#140 この毎日の中で

今日という一日を思い出すとき、たったひとつの嫌なことで悪い日だったって思うより、たったひとつのいいことだけでいい日だったって思えたら ──

Moi!フィンランドをもっと好きになる140回目のレポートをお届けします。メニューはこちら。


チャーチカフェ@スオミ・キリスト教会

12月の司会は岩間さん。12月2日に東京・早稲田のスオミ・キリスト教会で開催された【チャーチカフェ】の話題から。いつもチャーチカフェのお手伝いをされているのが、カフェmoiのキッチンを担当されていたKさん。いつか岩間さんにコーヒーを淹れてもらいたいとご相談を受けていたのですが、それが今回ようやく実現しました。

手づくりのクリスマス飾りで彩られた教会で、宣教師のパイヴィ・ヨシムラさんお手製のチョコレートケーキ、そして岩間さんの淹れるコーヒー、前任の宣教師であるマルッティ・ポウッカさんによるフルートやオルガンの演奏、パイヴィ・ポウッカさんによるクリスマスのお話を楽しみました。

「フィンランドのクリスマスの文化に触れられるよい機会だったと思います。clubhouseを聴いてくれている方たちも来てくださり、盛況でした。教会の先生方も喜んでくれていました」と岩間さん。

自分は記録係として午後3時頃に教会へお邪魔しました。教会へ通われている方、岩間さんに会いに来た方、告知を見かけて来場された方、お手伝いの方々、みなさんうれしそうにされていたのが印象的でした。

チョコレートケーキはフレッシュなラトビア産のラズベリー、食べやすく刻んだ黄桃、クリームやベリージャムもたっぷり、お子さんでも食べられるようにアルコールなどは使わずに、パイヴィさんの細やかな気遣いが感じられるとてもやさしいケーキで本当に美味しかったです。

「日本では教会やお寺へ日常的に行く人も少ないかもしれませんが、落語でお寺へ相談に行く話があるように、それと同じように教会へ話を聞きに行くような身近な場所なのかもしれませんね。これからもチャーチカフェやワークショップなどが開催されると思いますので、ぜひ機会があったらスオミ教会へ行ってみてください」と岩間さん。

ハ:朝からずっとコーヒーを淹れ続けていたと聞きましたけれど。
イ:はい、予想していたよりもたくさんの方が来てくれて。お手伝いの方みなさん、そして準備も大変だったと思います。
ミ:淹れ続けると腕がすごく疲れるんじゃないですか?
イ:淹れ続けるのはそれほどでもないんです。でもテーブルが少し低く中腰ぎみだったので、腰が、笑。


たき火ピクニック モルック編

次は自分の報告です。nuotio|takibi サークルの有志で「たき火の会」を開催。今回はモルックも初体験しました。場所は多摩川河川敷のバーベキュー場です。企画も準備もたいていおまかせになってしまっている「たき火の会」。そろそろやりませんかという誰かの声を聞いて、みなさんにいろいろ持ち寄ってもらうという他力本願なスタイルです(いつもありがとうございます)。

ルバーブケーキ(Maijaさん)

会場では、コーヒーを淹れてもらって、マッカラを焼いてもらって、たき火を遠巻きに見ているのが自分の役目です(写真は撮りました)。楽しんでもらえていたらうれしいです。平日ということで参加できなかった方もいらしたのですが、また開催できたらいいなと思っています。

焼きリンゴ(Chiemiさん)

イ:モルックは、ボーリングのようにいくつかの木の棒を倒すゲームですね、それぞれに番号がついていて。
ハ:はい、そうです。子どもたちと一緒にやったのですが、うっかり優勝してしまいました。
イ:子どもたち、がっかりしてませんでしたか?
ミ:50点ぴったりにするんですよね。
ハ:はい、そうです(毎月やりたいと言ってもらえました‥‥ま、毎月、笑)。


デジタルファッションってなんですか

そしてフィンランドセンター主催の展覧会【親密なからみ合い:フィンランドの現代ファッション】に関連したトークイベントを聴講するため目黒区美術館へ行きました。この展覧会はヘルシンキのデザインミュージアムで2021-2022年に開催された【Intimacy】展を再構成したものです。トークイベントに登壇されたのは、キュレーターのアンナマリ・ヴァンスカ教授、ナタリア・サルマカリ博士研究員(共にアールト大学)、スサンナ・パーソネン教授(トゥルク大学)、アンナ=マリア・ウィルヤネン所長の4名。

アンナマリ教授は、ファッションの研究、ジェンダー論、アート史などを専門として、展覧会のキュレーションなども行っています。ナタリア研究員はファッションデザイン科を卒業、デザイナーとして活動し、6年前からアンナマリ教授と研究を続けています。スサンナ教授はメディア論を専門として、1990年代のインターネット創世記から文化やテクノロジーなどを研究してきました。

【Intimacy】展は、フィンランドの戦略研究評議会の依頼で、高度なテクノロジー化によるカルチャーへの影響を研究するため、アールト大学、トゥルク大学、タンペレ大学、オーボアカデミーという4つの大学からメディア、法律、デザイン関係の研究者たちが集まりました。そのモノグラフ(研究書・論文)として出版されたのが『Intimacy – Embodied knowledge, creative work and digitalization in contemporary Finnish fashion』。

衣服と身体に「親密さ|Intimacy」があるのはわかりますが、デジタル化やテクノロジーの一体どこに親密さが感じられるのだろうか。以前ならそう感じていたかもしれません。ですがパンデミック以降、ZOOMなどをつかったオンラインイベントやセミナーなど、直接会うことのできない環境下でも「親密さ」を感じる瞬間があったように思います。

AI、バーチャルリアリティ、3Dソフトウェア、ブロックチェーンなど、テクノロジーの変化でファッションデザイナーの仕事にも変化が訪れています。たとえばThe Fabricantというグループは物質化しないファッション(画面上のバーチャル空間や写真の身体にしか着せられない服)を提示。Self-Assemblyのマッティ・リーマタイネンは、コンピューターに服をデザイン・製造させる試みを行っています。

そうした中で衣服やファッションという存在にどう「親密さ」が保たれていくのか、はたまた消えていくのか、そうした変化を考えさせられるような展示・トークイベントでした。「Intimacy」というのはこれからの世界で人間性を担保するためのキーワードであるようにも思いました。

ハ:デジタルファッションによってどんな変化が起こるのかを研究した展覧会です。
イ:そうしたらまずデジタルファッションというのは、どんなものかというのを説明してもらいましょう。
ハ:はい、そうですねぇ…
イ:デジタル化やテクノロジーの変化でファッション業界にイノベーションが起こっているってことでしょうか?
ハ:はい、そんな感じです、笑。
イ:え? 本当に?笑


arkietti 2024 calendar exhibition -in bloom-

さらにもう一つ。ヘルシンキ在住のテキスタイルデザイナー、星佐和子さんのブランド「arkietti」のカレンダー原画展を観るために吉祥寺のgallery iroへ行きました。クレヨンスクラッチの技法で描かれた十三枚の原画にはそれぞれフィンランドで咲く花が。会場では星さんにもお会いすることができました。

星さんの原画は、まるで冷え込んだ朝の窓にあらわれる霜華のようでした。その溶けない霜が陽の光を浴びて、様々な色に輝いています。クレヨンスクラッチは見えない絵を浮かび上がらせるものだと思いました。設計図がなく計算のできない美しさを作りだす自然の霜の華みたいに。

ミ:クレヨンスクラッチというのはどんなものですか?
ハ:クレヨンで下地を塗って、それをとがったもので削って描くみたいです。
イ:ずっとむかし幼稚園でやったことがありますね。
ハ:星さんは今日も在廊されると思いますので、行かれる方は聞いてみてください。


クリスマスのアドベントカレンダー

最後の報告は、そろそろクリスマス飾りの準備を始めようかというミホコさん。アドベントカレンダーを紹介しました。ひとつはボーイスカウトの寄付にもなるもの。もうひとつはフィンランドの紅茶メーカーNordqvistのムーミン・アドベントカレンダー。こちらは一日ずつ異なるフレーバーのティーバッグが出てくるそうです。

©︎mihoko-san
©︎mihoko-san

「こうしたアドベントの文化があるけれど、毎日となるとプレッシャーがかかったりしますよね、笑。日本独自のアドベントカレンダーがあったりするといいかもしれない」と岩間さん。

ミ:ムーミンがついてるよと噂に聞いていた「じゃがビー」も環境保護のための寄付になるそうです。
イ:おいしいよね。
ミ:スナフキンがアンバサダーなんですよね。
イ:自然の中で生きてるからかな。
ミ:イメージ、スタイル、ものの考え方、生き方でしょうかね。


ポリ・ジャズの大西順子

6年ぶりにiPhoneを新調したというミホコさん。音楽データの入れ直し作業を進めているそうです。そのなかで気になったのが、ジャズピアニスト大西順子さんのCD。ヨーロッパツアーのライブで、ポリ・ジャズフェスティバルの音源を聴いて、懐かしかったとミホコさん。

©︎mihoko-san

イ:ポリ・ジャズはヨーロッパでも有名なジャズフェスティバルですよね。
ミ:日野皓正さんもフェスティバルに出ていましたね。
イ:以前、成城学園に落語を聞きにいったとき、小澤征爾さんと一緒にいたところを見かけたことがあります。
ミ:サイトウ・キネンですかね。


フィンランディア文学賞

そしてミホコさんが今週注目していたのが、2023年フィンランディア文学賞の発表。選者が文学の専門家でないこともあり、意外な作品が受賞することがあるそうです。今年のノンフィクション部門の選者はリンダ・リウカスさん(「ルビィのぼうけん」という子ども向けのプログラミングの本を書いている)。「選ぶ人で話題作りをしているのかもしれませんね」とミホコさん。

2023年 フィンランディア文学賞 受賞作品

・Sirpa Kähkönen『36 uurnaa』(フィクション部門)
・Antti Järvi『Minne katosi Antti Järvi?』(ノンフィクション部門)
・Magdalena Hai『Sarvijumala』(児童文学部門)

・Miki Liukkonen『Vierastila』(読者人気部門)
・Ville Mäkipelto『Sensuroitu』(読者人気部門)

── いいことっていうのは特別なものじゃなくて、この毎日の中でいつだってそこにあるもの。これまで歩いてきた日々は消えたりしないから、思い出して。それでは今回はこの辺で、次回もお楽しみに。

text : harada

#140|In My Life – The Beatles