスフィーファの肉パン」に影響されてメニュー化されたものなのである。もちろん、「エスフィーファ」にはほかにも「赤いグラタン」と「白いグラタン」という名物メニュ-があるし、コーヒーだってちゃんとしている。たとえ「肉パン」がメニュ-から消えてしまったとしてもお店としての魅力が消えてなくなってしまうというわけではない。それに、長年お店の「顔」として親しまれてきたメニューをなくすというのはそれ相応のやむにやまれぬ事情あってのことであろうから、外野がとやかく言うべきことではないとおもう。けれども、あの「肉パン」をもう口にすることができないのかとおもうと、やはりそれはとても淋しいことではある。
ところで《衝撃的なニュース》はもうひとつ、あった。「エスフィーファ」に新たなメニュ-が加わっていたというのだ。ごくすくない、けれども選りすぐりのメニュー構成を貫いてきたこの店だけに期待は高まる。で、そのあたらしいメニューというのは、カレーだった。食べてもいないのにこんなことを言うのもどうかとは思うが、「カレーはないだろ、カレーは!」、そう叫ばずにはいられない心境だ。とはいえ、そのこだわっているのかいないのかさっぱりわからない微妙さ加減がまたこの店ならではの魅力で、「いいよエスフィーファ」ってなるわけだけれど。こういうのって、倒錯の愛と呼ぶのでしょうか・・・?
フィンランドのシナモンロール、コルヴァプースティKorvapuustiが恋しいよぉ~、ということで、日本で理想のコルヴァプースティとめぐり会いたいっ、という企画です(そこはかとなく、ムリムリなネタづくり感が漂ってますが・・・)。
記念すべき最初のエントリーはこちらっ。言わずと知れた日光の老舗ホテル「日光金谷ホテル」ベーカリーのシナモンロールです。どうです、このかたち?けっこうイイ線いってませんか?そう、コルヴァプースティにはコルヴァプースティのかたちというものがあるんですね。ひとこと言わせていただければ、もっとギュッとつぶしちゃってくれよ、そんな感じですが。
さて、お味の方はというと、全体的にさっぱりしています。歯ざわりは、日本のシナモンロールとしてはしっかりしているほう。ただ、フィンランドのものとくらべると、よりきめ細かくおとなしい印象でしょうか。もうちょっとスパイスに暴れてほしい願望もありますが、老舗ホテルのベーカリーとしてはむしろこれくらいでちょうどいいのかも。サイトの商品紹介ページによると、金谷ホテルでは朝食に「シナモントースト」を提供する伝統があるのだとか。ちょっと行ってみたくなりました。
というわけで、moiでは「お気に入りシナモンロール情報」を随時募集中です。お心当たりのある方、ぜひご一報を!
ムリムリなネタづくりでこんな企画をスタートさせていたこと、うっかり忘れてました・・・。フィンランドのシナモンロール、korvapuustiに恋焦がれるあまり、日本でみかけたありとあらゆるシナモンロールを食べてみよう、というこのシリーズ、第二回目はこちらっ!荻窪ニュー・コーミヤのシナモンロールです。
パンやケーキも売ってますが、荻窪っ子のあいだでは「ソフトクリームの好味屋」として有名なお店です。で、こちらのシナモンロールなのですが、いわゆる「シナモンロール」のイメージとはずいぶんとかけはなれたルックスをしています。
「なんでも、外国に『シナモンロール』ってぇパンがあってな、こう、シナモンと砂糖の味のする生地がくるくるっとなっちまっててね・・・」といった誰かの話(もちろんその「誰か」もまた聞きなワケだが)を元に、職人が想像一発で作ってしまった、いわば「麒麟」のようなシナモンロールなのです(って、決めつけちゃまずいな)。
実際、ふつうのシナモンロールの場合、シナモンや砂糖が生地に練り混んであるわけですが、ここのシナモンロールの生地はプレーンなデニッシュ地になっています。そして表面にシナモンシュガーがふってあります。つまり「シナモンロール」というよりは、「シナモン風味のデニッシュ」といったほうがより正しいですね(ちなみに、これはこれでおいしいのです)。
ところでこの「シナモンロール」のお値段、なんと一個75円(!!)なんです。安いっ!庶民の町・荻窪の台所を支えるパン屋さん、これからもがんばってください。
銀座あたりでお茶をしようと思うと、なんか落ち着かなかったり値段が高かったりで意外に苦労したりする。だったらいっそのこと京橋まで歩いて、「Pen Station Cafe」へゆくのが正解。
ペン・ステーションという名前がしめすとおり、ここは筆記用具でおなじみの「パイロット」が運営するカフェで、2階にはミュージアムもある。企業がアンテナショップとして、あるいは眠っているスペースの有効活用として、こうしたカフェを運営するというケースはけっしてめずらしい話ではないけれど、そういったことを抜きにして純粋に「カフェ」としてみても、ここはかなりイイ線いっていると思う。いや、むしろこの立地で、この値段で、このレイアウトで・・・ふつうだったらとてもじゃないけれど経営として成り立たないだろう。そこはなんといっても「企業系カフェ」の強みである。
じつはたいした期待もせず「カフェオレ」を頼んだのだが、これが思いのほかおいしく新鮮な驚きだったので、いまこうしてブログでおすすめしている次第。お昼ごはんに、銀座でおいしいビーフシチューを食べてしまったあとだったのでドリンクしかオーダーできなかったのだが、陳列されていた「ヨーロピアンシナモンロール」が気になってしかたない。
ちなみにここ、「京橋」という土地柄、平日の昼間はほとんど「ルノアール」のようである。
見目も麗しいこちらのシナモンロール、それもそのはず日本が誇る高級ホテル「ホテルオークラ」のシナモンロールでございます。
典型的な「アメリカンスタイル」を踏襲しつつも、全体的に「造形的」とでもいいましょうか、均整のとれたプロポーションがうつくしい、なんともセレブなシナモンロールであります。
もちろんお味のほうも上品そのもの、いかにもホテル・メイドといった感がございます。甘さもスパイスの風味もすべてにおいて控え目なところは、さながらそつのないベテラン給仕の身ごなしのようでもございます(意味不明?!)。さらに、パン生地のきめ細やかさにいたってはまさに上等な御菓子のようでもあり、「生まれの違い」を静かに主張しております。
しかしながら一方で、しょせん「シナモンロール」なんて下世話な庶民のくいものじゃんと思わざるをえないのもまた事実でございまして、もっと本能に生きろよ!などと思わず説教をたれたくなるような、なんとも「不思議ちゃん」なシナモンロールといえましょう。おかげでわたくし、その存在感にすっかり調子狂いっぱなしでございます。では、ごきげんよう。
ころっとしたルックスがかわいいこちら、「ドゥマゴ」のシナモンロールです。
シナモンロールというと、日本では
① 平たくとぐろ状に巻かれた生地
② アイシング
③ 控えめなシナモンの風味
といった特徴を挙げることができます。そんなジャパニーズ・スタイルをふまえながらも、それぞれのパーツがすこしづつ主張しているのがこちらのシナモンロールです。たとえばアイシングも、よくある白砂糖ではなくシナモンシュガーだったり、かたちにも「純和風」とはいえないこだわりが感じられます。結果、できあがったのはやけにバタ臭いシナモンロール。ある意味「平井堅」ですね、これは。
京都のベーカリー、hohoemi(ホホエミ)のシナモンロールです。鴨川のほとり、荒神橋のたもとにあります。
白粉をほどこしたようなルックスが「舞妓さん」を思わせる、京美人なシナモンロールです(無理矢理ですが)。これをかぶりつきながら鴨川の河原を散歩したい誘惑になんども駆られましたが、写真を撮らねばという「使命感」でなんとかホテルまで持ち帰りました(撮影終了とともに胃袋に消えたのはいうまでもありません)。
お味はというと、外はしっかり、中はもっちりでなかなかユニークな食感のシナモンロールでした。ちなみに、砂糖のアイシングだとばかり思っていた表面、じつはバタークリームのようなもので、持ち歩いているあいだにすっかり「化粧崩れ」してしまったのが悔やまれます。
フィンランドのシナモンロール「コルヴァプースティ(Korvapuusti)」に恋焦がれ(?!)、カフェやベーカリーではつい「シナモンロール」に手が伸びてしまうワタクシこと、《Korvapuustiseura》によるレポートです。
第6回となる今回は、おなじみ「スターバックスコーヒー」のシナモンロールの登場です。ひとことで評するなら、これぞスタンダード!なシナモンロール。フワフワな生地+ほどほどのスパイシー感+砂糖によるアイシングというベーシックな日本におけるシナモンロールの「定式」にしっかりおさまっています。逆にいえば、安心感こそあれ、強く主張してくることもないという意味で、どうもいまひとつ印象に残りにくい味ともいえそうです。
ただ、そういうコンビニエンスな感じがまた、アメリカ生まれのカフェにはふさわしいのかもしれませんが。
軽井沢(と四谷)にあるブランジェ浅野屋のシナモンロールです。
ふわふわの生地+ややひかえめのシナモン+アイシングという「アメリカンスタイル」の(ということは「ジャパニーズスタイル」の)、いわば「王道」のシナモンロールです。残念ながらフィンランドのシナモンロールとはまったくの別物ではありますが、これはこれでおいしい、完成度の高いシナモンロールだと思います。とりわけ生地の「ふわふわ度」については群を抜いています。
「ハード系」に定評のある浅野屋のなかでは、ある意味「異端児」的な存在といえるかもしれませんが、なかなかどうして満足度の高いシナモンロールといえそうです。
これぞ紛れもない「コルヴァプースティ」、フィンランドのシナモンロールです。映画「かもめ食堂」のパンフレットに掲載されていたというレシピをもとに、某さんがつくってくださったものです。ごちそうさまでした。
なぜ「某さん」なのかというと、ご本人いわく「不本意な出来」とのことで、あえて伏せさせていただいてます。今回はあえて「レシピどおり」につくってみたそうですが、レシピには書いていないけれど、「塩」はやはり加えたほうがよいとのこと、またレシピどおりだと「発酵時間」もやや不十分との「プロフェッショナル」な感想をいただきました。これからつくろうという方はぜひ、参考にしてください。
さて、お味の方ですが、フィンランドと日本とでは「粉」がまったく異なるにもかかわらず、独特の、そしてもっとも重要なファクターである「生地の弾力」をしっかり感じられるのはさすがです。たしかに、味わいにどこか頼りない気がしますが、それが「塩分」の力なのかもしれません。あとこれは個人の趣味の問題ですが、もうちょっとシナモンが効いていてもよいように思いましたが、いかがでしょう?
というわけで、機会がありましたら、オリジナル版の「自信作」のほうもお待ちしております!(←図々しいですね)
かねてから気になっていたのが、京橋にあるPEN STATION CAFEのシナモンロール。
「ヨーロピアンシナモンロール」という名前にふさわしく、若干平べったいものの、ルックス的にはかなりフィンランドのシナモンロールに近い。当然、嫌が上にも期待は高まる。
ところが、その予想は見事に裏切られた。形はともかく、その味はいわゆる「シナモンロール」とはまったくちがう。ひとことで言えば、シナモンロールの欧州連合(EU)といった感じ。かたちはフィンランド、生地はデニッシュ、しかもシナモン以上にアマレットの風味(イタリア?)が勝っている。アーモンドプードルが練り込んであるのか、全体にしっとりとした印象である。
摩訶不思議なシナモンロール。フィンランドへの道のりは遠い。
船橋にある「IKEA」のカフェで食べたシナモンロールです。
「ミニシナモンロール」とあってサイズは小ぶりです。形は、おなじみの「渦巻き状」。生地はやわらかく、バターの量が多いのかパイ生地に近い印象です。全体的には、前回ご紹介した「Pen Station Cafeのヨーロピアンシナモンロール」に似ています。スパイスは、カルダモンの風味が強めの北欧風。
フィンランドのシナモンロール「コルヴァプースティ」とくらべると、形、そして生地に明らかな違いがあります。スウェーデンでは「シナモンロール」を食べたことがないのでよくわかりませんが、フィンランドのシナモンロールはやはり個性的な存在のようです。
代々木八幡にあるベーカリー「イエンセン」のシナモンロールです。お客様より差し入れしていただきました(興奮のあまり、お名前を伺うのをうっかり忘れてしまいました・・・失礼致しました!)。
「イエンセン」といえば、本場仕込みのデニッシュが食べれるベーカリーとしてよく知られた存在。このシナモンロールも、正式には「スモースナイル」と呼ぶのが正しいようです。渦巻き状のバターデニッシュ、という感じでしょうか。渦巻き状+アイシングというベーシックは押さえつつも、生地は完全なデニッシュ地からできています。バターもふんだんに使っており、パリパリサクサクでおいしいです。スパイスはシナモンのみでしょうか・・・ややオリジナルな風味を感じたのですが。 パンというよりは、感覚的にはよりケーキにちかい、本場デンマークスタイルのシナモンロール。ごちそうさまでした!
LUMINE荻窪の「サンジェルマン」で、3日間の期間限定で販売していた復刻版シナモンロールです。
いつごろ販売されていたものなのか、またどういう経緯で期間限定で復刻されたのか、基本情報のチェックを怠ってしまっていたのは不覚でした。生地は、よく下町のベーカリーなどで見かける、表面に卵黄を塗ってツヤツヤに仕上げたなつかしいつくり。アイシングのかわりの溶かしバター&ざらめ砂糖も、さすがは「復刻版」というノスタルジックな印象を与えています。
ある意味、これはシナモンロール界のGS、グループサウンズですね。ビートルズやストーンズを真面目に追求すればするほど、なぜか「本物」とはどんどんかけ離れたものになってしまう、そんな日本という風土のもつ強力な磁場をあらためて一個のシナモンロールに垣間見た思いです。
西尾さん(お世話になってます!)のシナモンロールです。ご覧のとおり、正真正銘フィンランドのプッラ「コルヴァプースティ」です。残念ながら街で手に入るものではないので、今回は「番外編」ということになるでしょうか。
イーストのかわりに、「白神酵母」という天然酵母を使って焼かれた西尾さんのパンは、生地じたいにほんのりとした自然の甘みがあってとても上品な味わい。そしてスパイスのカルダモンも日本で売られているパウダー状のものではなく、フィンランドから持ち帰ったという粗挽きのものを用いているので全体的に刺激的にすぎずやさしい印象です。
プッラ、とりわけこのシナモンロール「コルヴァプースティ」は、フィンランドではおかあさんが子供のためにつくってあげる「おやつ」のような存在。だから、本物のプッラはとても素朴であったかい味がするのです。
西尾さんのコルヴァプースティは、そんなおかあさんの味のするまさに《正統派》のコルヴァプースティです。
うっかり忘れていました、このカテゴリー。
最近、荻窪の駅ビルにもできた「神戸屋キッチン」のシナモンロールです。
やや小ぶり、生地はペストリー系でロールのしかたに律儀さ(?)を感じます。ひとくちにシナモンロールといっても、生地が「パイ」のようなペストリー系か、より「パン」のような薄力粉系(?)かで味わいがまったく異なり、当然好みもここで大きくわかれるような気がします。ちなみに、フィンランドのシナモンロール「コルヴァプースティ(Korvapuusti)」は、その点でゆくとパン系の最右翼といえそうです。
じっさいに口にしてみて、この「神戸屋キッチン」のシナモンロールは、以前ご紹介したイエンセンのシナモンロールにちょっと似ているように感じました。ただ、けっこうバターを多く使っているようなので、焼きたてを早めにたいらげてしまうのがおいしくいただくコツかもしれません。
日々フィンランド語に精進されているTさん(「どうぶつ占い」は「トラ」)よりの差し入れ、高級スーパーマーケット「成城石井」のシナモンロール(ラージ)です。
このシナモンロール、「ラージ」というだけあってとにかくデカい。そのデカさは、かたわらのもこみちの顔と比較していただければまさに一目瞭然。
くるくるとロールしたパン生地にたっぷりのレーズンとやや強めのシナモン、そして上にはアイシングとまさに典型的な「アメリカンスタイル」のシナモンロールです。パンがパサついておらずなかなかおいしいシナモンロールではありますが、メタボリック・シンドロームの恐怖に怯えることなく完食することはまず困難でしょう。
荻窪の南口にあるHoney[ハニー]さんのシナモンロールです。
シナモンロールといっても、いわゆるシナモンロールとはずいぶん異なるイメージにまず驚かされます。差し入れしてくださったKさんによると、クルミたっぷりシナモンロールと書かかれていたとのこと(未確認)。
ラグビーボール型のパンは、ソフトフランスパンのようなややコシの強い生地でできていて、中央にはシナモンシュガーによるアイシングがほどこされています。割ってみると、中にはなんとクルミとレーズンがびっしり詰まっていて、またまた驚き。いわゆるシナモンロールというよりは、レーズンとクルミをシナモン風味の生地でくるんだといった感じでしょうか?
荻窪が生んだ、まさにシナモンロール界の異端児。
ついこのあいだのことだ。あるお客様からこんなふうに尋ねられたのだった。
「あの、シナモンロールはありますか?」
「はい、平日の月、水、金曜日にお召し上がりいただけます」
「そうですか。じゃあ、おにぎりは?」
「えっと・・・ちょっとおにぎりは・・・やってないんですけど」
映画はおそろしい。ていうか、いったいどんな噂がたっているんだ!?そのうちおにぎりを出さなきゃならない日がやってくるのか?いや、ないな、絶対に。
ヘルシンキの街をそぞろ歩きしていると、どの地区にもきまってひとつやふたつ、わざわざ目指してゆくほどではないにせよ通り過ぎてしまうにはあまりに惜しい、そんな風情の地元のひとたちから愛されているパン屋さん(Leipomo)があったりする。
これは、「かもめ食堂」ことカハヴィラ・スオミとおなじ「Pursimiehenkatu」にある「Kanniston Leipomo」のシナモンロール(手前)。雨の中、入れ替わり立ち替わりやってくるご近所の老若男女の存在が、ここのパンがいかに地元に根づき彼らの生活の一部として息づいているかを伝えてくれる。
素朴にして飽きのこない、普段着のシナモンロール。
ヘルシンキのカフェ、CAFE LUFTのシナモンロール。
フィンランド基準からするとやや小ぶり、見た感じでは冷凍だろうか? 甘みがやや強く、どちらかというとスイーツっぽいところもそう感じるゆえん。焼き色がかなりしっかりついているが、たぶんそれも冷凍だからじゃないだろうか。
でも、案外このシナモンロールがおいしかったりするのであなどれない。手作りの素朴なシナモンロールもいいけれど、このレベルのシナモンンロールが手軽に食べられるのならそれもよし。冷凍なら、どこのブランドのものかこっそり教えてほしいくらいである。
ちなみにLUFTがあるのはカッリオのはずれ。周囲はポルノショップやパブ、ちょっといかがわしい雰囲気の漂うタイ式マッサージの店などが数多くあるエリアだが、通りをはさんだ向かいには大きな銀行があるせいでお昼にはスーツ姿のビジネスマンやOLもたくさん訪れる。むかし中目黒にあった「オーガニックカフェ」をもっと素っ気なくしたような雰囲気で、フィンランドにはめずらしい、日本人がイメージする「カフェ」に近い雰囲気をもつお店。夜にはDJが入ってパーティーがおこなわれたりもするらしい。
ヘルシンキの下町、丘のてっぺんにひっそりたたずむちいさなレイポモ(パン屋さん)、K.E.Avikainenのシナモンロール。
この場所で40年以上商売を続けてきたというおばあちゃんのつくるシナモンロールは、まさに「コルヴァプースティのお手本」と言いたくなるようなすばらしいカタチ、そして味。カルダモンとシナモン、砂糖のバランスもほどよく、しっかりした焼き色もぼくの好みにぴったりなのでした。
ところで、こういうお店を訪ねるときには、なんといっても「お行儀よく」しなければならない。その町に暮らすひとびとが大事に守り、育ててきた場所にお邪魔するわけだから。そこに流れる「空気」を乱さないようよくよく注意をしなきゃいけない、そう思うのだ。
つたないフィンランド語(というよりは単語の羅列?)でいろいろと買い込んで、(他に誰もお客様がいらっしゃらなかったので)記念に一枚パチリと写真を撮らせてもらって店を後にしたのだった。
9月より、フィンランド風シナモンロールを平日限定で復活します!
フィンランドの家庭でお母さんが子供たちのために焼く素朴でやさしい味のシナモンロールは「コルヴァプースティ」という名前で親しまれ、日本でも映画「かもめ食堂」ですっかりおなじみとなりました。
moiのシナモンロールはフィンランドの友人から教えてもらったレシピをベースに、現地で食べておいしかったシナモンロールの味なども参考にしつつ、焼いてくれるスタッフとともにああでもない、こうでもないと言いながらオリジナルの味に仕上げた自信作です。
提供は、
◎ 月曜、水曜、木曜、金曜の平日のみ
また、焼くことのできる数が少ないため、大変申し訳ないのですが
◎ イートインのみ
のご提供とさせていただきます。なお、売り切れの際にはご容赦ください。
ご来店の折にはぜひお試しください。お待ちしております。
本日7月18日は、荻窪に「moi」をオープンしてからちょうど8回目の誕生日となります。まあ、そんなこともあったりなかったりなのですが、
本日18日に限り、ふだん「平日限定」でお召し上がりいただいている「フィンランド風シナモンロール」を店内にてお召し上がりいただけます。一応、数量限定となっておりますので、万が一売り切れの際にはご容赦下さい。
というわけで、本日もみなさまのご来店をお待ち申し上げております。
moi店主
フィンランド旅行を計画中の方に耳寄りな情報です。
映画「かもめ食堂」ですっかり有名になったフィンランドのシナモンロール(コルヴァプースティ)。フィンランドではお母さんが子供のために焼いてあげるおやつの定番として、まさに「おふくろの味」の代名詞です。
この「シナモンロール」を、ヘルシンキから程近い人気の古都ポルヴォーでフィンランド人の「お母さん」から学べる現地集合型のオプショナルツアーができました。教えてくれるのは、元ベーカリーカフェ店主のマイレさん、日本語堪能なリーッタさんも一緒なので言葉の心配もいりません。ポルヴォーの歴史的建造物で手作りのシナモンロールとスープでランチタイム、なんてそれだけでとてもいい旅の思い出になるはず。
くわしい内容は以下の通り:
・ オプショナルツアー(日帰り)※現地集合
ヘルシンキよりバスで約50分、その後徒歩10分くらい
・ 1名様より催行
・ 来年3/31までの月曜日、火曜日
・ 11時~14時の約3時間(ランチ含む)
・ 料金 おひとり様 8,925円
※料金は参加費、昼食代です。現地までの交通費等は各自ご負担下さい。
こちらのプランのチケットはmoi店頭でも予約受付&販売しております(メール、電話等での受付はございません)。チラシ、その他旅のプランニングに役立つ資料などもご用意しておりますので、フィンランドへの旅行を計画されている方はぜひご来店下さい。お待ちしております。
いよいよクリスマスも間近。気の置けない仲間や家族とともにホームパーティーを計画されている方も少なくないでしょう。持ち寄りやちょっとした手みやげに何か気のきいたものを、と頭を悩ましている方もいらっしゃるのではないでしょうか? そこで「moi」からの提案です。
クリスマスパーティーに人気の【フィンランド風シナモンロール】はいかがでしょう?
通常【フィンランド風シナモンロール】のテイクアウトは土日&水曜日のみとさせていただいておりますが、クリスマス期間中に限り特別に12/21(土)〜12/24(火)までの4日間、毎日お持ち帰り用のシナモンロールをご用意いたします。なお、上記期間中はご予約のお客様優先となりますので、下記の要領でご予約いただけますようお願いいたします。
クリスマスの食卓を《北欧のやさしい味》でいっそう賑やかに彩ってください!
──
【お渡し日】
◎ 12月21日(土) お渡し 午前11時〜午後7時
◎ 12月22日(日) お渡し 午前11時〜午後7時
◎ 12月23日(祝) お渡し 午前11時〜午後7時
◎ 12月24日(火) お渡し 午前11時〜午後5時
◎ 12月25日(水) 臨時休業 ご予約は承れません
【お渡し場所】
moi[カフェ モイ]吉祥寺 店頭
【ご予約方法】
メールもしくは電話(営業時間内)にて必要事項[下記①〜⑤]とともにご予約をお願い致します。
① お渡し希望日 21日〜24日のいずれか
② 個数
③ お名前
④ お電話番号
⑤ ご来店予定時間 午前11時〜午後7時(24日〜午後5時)
なお、店頭でのご予約も承ります。スタッフまでお申し付けください。
すてきなクリスマスのお手伝いができますように!
めずらしいものをいただく。
ひとつは「ノルウェーの粉を使ったシナモンロール」で、谷中にある「VANER(ヴァーネル)」というパン屋さんのものだそう。生地をよって、丸めたようなその独特のかたちはスウェーデンのシナモンロールに似ている。フィンランドのシナモンロールとおなじくカルダモンの風味が効いているが、これは北欧のシナモンロールに共通する特徴。そして、肝心の生地はというと全粒粉だろうか、噛んだときの小麦の「つぶつぶ感」がおいしい。マヤさん、ごちそうさまでした。それにしても、「ノルウェーのシナモンロール」まで手に入る東京、すごい!! 「フィンランドのカフェ」もあるしね。
そしてもうひとつ、こちらはサユリさんよりいただいたベラルーシのチョコレート。毎度立ち止まって、え〜と、なんだったっけ!? とかんがえないことには「ベラルーシ」という単語が出てこない。それくらいなじみの薄い国。そういえば、たしか女優の岸恵子のエッセイに『ベラルーシの林檎』と題されたものがあった気がする。その程度に知識しかないので、もちろん場所などよくわからない。ざっくりウクライナとかグルジアとか、だいたいそのあたりな気がする。
さて、いただいたチョコレートだが、まず最初に目に飛び込んでくるのは包装紙に描かれたクマの姿。いかにも70年代のソビエト風とでも言うか、チェブラーシカやユーリ・ノルシュテインのアニメを彷彿とさせる独特の愛らしさ。さらに、なにやらチョコレートの表面のデザインにものすごいこだわりが感じられる。そして包装紙にこれでもかとばかりラズベリーの絵が描かれていたものだから、キリル文字は読めないがこれはきっとラズベリー味にちがいないと思って食べてみたら、なんと、ふつうにおいしいミルクチョコレートであった。ベラルーシ手ごわい。ちょっとベラルーシという国について調べてみたくなった。
猛烈な台風が西日本に接近中。その余波で、東京も強い風が吹き荒れる。あまり外を移動することはできそうもないので、土曜日のイベントの下準備のため、アアルトコーヒーの庄野さんがおすすめするミステリを抱えて喫茶店へ。人生初の赤川次郎。
不意に思い出し、豊島区立郷土資料館で『江戸園芸資料コレクション』展をみる。現在の巣鴨、駒込あたりは、かつて江戸の周縁部にあたる農村地帯であった。そこでは、やがて観賞用の菊、桜草、万年青、それにさまざまな植木がつくられるようになり、江戸の町内に供給する一大生産地となる。
この展覧会では、当初スペクタクルとして多くの観衆をあつめた観賞用の菊人形や品種改良した菊などにはじまり、やがて個人の楽しみとして「趣味の園芸」化することで珍種、寄種の競い合いやマニュアル本のヒットなど園芸を取り巻く変遷を資料をつうじて辿ってみようという試み。思いのほか楽しめた。風がだいぶ強くなってきたので、早々に帰宅する。
近畿に甚大な被害をもたらした台風21号、さらに震度7という激しい地震により北海道全体を停電に陥れた北海道胆振東部地震。被害に遭われたみなさまには、1日も早く日常の暮らしが戻るよう祈らずにはいられない。
それにしても、ほかにも大阪府北部地震、西日本豪雨など数十年に一度と言われるような災害がわずか3ヶ月ほどのあいだに集中して起こっていることは、まさに非常事態といってよいと思う。オリンピックが直接的な復興支援になるのならともかく、逆に本来なら1日も早い復旧のために必要とされる時間、お金、ひとを奪い取ってしまうものであることを思えば、即時中止するべきではないか。国家の一大事に「体面」とか気にしている場合ではないのである。
はたして、そんななかまだオリンピックをやりたいとしたら、それはいったい誰がやりたいのか? アスリート? 政治家? 広告代理店? ゼネコン?…… いまやらねばならないのは、そこをハッキリ可視化させることなのではないか。
面倒見のいいことでは定評のあるミツヨさんが、職場でバイトしているという韓国の女の子と一緒にご来店。とても礼儀正しい女の子で感心する。たとえば外国に行ったとき、自分だったらああいう挨拶やちょっとしたひとことをすかさず言えるだろうか。とっさには言えないだろうなあ。
ちなみに和菓子職人のミツヨさんは、なぜか最近パフェばっかり作らされているそうである。そして、秋の新作「栗といちじくのパフェ」(2,160円也)が超オススメの自信作とのこと。食べたい。これを「自分へのごほうび」にするには、はたしてどれだけのことをすればよいのやら。要検討。
そのほか、うれしいサプライズもあった1日。
先日、デザインジャーナリストの萩原健太郎さんとのあいだでこんなやりとりがあった。ちなみに、萩原さんは『北欧デザインの巨人たち〜あしあとをたどって』(ビーエヌエヌ新書)、『北欧とコーヒー』(青幻舎)、『ストーリーのある50の名作椅子案内』(スペースシャワーネットワーク)などなど、北欧関連やデザイン関連の本をたくさん書かれているひとである。
萩原「こんど、フィンランドの映画とか音楽について岩間さんから話を聞きたいんですけど……」
岩間「取材ということですか? いいですけど、でも、そのへんについては専門家ではないので、こういう人やこういう作品があって、そのこういう部分がとても「フィンランドっぽい」と思うといったようなことしかお話しできませんけど……」
萩原「それでOKです。で、せっかくなんで、こういう話ってたぶん興味があるひとけっこういると思うんで、いっそ公開取材ってことにしませんか?」
岩間「???」
ということで、気がつけば9月15日[土]19時より萩原健太郎(きくひと)+岩間洋介(きかれるひと)という謎の「公開インタビュー」イベントをやることになりました。お茶付き1,000円でカジュアルにみんなで楽しむ会です。特に、フィンランドのカルチャー方面に関心のある方にご参加いただけるとうれしいです。参加ご希望の方は、お手数ですがメール(cafemoimoi@ybb.ne.jp)にてお名前、人数、お電話番号をお知らせください。お待ちしております。
日曜日、道行く人影もまばらになった夕刻遅く、ふーっとひと息ついていたところに外出帰りのスタッフが差し入れを届けに立ち寄ってくれた。
フィンランドのレシピのパン。ヴォイシルマプッラ(Voisilmäpulla)という。ヴォイはフィンランド語で「バター」を、そしてシルマは「目」を意味する、つまり直訳すると「バター目玉パン」だ。まあるいパンの真ん中で、甘い澄ましバターの「目玉」がギョロっと睨みをきかせている。この「目玉」には、さらにオレンジのジャムがソロっとのっているのだが、これは拵えたフィンランドの家庭料理研究家西尾ひろ子さんのオリジナル。
ちなみにプッラとは、フィンランドではいわゆる「菓子パン」全般をさして言われる。そして、プッラの生地には一緒にカルダモンというスパイスが練りこまれているのがふつうだ。つまり、ヴォイシルマプッラとは、カルダモンの爽やかな香りと生地に染み込んだバターの風味を楽しむだけのシンプルなおやつパンといえる。デンマークのペストリーのように、手の込んだケーキのような菓子パンはもちろん好きだが、こうしたフィンランドの家庭の食卓に並ぶ素朴な菓子パンも悪くない。なんといってもホッとするのだ。腕ききの職人がつくり出すおいしさと同じように、近しいひとの手から生み出されるおいしさというのも、またあるのだろう。
ところで、フィンランドの菓子パンには、たとえばラスキアイスプッラとかヨウルプッラといったように復活祭やクリスマスなど年中行事にちなんだネーミングのものが少なくないが、なかには「バター目玉パン」のように見た目に由来する名前のパンもあり、とりわけユニークなものといえばなんといってもコルヴァプースティだろう。
コルヴァプースティはいわゆる「シナモンロール」のことなのだが、その名前を直訳すると「ビンタされた耳」になる。実物を見れば一目瞭然、それはその独特の巻き方による形状に由来する。たしかに、それは耳が潰れたように見えなくもない。むかし知り合いのフィンランド人から「コルヴァプースティの意味知ってる?」と尋ねられ、「知らない」と答えたところビンタする真似をされたことがあったのだが、いまにして思えば、そこですかさず「手袋を反対から言ってみて」と日本語で応酬すべきであった。小学生レベル。
そういえば、たしか家にあった『ムーミンママのお料理の本』のシナモンロールの項目には、特に説明もなく、ただ「往復ビンタ」と書かれていたような記憶がある。「ビンタされた耳」が、どういうわけか「往復ビンタ」へとグレード・アップしている。ムーミンママ、恐ろしさしかない。
なんと、モイのシナモンロールが小説になりました。
実在するカフェや喫茶店を舞台に短編小説を執筆されている市野真愉さんの「待ち合わせはシナモンロールと」がそれです。
「本物のシナモンロール」の記憶が、母と娘との関係を淡く濃く浮かびあがらせて読むひとの心を静かに波立たせます。ほんのり苦くて、切なくて、そしてまた小さな粒砂糖ほどに甘い物語。
実際、モイには母娘のお客様もよくいらっしゃるのですが、友達のようであったり、ときになにかの拍子に立場が逆転したりと、その関係は独特でカウンター越しに眺めて微笑ましく感じることも少なくありません。いつの日か、たしかにそんな光景を目にしたような錯覚にとらわれながら、ぼくはこの市野さんの小説を読まさせていただきました。なにより、モイとモイのシナモンロールをこんな風に人生の「伴奏者」のように描いていただけたことがうれしいです。
小説は、市野真愉さんのブログ「ほっと一息 カフェ文庫」にて全文公開されていますので、ぜひお読みいただければと思います。また、少しだけ無料の小冊子も当店にてお預かりしておりますのでぜひ。