フィンランドのことば【 J 】

aakkoset

Aakkosetとは、フィンランド語でアルファベットのこと。Moiのスタッフがそれぞれ自由に選んだフィンランドのことばから、ささやかな日常の風景をお届けします。

今回のアルファベットは【 J 】です。


Jäätelö

アイスクリーム

暑いサウナとよく冷えたアイス

ようやく暑さも落ち着き、ここ数日ほっと一息といったところ。あ、ほっととHOTを掛けたダジャレではありませんよ。念の為。

去年につづき、今年もコロナ禍によりひとと会うことも、気軽に外出することもままならない夏となりました。結果、ほとんどの時間を一人で、室内で過ごしています。当然、声を発する機会もありません。

しかし、これはこの夏の発見なのですが、それでも「暑い」という言葉だけは絶えず口にしていたように思うのです。暑い。ああ、暑い。くっそ暑っ(失礼)。つまり、「暑い」と言うその声は、言葉であってもはや言葉でない。いわば悲鳴のようなものなのかもしれません。

そんなわけですから、暑さをしのぐため、この夏はひたすらアイスクリームばかり消費していました。風呂上がりに、近所のシャトレーゼで買い込んできた「チョコバッキー」を毎日一本かならず食べるのが気づけばこの夏のぼくのルーティンになりました。

ところで、これはあまり知られていないことですが、フィンランドは一人あたりのアイスクリームの消費量でヨーロッパ第一位と云われています。調査によると、フィンランド人は一年につき平均13リットルのアイスクリームを食べています。一般的なアイスキャンディーの内容量はだいたい100mlなので、3日に1本食べている計算です。

夏のフィンランドを訪れたことのあるひとなら、きっと公園のキオスクやちょっとした広場で移動販売で売られているアイスクリームを目にした記憶があることでしょう。もちろん、その周囲でアイスクリームに舌鼓を打つ老若男女の姿も。たしかに、あの強く眩しい夏の光の下で食べるアイスクリームの味は格別です。

とはいえ、どうやらフィンランド人は夏にのみアイスクリームを好んで食べるわけではないようです。小雪が舞うヘルシンキのデパートの一角にあるアイスクリームショップは、じっさいそんなお天気にもかかわらずけっこうな賑わいでした。北極圏を有する極寒の国なのになんとも不思議な現象です。

フィンランドを代表する乳製品ブランド「Valio社」のマネージャー氏によれば、アイスクリームに関するとりわけフィンランドならではのふたつの特徴のうちのひとつがこの「一年じゅう好んで食べる」ということだそうです。ちなみにもうひとつの特徴は、「サルミアッキ、リコリス味を好む」とのこと。ま、そうでしょうね。

しかし、あえて暖房の効いたあたたかい部屋で冷たいものを食べるというのは、それはそれで贅沢な楽しみ方という気もしなくはありません。「3 Kaveria(3人の仲間たち)」というフィンランドのアイスクリーム工房のCMには、まさに「暑いサウナとよく冷えたアイス」というコピーがあります。いや、そこは「ビール」ではないのか。

次、冬のフィンランドに行く機会があれば、そのときには暖かい室内で食べるキンキンに冷えたアイスクリームにもぜひ挑戦したいものです。

text : iwama


joki

Joki

ちいさな川のある風景

フィンランドの地図を見ると湖水地方をはじめたくさんの湖があることに気づきます。その数は188,000以上と云われています。実際に飛行機からみえた景色は、大地の上に無数の湖があるのか、大きな湖の中に無数の島があるのか、わからないほどでした。どこまでも続くそれら湖の連なりは巨大な川のようにも思えてきます。

そんな壮大な自然の風景とはうってかわって、今回はとてもちいさな小さな風景についての話です。

以前暮らしていた町には小川が流れていたそうです。ちょうど自分の生まれた頃にコンクリートの蓋が敷きつめられ、暗渠の遊歩道になりました。駅まで続く遊歩道の両脇には立派な桜が立ち並び、春には花の降るなかを散歩したり、秋には落ち葉をあつめてたき火をしたりしました。

遊歩道を歩くたびカタンカタンと音がするので、その下に川が流れていることがわかりました。ゆっくりと蛇行していく遊歩道はまだ川の面影を残していました。しかし、いつからかコンクリートの蓋はアスファルトになり、桜並木は跡形もなく消えてしまいました。きっと現在その町で暮らしている人たちはそこに川があったことすら知らないでしょう。

もうすでにその川は枯れてしまっているのかもしれません。けれど今でもアスファルトの下に川が流れていたとしたら楽しいのになあと考えることがあります。その川だけでなくいろんな町や都市のいたるところに見えない川が流れていて、それらが大きな川や海へと続いていたとしたら。

時折ふと小川に沿って植えられた桜並木を想像することがあります。一度も見たことのないその川の風景を。

text : harada

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