フィンランドのことば【 G 】

aakkoset

Aakkosetとは、フィンランド語でアルファベットのこと。Moiのスタッフがそれぞれ自由に選んだフィンランドのことばから、ささやかな日常の風景をお届けします。

今回のアルファベットは【 G 】です。


Grilli

グリル料理

ホットドッグが先か、酔っぱらいが先か

自分にとって「〆のラーメンのうまさ」は、たぶん一生かかってもわからないもののひとつです。理由は単純、「下戸」だから。

いい感じに酔っ払って食べるラーメンはさぞかし美味しいにちがいないと想像はつくのですが、いかんせん酒が飲めないのだからそれを証明することができません。不可能であるからこそ、ぼくのなかの「〆のラーメン」に対するあこがれは日増しに強くなる一方です。きっと、〆のラーメンは、素面のラーメンの3倍くらいはおいしいにちがありません。

それはともかく、ヘルシンキの街を歩いているとしばしば「GRILLI」という看板を掲げたちいさなお店と出くわします。お店というよりは売店といったほうがお似合いの「GRILLI」は、たいがいは公園の一角などに、まるで誰かの忘れ物のように居心地悪そうに佇んでいます。

どうやらホットドッグやハンバーガーを売る店のようですが、不思議なことに、こうした「GRILLI」の多くは日中には営業していません。そこそこ目立つ場所にありながら、観光客の目に止まらないのにはそんなことも関係しているのではないでしょうか。おなじようなメニューを扱いながら、「GRILLI」は高校生たちがたむろするハンバーガーショップとは明らかにべつの種類のオーラを放っているのです。

妖怪アンテナならぬ、ぼくの「〆の〇〇」アンテナがビンビン反応します。こうした「GRILLI」は、深夜の街を徘徊する酔っぱらいの胃袋を充たすためにこそあるにちがいありません。じっさい、調べてみると「GRILLI」には夜から深夜のみ店開きしている店が多いようです。そういえば、深夜のヘルシンキで移動式のホットドッグスタンドを見かけたおぼえがありますが、なるほどあれも「〆のホットドッグ」売りだったのでしょう。

正直なところ、こうした「GRILLI」で売られているハンバーガーやホットドッグの写真を見ても「わー!おいしそう!」とはなりません。いや、むしろ微妙? でも、そこは日本における深夜のラーメン同様、「〆の」という魔法のフレーズがつくだけで、とたんに「おいしさ」の体感はぐん、ぐん、ぐんと上昇するのです。少なくとも、〆のホットドッグは、素面のホットドッグの数段上をいくうまさにちがいありません。

それにしても、興味深いのはこの「〆の〇〇」文化です。小腹を満たしたい酔っぱらいがそこに集まるようになったのは、たまたま深夜まで営業している店が日本ではラーメン屋、フィンランドではGRILLIだったからなのか? それとも、酔っぱらいのニーズをいち早く見抜いて出店したのがラーメン屋やGRLLIだったのか? じゃあ、深夜にやっているのがチョコレートパフェの店しかなかったら、酔っぱらいはみな「〆のチョコレートパフェ」をペチョペチョ食べたのか? ニワトリが先か、タマゴが先か…… 酔っぱらいの話よろしく着地点はどこにもみあたらないようです。

text : iwama


granaattiomena

Granaattiomena

ざくろ

たまごが先だとおもう、たぶん

神社へと向かう道すがら柘榴の実がなる木があります。

ちょうど先月もオレンジ色の花が咲いているのを見かけました。その花が散るとしばらく柘榴のことはすっかり忘れてしまいます。それは毎年のことです。

フィンランド語では、柘榴のことを granaattiomena(ぐらなーってぃおめな)というそうです。granaatti はガーネット、omenaはリンゴ。ガーネットみたいなリンゴということでしょうか。

ところでガーネットのことを日本語でなんというかご存知ですか。答えは柘榴石。柘榴みたいな石だから、そう名づけられたのかもしれません。

うーん、こんがらがってきます。たまごが先か、にわとりが先か。はたまたガーネットが先か、柘榴が先か。

あっ、柘榴のことを忘れていました。

今までどこに隠れていたのでしょうか? いつのまにか小玉ねぎのような実がたくさんなっていることに気づきます。突然現れたそれらの実は、秋が深まるにつれ赤く赤く色づいていきます。

しばらくすると大きくふくらみ過ぎて割れてしまったりしています。その割れた柘榴をみるといつも、パーン!と破裂したようなイメージが浮かびます。

なので、その木の横を通りかかるたび心なしか急ぎ足になります。びっくりするのでどうか今は破裂しないでください。

それはもしかしたらフランス語の柘榴(grenade)からの連想なのかもしれません。そのほかにも鬼子母神の話やギリシャ神話など、古今東西、多くの人々の想像力をかき立ててきた柘榴。侮れません。

ここでひとつお断りしておかなくてはいけないのが、これだけ柘榴について書いておきながら、今まで一度も食べたことがないことです。まさか種だと思っていたあの粒々が実だったとは。一度試してみないといけません。

ええ、忘れてしまわなければ。

text : harada

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