Vappu|フィンランドのメーデー

毎年5月1日に行われるヴァップ。夏至祭やクリスマスと並んで、フィンランドでは一年のうち最もにぎわいをみせる祝祭です。

もちろん私たちが普段メーデーと聞いて思い浮かべる「国際労働デー」としての一面もあり、1979年以来『フィンランド労働者の日』として公式の旗日となっています。

Kauppakatu, 1959(クオピオ)

冬のあいだ暗く寒い日々が続くフィンランドでは、明るくあたたかな春の訪れを、誰もが待ち望んでいるのではないでしょうか。

そんな春の到来を祝うヴァップの起源は、キリスト教以前の異教の時代までさかのぼります。


ヨーロッパ伝統のお祭り

五月に入るこの季節は、ちょうど春分と夏至の中間にあたり、ヨーロッパでは夏の始まりを祝って、かがり火を焚く伝統がありました。

アイルランドやスコットランドでは、ベルテイン祭(Beltane)という夏の訪れを告げるケルトの祭りがあります。家畜の無病息災や繁栄を願い、かがり火を焚きます。

この祭りは、ケルトの暦では一年の始まりとされる11月1日のサウィン祭(Samhain)と共に、ケルトの人たちにとって重要な祭りです。

The Beltane Fire Festival(スコットランド エディンバラ)

またドイツには、Walpurgisnacht(ヴァルプルギスの夜、Hexennacht:魔女の夜とも呼ばれる)があります。五月祭の前夜4月30日に魔女たちがブロッケン山に集い、神々と酒宴を催し、春の到来を待つという古い習わしが伝えられています。

このヴァルプルギスというのは、西暦870年5月1日に列聖されたといわれている八世紀のドイツの聖人(イギリス生まれ)です。フィンランド語のヴァップは、彼女の名前を由来としています。

ヴァルプルギスの夜(ドイツ ハイデルベルグ)


ちなみにトーマス マンの『魔の山』やトマス ピンチョンの『重力の虹』、ディズニーの『ファンタジア』もヴァルプルギスの夜にインスパイアされて創られた作品だそうです。


フィン人の信仰

ここからはフィンランドにおける伝統を見ていきましょう。

キリスト教以前のフィンランドの民族宗教に、多神教の Suomenusko(フィン人の信仰)というものがあります。口承文化であったため、現存する伝統はそれほど多くありません。

Lemminkäinen at the Fiery Lake / Robert Wilhelm Ekman (1867)

自然崇拝や平等主義といった特徴を持っている Suomenusko の主神は、天空を司るウッコ。そしてその妻のアッカ、海の神アハティや森の神タピオ、そのほかレンミンカイネンやワイナミョイネンなど、カレワラにも登場する彼らが崇拝の対象となっています。

また祝祭としては、春の訪れを祝う「ヘラ」、夏至祭の「ユハンヌス」、収穫と祖先を祝う「ケクリ」、冬至祭の「ヨウル」など、各季節で伝統的な祭りが行われていました。

Kokko(夏至祭のかがり火)

そのうち春の祭り「ヘラ」では、悪霊を追い払うために、かがり火を焚き、シマ(Sima)を飲みながら踊ったそうです。現在このかがり火は夏至祭へと引き継がれているとのことです。

次回は、学生たちによって行われる現在のヴァップについてお届けします。